表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

129/165

第102話「告知」

 挿絵(By みてみん)


 アウラ先輩とエルレブンさんです。

 氷と炎って普通は相容れぬ関係だと思います。

 クレスはアウラさんと仲が良いですが、エルの場合は……

「「「「「はぁ――はぁ――!」」」」」


 乱れた机、倒れた(いす)、割れた窓、汚れた床。

 1年S組は――戦場となっていた。

 

 正確には戦場跡だろうか。 

 すでに戦いは終わり、冒頭にもあった通り、ほぼ全員が肩で息をしながら腰をつけている。

 

(な、なんでたかが主役を決めるために……)


 俺は半ば無理矢理(ここ重要)ヒロイン役に収まった放課後。

 その後に『じゃあ主役を1人さっさと決めて帰ろう』となったわけだ。


 ――で、こんなことになってしまったと。


 立候補しなかった数人と担任は、俺が隅っこで守っていた。

 さっきまで普通に魔法が飛び交っていたからな。

 足下にはスミスとおぼしき死体……失礼、遺体が転がっている。


「結局どっちでも死んでるじゃねーか!」

「……なんだ生きてたのか」

「むしろ勝手に殺すな!」


 神通力でもあるのだろうか。

 こっちの心を読んで、身体を伏しながらもツッコミを入れてくれる。


「また事後処理が大変なことに……」


 俺の背後では担任のデニーロ先生が、何度も溜息を吐いている。

 

「……先生、そもそも戦いが始まる前に止めるべきじゃ?」


 ――と、俺は言わずにはいられなかった。

 注意するどころか、生徒に守られていたなど職務放棄と言える。


「言って聞くようなメンツじゃないだろ」

「それはそうですけど……」

「心配するなアリシアよ。お前を担当することになった春の時点で、戦いの1つや2つは覚悟してたから」

「俺は起爆剤かなんかなんですか!?」

「お前に罪はない。とにかく学園長に頼んですぐ修繕してもらうから」


 確かにこのクラスを形成するメンツは可笑しいヤツが多いが、そこにはデニーロ先生も含まれる気がしてならない。

 むしろ真っ当な教師なら、この(一見学級崩壊な)クラスの担当を務めることすら不可能なのだろう。

 うちの担任ぐらい余裕?を持っていた方がいいのかも。


「――やむを得ない、休戦といきましょう」


 ところどころ焼けた制服を着た少女――ワドウさんが声明を上げた。

 文化祭委員として、と付け加える。 

 みんなも一転『そうだな』と『今日のところはこれぐらいで』と賛同する。

 

 お前らどこかの戦闘民族なのか――?


「……しかしここまで全員がガチで立候補するとは。この圧倒的やる気、文化祭委員として嬉しくもあります」


 あるのは〝やる気〟ではな〝()る気〟のような……

 まぁ確かに積極性がなければこうはならないか。


「今回は流石に平和的解決法を考えるか……」

「……最初から考えておきなよ」


 今更だけどワドウさんが本当に文化祭委員で良かったのだろう――?


「アリシア、人には譲れるものと譲れないものがあるんだ」

「先生まで皆の味方!?」


 俺の正論に、後ろにいるデニーロ先生が先生らしく諭すように。

 なに『あ、すげぇ良いこと言っちゃった』みたいな顔してるんですか。


「さて、もう時間的にもだいぶ遅いし、今日はお開きとしましょうか。デニーロ先生、HR(ホームルーム)を終えたいので最後に一言お願いします」

「了解した」


 すっと立ち上がり前に出る担任。


「えーみんなご苦労だった。死人がでなくてなによりだ。怪我をしたヤツは保健室……まぁ自分の回復魔法で処置できるか」


 このクラスには最悪マイさんがいる。

 というか死人が出なくて良かったって……


「あ、結構前に文化祭前に一度〝三者面談〟を行うと言っていたが――」


 え?

 

「三者面談……?」

 

 初耳――だぞ!?


「ん、アリシア、お前三者面談を知らないのか? 随分と田舎にいたっていうし、ソッチにそういう文化?行事?はなかったか」

「いやそうじゃなくて……」

「三者面談ってのは、教師である俺と、生徒のお前、そしてお前の親御さんで面談をするっつーな。まぁ俺の場合は1人5分もやれば十分で――」


 簡単に説明をしてくれるが、三者面談がなにかは知っている。

 文化祭前の1週間は『準備期間』として全ての授業が休みとなるが、そのタイミングでボチボチやっていくそうだ。

 だが重要なのはそこじゃなくて――


「さ、三者面談をするだなんて、いつ言いました?」

「俺はちゃんと言ったぞ。ちゃんと……あれ、お前ら、俺言ったよな?」


 発言の時期を問う。

 しかしデニーロ先生自身曖昧そうだ。

 確かめるような他の生徒に問うが――


「いや言ってないっすよー」

「先生からは聞いてないよね」

「そういやまだ親に言ってなかったわ」


 どうやらみんなも俺と同じく、聞き覚えはないらしい。

 しかして驚きは薄い。


「ま、他のクラスの連中から聞いてたしな」

「ど、どういうことだスミス?」

「ふつーにそろそろ面談かって思ってたわ。なにせ半期の成績やら生活が親にバレるんだ。成績良かろうがみんな少なからずハラハラしてんだろ」


 ……どうやら他クラスに友達がいたり、部活に入っている連中は既知であるようだった。

 ま、俺は友達がいないんでな……

 いやそういうことではなく、


(親御――つまり保護者ってことだよな? 入学時に書いた書類はでっち上げのオンパレード。辻褄合わせをどうするか……)


 待て。

 そもそも俺は他の大陸から来た、いわば留学生にも近い状況だ。

 事前に知らされていたとしても、遠くに住む(という設定)の保護者をここに呼ぶのは不可能に近い。


「せ――」


 先生、と呼ぼうとして踏みとどまる。

 このへんの事情というか、面談に保護者が来れないという言い訳はギリギリのタイミングで言おう。

 いま言ってなにか詮索させたり、なにか対策を立てられてはたまらない。

 

 タイミングを見計らってだ。

 ……なかなか姑息だが、頭冴えてるんじゃないか俺?

 

「よーしそれじゃあ解散! さぁて先生事後処理頑張っちゃうぞー!」


 と、言う担任に軽く挨拶してみんな迅速に出て行く。

 俺も特になにかツッコミを入れることもなく、スミスたちと帰路についた。



 だが俺はあの時、さっさと先生に事情を話すなり、言い訳をすれば良かったと後悔する。

 まさかあんなことになるとは。

 この時には想像すらつかなかった――

 どうも、東雲です。


 今日のイラストは掲載できるように、ボクが画像サイズを色々いじくりました。

 人によってはいつもより画質が粗いかもしれません……

 申し訳ないです。これ以降は大丈夫だと思います。

 

 次回の更新は木曜ですが、イラストを次に載っけるのは土曜です。

 【木曜日】は『更新はあるけど、イラストはお休み』ぐらいの認識でお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファンタジア文庫より新刊が出ます!
画像をクリックすると特設サイトに飛びます
<2020年12月19日発売>
大罪烙印1
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ