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第86.5話「六番」

「――――なんだこの人!?」


 驚いた声を上げるのは1人の少年。

 年齢は十代前半ほどだろう。

 黒い髪と黒い瞳が特徴的である。


「……黒い炎を自在に操る、しかもあの魔力量……。転生者であるあの人を近接戦で押してるんだ。それはもう魔王ぐらい――」


 両者の激戦を見て銀髪の女に対し警戒心を強める。

 ……といっても、異能の応用である『遠見』で離れた所から見ているだけ。

 彼は今なお帝都に滞在していた。


「いや、まだいたか……」


 まさか聞いていた話は本当だったのだと。

 脳裏には1つの組織の存在がよぎる。



「――災厄の数字(ナンバーズ)



 記憶をたどると炎を操る神殺しがいたことに行き着く。

 

「……確か5番目の災厄、太陽殺しと呼ばれる女」


 ――アウラ・サンスクリット。

 紅蓮の髪をなびかす、一騎当千の大剣使い。

 

(……でも神殺しの剣を持ってない。しかも銀髪。でもササキさん相手に拳で渡り合っている……むしろ、優勢だ。これだけでも相手は〝普通〟じゃないってことは分かる)


 この時アウラは真名を名乗っていたのだが、遠見の力は見るだけ(、、、、)

 会話までは盗むことができない。


「うーん、これはササキさんの援助は望めなそうだ」


 むしろ仲間である彼女が殺される可能性の方が高い。

 本来の仕事は単独で行わなくてはいけない。

 そして一刻も早く任務完了し、サムライを回収して撤退すべきという結論に。




「――箱鍵(キー・ロック)開帳(オープン)


 


 仕事――勇者奪取のためその腰を上げる。 

 正確には今いる異空間と現実世界を繋ぐ扉を開けた。

 

「さぁて、パパッと済ましちゃおう」


 空に開かれる異空間の穴、そこから顔を出すとたくさんの兵士が忙しく動いていることがうかがえる。


(これから総力戦だもんね)


 遠見の力で巨大な魔族(スライム)が迫っているのは知っている。

 そして勇者たちがその対処に駆り出されるのは想像が付く。

 となればそれに乗じて迅速に奪取するのが無難。


「ま、僕のは空間操作特化だし、体勢を整えて向こう(、、、)に勇者の身柄だけ送っちゃえれば……」


 戦闘向きではない能力。

 普段は『ダンジョンマスター』として動いている、野外でのドンパチ自体得意ではない。


「遠見だけじゃ全体像は分かんないし実際に見て……ふむ、ふむふむ、ほーなるほど」


 帝都の様子を天空より視察する。

 

「よし! じゃあ大体分かったし僕も動くぞー!」 

 

 両手を握り元気よく突き上げる様は年相応。

 ただしその持った異能は強力なものである。


「隠れて動くのが僕の性分! 箱鍵キー・ロック――閉鎖(ロック)!」

 

 勇者奪還をすべく。

 少年はまた、異空間へと姿を消す。


     ◆◇◆


「――ほう(See)


 ダンジョンマスターのこの外に出て戻るという一連の行動。

 本人は気づいていないが、これを遠くから見ていた者がいた。


「クレスと会うついで、あの馬鹿女を連れ戻しに来たのですが、なかなか面白い能力を使う少年ですね」


 空間を自由に動くとは。

 人間にしては(、、、、、、)便利な力を持っていると付け加える。

 

「しかしその程度、ワタシには遠く及ばず。驚異にはなり得ない」


 ただ――


「勇者を奪取……的なことを言っていましたね、それは我が最愛の信徒たるクレスの邪魔をするということ。さて見逃すかそれとも――」


 本来は炎の女を本拠(アジト)に連れ帰ることが仕事。

 しかし彼女を慕う唯一の信者であるクレスがここにはいる。

 当人は彼のことになると態度はクールなものの、実のところ甘々であった。


「あの馬鹿も近くにはいないようですし、待つついでに少々様子を見ますか。あまりすぐ助けてはクレスの成長にも繋がらないというもの」


 馬鹿と呼ぶだけあって迎えに行くほどの親切心もない。

 むしろ信徒(クレス)を独占していた彼女には嫌悪すらしていた。


 この突如として異空間に現れ、全てを見通した者。

 彼女の正体こそは――

 週末と言っていたのに明けてしまいました。すいません。

 

 今週にはいよいよコミケがあります。

 ボクは3日目しか行きませんが、なかなか天気が心配で…

 そして2巻が発売して数日が経ちました。

 購入してくれた、そしてDMや活動報告で感想をくれた方々、本当にありがとうございます。


 次回の更新も週末になります。

 よろしくお願いします。

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