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第8話「裏側」

 王立ハーレンス魔法学園、今年度の試験を終えた次の日。

 ただ無事に終了したかと言うと、そうでもない。

 合格者の選定、クラス編成に教師陣たちは頭を抱えていた。

 

「一体今年の新入生はどうなっているんだ……」

「勇者4人に加え、四大貴族のご令嬢だけでも衝撃だったというのに」

「修羅の年、ですな」

「私Sクラスだけは絶対面倒見切れない自信があります」


 みなが口を揃えて感嘆なり驚愕なりを示す。

 確かに今年は特異、近年稀に見る天才が集まっていた。

 ただ勇者とされる異世界人たち、それからディアンヌス家のご息女の存在は事前に報告を受けていた。

 試験で見せた力に驚きはしたものの、想定の範囲内であったのは間違いない。

 我々の中で一番の問題、それは別の人物についてである。


「クレス・アリシア、一体何者なのでしょうか?」

「生まれはヘルシン大陸西部、村に名前が無いほどの田舎から来たとありますが……」

「嘘ではない気がするがな。あれだけの実力、隠し通せる代物ではまずないだろうし」

「まあ兎にも角にも、彼が類まれなる才を持つのは事実ですな」

「ええ。試験で使用したのは氷属性だけですが、あれは魔法騎士にも匹敵しうるものでした」

 

 魔法には第1階梯から第10階梯まで、10段階の種別訳がされる。

 10階梯が最も難易度が高い魔法、学園入学するならば、受験生たちには最低で第3階梯までの魔法使用が必要とされる。

 しかし件の少年が見せたのは全て第6階梯以上に相当する。

 たった2倍、これには天地の差が。

 6階梯より上は常人では辿り着けない、努力と相応の才が求められる。 

 やったことはシンプルながら、その練度はたった15歳の少年が使えるには不可思議なものだ。


「しかもアイツは、まだまだ余力を残しているってかんじだったぜ」

「アイザック先生……」

「戦った俺が一番分かる。クレス・アリシア、あれは怪物だ」

「S級冒険者もお墨付きと」

「元だよ元、あれだけの才能とセンス、墨付けるまでもなく認めるしかねえだろうよ」

 

 立ち会ったのは元S級冒険者のアイザック先生、実力は誰もが認めている。

 その彼が為すすべなく敗北。

 本人曰く遊ばれていた、まったく歯が立たなかったそうだ。

 最終的には回復魔法を掛けられる始末。

 そこまでの実力差、クレス・アリシアという存在が無名だったのが不思議でならない。

  

「アリシア君と勇者方、どっちが強いんでしょうね?」

「そりゃ流石に勇者でしょう」

「いやいや、実戦においてはアリシア君の方が優位かと」

「でも勇者の方たちは異能持ちですからなあ」

「我々の手に負えますかねえ……」


 教師たちが不安を抱くのも無理はない。

 なにせ魔王討伐を目的に召喚された勇者4人、大貴族のご令嬢、そして無名の天才。

 彼ら以外にも暫定Sクラスには癖が強い者が集まりつつある。

 最上クラスでありながら、今回ばかりは異端のクラスとも呼べるだろう。


「今年の国際試合、どうなると思います?」

「うーん、帝国も帝国で戦姫がいますからなあ」

「あと教国でも20代目の剣聖が決まったと聞きますし」 

「なんだか波乱の世になってきた気がしますね」

「ああ。戦争が起きそうで怖えよな」

 

 季節の終わり、年が明ける前には代表を選出し国家間で親善試合が行われる。

 勇者、天才、戦姫、剣聖、そうそうたる面子がそろい踏み。

 彼らが交わる時、一体どんなことが起きるのか。

 ただ戦争は起きるとしても国家間での可能性は低い。

 なにせ近頃では魔王たちの動きが活発化、むしろ人類は結託する傾向にある。


「彼らがいれば、魔王たちもどうにかなりそうですな」

「ええ。出来ればあの組織(・・・・)もなんとかして欲しいものだ」

災厄の数字(ナンバーズ)ですか……」

「あの連中はその気になれば大陸の征服も容易、世界さえ————」

「そこまでとしておこう」


 これ以上は論点がズレすぎる。

 閑話休題を言葉で、会話に終止符を打つ。

 今議論すべきは合格した生徒のクラス編成に他ならない。

 

「さあ、生徒の話をしましょうか」

 

 学園長たる自分が先頭をきって。

 春はすぐそこに。

 新たな学園が始まろうとしている。

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