表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

109/165

第86話「炎炎2」

挿絵(By みてみん)

 書籍2巻にて大活躍するとある〝美少女〟です!

 チャイナ服で、ツインテールで、それでもって銀髪で…銀眼……っと、なんだか見覚えのある容姿をしているような…………

「――っ、随分と飛ばされましたね」


 帝都より投げ飛ばされ郊外――森に舞う。

 時間にして3分の空中浮遊。

 正体不明の女はようやく着地できたのだった。


「早く都へ戻らなくてはいけないのですが――」


 帝都には勇者を奪うため共に来た仲間が1人、都合上彼の手伝いをしなくてはいけない。

 だが――


(これは……)

 

 視線を空の彼方へと向けた。

 光の眩さに目を細める。

 そこには輝く太陽――そして、




「燃 や し つ く せ――――ッ!」




 迫る。

 これは炎と呼ぶよりも流星群、はたまた隕石か。

 女の頭上には固形化した紅蓮の雨が降り注ぐ。


「妖術でも忍術でもない。太陽を降らすとは、まこと奇っ怪な力をお使いになる……」


 大気を焦がす降雨の中には銀髪の髪を揺らす戦士もいる。

 

「逃げるわけにはまいりませんね」


 長刀――長干し竿を構え直す。

 刃の反対、峰の部分を右肩に乗せる形。

 

「燕来る 時になりぬと (かり)がねは 国(しの)ひつつ 雲隠り鳴り響く」


 風に乗せ流れるように歌う。

 万葉集十九巻、大伴家持の一句。

 ソレは術となって女を包む。 

 魔術ではない、極東古来より受け継がれる退魔の技――いわゆる〝陰陽術〟である。 


「全ての災いを払う――!」


 退魔を宿した絶剣は〝炎の災厄〟と衝突した。


     ◆◇◆


「ふっふっふ、面白い技を使うなお前」

「其方こそ。大地をこうも破壊して――」


 正体不明(アンノウン)は降り注ぐ炎の雨を切り裂いた……と言っても必要最低限、自分の安全位置だけ確保した。

 捌かれなかった残りは地面へと着弾、残火立ちこめるクレーターを無数に作った。

 森だったはずの場所は数秒で荒野へと変わり果てたのである。


「全身に炎を纏う姿……まるで荒ぶる火之迦具土神(ひのかぐつちしん)のようですね」

「ひ、ひの? 誰だそれ?」

「わたくしの故郷(くに)にて祀られる神の一柱です」

「ほー。つまり私は褒められてるってことだな!?」

「まぁ…………敵ということを考えると業腹ではありますが」


 高らかに笑うアウラ、相手は構えたままソレを静かに見つめる。


「そうかそうか。正体不明な女、お前も案外悪い奴じゃ――」

 

 一閃。

 ないのかも、その言葉が続くよりも速く――


(――燕返し!)


 突然の不意打ち(、、、、、、、)

 長い刀身が凄まじいスピードで振り抜かれた。

 振る動作は彼女が幾年もの時間を掛け磨き上げたモノ。

 ある1つの極地まで達したそれは音すら置き去りにして、アウラの首元に伸びる。


「おっと!」


 が、アウラはその一閃を上半身だけ逸らして躱す。

 初動作や軌道が見えていたわけではない。

 それは第六感、シックスセンス――世に言う〝野生の勘〟である。

 卓越した危機察知能力が、彼女の知覚や意思関係なく回避行動を取らせた。


「しからば二閃!」


 振り切った刀をコンマ数秒で切り返す。

 今度の狙いは急所ではない。

 刃の行方は――


「んなっ!?」


 不意打ちを避けたものの不安定な体勢。

 そこに〝左腕〟を狙った斬撃が迫る。

 アウラの勘は心臓が狙いだと告げていた、これは見事に裏切られた形で――


「あえてここは腕を頂く!」

「ッツ!」


 計算された2発目の不意打ち。

 アウラは――喰らう。

 左腕……肩を切断され、その下から指先までを地に落とす。


「申し訳ありません。貴女とは長期戦になりそうだったもので」


 振るった刀の動きを止め手元へと。

 目の前には片腕となったアウラ。

 

「銀髪の、貴女はお強い。ひたすらにお強い。先の炎に加えその卓越した才と身体はもはや反則でしょう。きっとこれまでも常勝不敗だったとお見受けする」


 だから――


「だからこそ〝(おご)り〟がある。自分の力、そして戦いへの狂気が油断を生む。わたくしも狂気はありますがまだ(、、)出していないのが幸いした。そしてわたくしと同等の速さと巡り会っていないことも。とりあえず、これで戦況は――」


 


「っくっくっくっくっくっくっく」 




「?」


 下を向き、黙りを決めていたアウラが笑い出す。

 その声音はいつもの明るく快活なモノとは違う。

 歓喜。圧倒的歓喜による不敵かつ大胆な――


「狙いは良かった」

「どういう……」

「だけど、狙う場所が悪い――」


 グニャリ。

 地面に転がっていたアウラの左腕がひとりでに燃え出す。

 すると溶岩(マグマ)のように融解、ドロドロに溶けてしまった。


「これは……」

「私さ、かーなり前に太陽神に挑んだんだ。バカ強い奴で、そん時に色々なもんを失った」



「例えば――左腕とかな」


 

 グニャリ。

 今度はアウラの切り落とされた左肩、そこから溶岩が流れ出す。

 真っ赤な液体はすぐに腕を形成、白い煙を上げながら凝固――斬られる前とまったく同じ、硝煙を多少上げているものの健在な左腕が〝再生〟していた。


「もともと隻腕なんだわ。悪いな」

「なんと……」

「だけど不自由はない。失ってから頑張って在る時(、、、)と同じことをできるようにしたから。というかむしろ――」

「……!?



「得たもんの方が大きい!」


 

「……っ阿呆な」

 

 魔力爆発。

 アウラの身体は炎を纏っている――正体不明(アンノウン)はそう表現した。

 だが解放をした彼女の様相はそんな生ぬるい(、、、、)ものではない。

 

 豪炎の化身。太陽の権化。炎神の現し身。


 アウラは神を屠り、そして〝権能〟を手に入れた。

 森羅万象全てを焼き尽くす……




「――――神殺しの黒焔クリムゾン・オーバー・ドライブ




 噴出するは黒い炎(、、、)

 アウラの四肢が漆黒のベールに包まれる。

 

「なんと禍々しい姿……これが同じ人間だと言うのですか……」


 いつもの愚直に生きる女はいない。

 本性を開帳した、相手を殺しに行くだけとなった――本気の姿。

 漆黒の炎を纏った彼女は、まるで悪魔のようだった。


「次は私のターンだ。覚悟はいいよな?」

「……ええ、ですがその前に」

「?」


 疑問符を浮かべるアウラ、対し彼女はこう言う。


「わたくしは安土の時代、豊前に生まれた侍なり」

「……」


「名を、佐々木小次郎と申します」


「コジロー……」

「貴女のお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」

「……」


 アウラにも相手のいわんとする事が分かった。

 しかし――


(クレスの奴に万が一迷惑が……っと)


 佐々木は視線を逸らすことなく此方の目を見つめる。

 その瞳孔にはメラメラと燃える静かな、されど熱き炎が宿っていた。


(これに応えないのはダメだな。ごめんなクレ……って、そうだ。名乗ったところで殺しゃ関係ない。というか殺す気しかねぇのにな私! なに陳腐なこと考えてるんだよ。そうだなよな! そうだったわ! あっはっはっは!)


 トレードマークとも言える赤髪は銀髪のまま。

 こればかりは(ストレガ)の特別製、どうたらアウラの炎にもギリギリ耐えているようだ。

 そして拳を構えながらアウラも告げる。

 

災厄の数字(ナンバーズ)が5番目――私の名はアウラ、アウラ・サンスクリット! 超ヒートで超熱い超最強の女だ!」


 威風堂々。

 胸を張ってそう口にしたのだ。


「災厄ですか」

「ん、今笑ったな」

「ええ。これほどお似合いな呼び方はないなと」

「かっかっか。そりゃどうも」

「では……」

「ああ……」



岩流(がんりゅう)免許皆伝、佐々木小次郎! 推して参ります――!」

「おうよ! かかってこいやぁぁぁぁぁ――!」


 

 8月1日はいよいよ第2巻の発売日ですね。早い所は今日から並んでる?(何度も告知スイマセン

 

 前書きに銀髪美少女のイラストを載せました。

 この小説を読んでいるのは紳士・淑女ばかりだと思うので、彼女の正体が誰かはきっと分からないことでしょう()。

 ただ、ボクとしては遂に形に出来た!という感じです。

 

 夏休みに一応突入はしたので、なろうでの更新もそれなりにできるかなと。

 次の更新は週末になると思います。

 書籍と併せ楽しんで頂けたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファンタジア文庫より新刊が出ます!
画像をクリックすると特設サイトに飛びます
<2020年12月19日発売>
大罪烙印1
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ