第4話
世界各地から超能力者が5名消えた。
元地球の討伐作戦を控える地球では衝撃的な知らせであり特に驚かれたのが消えた5名の中に超能力者育成機関の所属ではない一般の超能力者が含まれていた事。
超能力者を英雄視するこの星では誰も人間による犯行を疑わず“創造主による強制的な開戦命令”と解釈し、世界中の超能力者達は勇み、慄いた。
守護者を発現し、復讐をはたし万能感に満たされていたメルはその現実を冷静に直視していた。
(噂される開戦命令に行方不明……これはまず間違いなく地球への転移……!)
彼はそうとしか思えなかった。そう思うしかなかった。
なぜなら……
(ということは僕が地球で生活できる時間は短い!多少強引にでも超能力に関する情報を集めて実戦レベルまで鍛えるんだ!)
こう結論付けたかったからだ。
メルは、その過去故に“被害者の気持ちになって考えられる”事ができる子だ。
人を傷付けるのは嫌いで理不尽な事も大嫌いな性格だったが、自分に正義があると確信した時は自身の悪事に目を瞑ったり、ケンカの相手を積極的に痛めつける節がある。
今回も例の如く、自分を正当化して街に住む超能力者育成機関に所属する超能力研究者の家を襲い資料を奪うための理由が欲しかっただけなのかもしれない。
(決行は深夜3時!もし遭遇したらノックアウトだ!!)
見つからず潜入するための時間設定だったが彼は心の中で家主との邂逅を望んでいた。
深夜2時10分、2時も3時も同じだろうという結論に行き着いた彼は早めに作戦を決行する事にした。
(運命の図鑑!)
この能力は発動時、本の形で顕現する。内容は過去に召喚した守護者の履歴のみが載っており後は空白。とても図鑑と呼べるものではない。
図鑑という物に選択の有限を感じたメルの意匠だ。
新しい守護者を召喚する時はその度メル自身が守護者の人生を設定する事になる。
「18年間最低限の言語教育と暗殺術を学んだ、男の従者!」
メルは、人間には真似出来ない極端な人生設計こそ強みだと思っていたし、ホームレス皆殺しの件でもそれを確信していた。
レシピを与えられた運命の図鑑は風に吹かれたようにパラパラとページをめくり始め最終ページを閉じる。
次に勢いよく開いた図鑑にページはなく、本の形をした召喚ゲートになっていた。
「顕現せよ我が忠実なる下僕……!」
小さな声で本来必要のない詠唱を終えると召喚ゲートは少し光を放ち始め黒装束の男を放出した。
男は着地するとそのままメルの足元に跪く。
「我が主よ……貴方のためにこの身捧げん。」
「さあ、始めよう」




