表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元奴隷とエルフの恋物語  作者: 長岡更紗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/22

第13話 ライズという男③

 その、一ヶ月後の事だった。

 ディーナは一通の手紙をポストから取り出した。差出人は、ディーナ。

 ハテナと思ったディーナだったが、宛名がディーナではない。これはライズと書いてあるのだろうと思い当たる。

 ディーナはその手紙を、転ぶようにしてライズに届けた。


「ライズ! ライズッ! 手紙だ!」

「ん? 読んでやろうか?」

「ちっがうよ! ライズに手紙! 娘の方のディーナからだよ!」

「……え?」


 ディーナはライズに手紙を握らせると、上機嫌で店に向かう。


「ゆっくり読んで構わないからな! あたし、店番してるからさ!」

「あ、ああ、悪ぃ」


 そう言ったライズの顔は、心なしか嬉しそうだった。返事があったということは、娘には会う気があるのではないかと予想ができて、ディーナも嬉しかった。

 ディーナはウェルスに頼まれた弓の作製をしながら店番を続ける。もう少しで完成だ。ウェルスの喜ぶ顔を想像すると、これを届けに行くのが楽しみだ。直接渡せはしないだろうが、それでも嬉しかった。

 ウェルスの笑顔を想像していると、奥からライズが出てくる。


「すまないな、任せっきりで」

「ライズ! どうだった? 娘さんは会いたいって?!」

「うーん、まぁそんなとこかな」

「よかったじゃないか! 会うんだろ!?」

「……会えねえ、なぁ……」


 ライズは無理やり作ったであろう笑みを絶やさなかったが、明らかに言葉尻は沈んでいる。


「……何で? 会いたいんだろ?」

「そうだなぁ。そう思ってたが…… 会ってもどうしようもねぇっつーか。事情が許さねぇっつーか」

「何だよ、それ」

「いいんだよ。ディーナとは……娘とは会わねえ。俺には何もしてやりようがねぇからな」

「……ふーん。ライズがそれでいいなら、いいんだけどさ」

「集金行ってくらあ」

「うん、いってらっしゃい」


 ライズを見送った後、ディーナはそっと家に入った。彼の娘から来た手紙の内容が気になる。開けて見たところで、ろくに読めはしないのだが、読める単語をかき集めれば何かわかるかもしれない。

 ディーナはライズが使っている小さな机やその引き出し。さらにはタンスの奥や食料庫等を探して見たが手紙は見つからなかった。

 手紙は持って出たのかもしれないなと思いつつ、倉庫奥を探していると、見知らぬ箱が目にとび込んでくる。箱の上には一枚の封筒。

 しかしライズの娘が書いた物ではなく、宛名がディーナとなっていた。


「あたしに? こんな手紙、来たことあったっけ」


 手紙の裏を見ると、そこには『ヴィダル』の文字。祖父の名前を見つけたディーナは、慌てて封筒を開けた。


「し、んあい……ディーナ。これを…あー、これ何て読むんだっけ! えーと、無駄、か! 次が……使う……」


 落ち着けば読める字も、早く読みたいがために余計に焦って読めなくなっている。歯痒いばかりだ。

 しかし、何とか読み切ると、ヴィダルがディーナのために残した物がある、ということがわかった。

 もしかしてと予感を感じながら箱を開ける。


「じーちゃん……」


 そこには、何十万というお金が入っていた。


 ディーナはライズが帰ってくるのを待ちかねて、ヴィダルからの手紙を見せた。

 ライズは当然のようにそれを声に出して読んでくれる。


「親愛なるおバカな孫娘、ディーナ。きっと困っておるじゃろう。これを使え。無駄に使わんでくれよ。つらくとも泣くな。きっとディーナには素敵な未来が待っておる。頑張るんじゃよ。……ヴィダル」


 ライズが読み終え、カサリと手紙を封筒に戻す。グスリとディーナは鼻をすすった。


「じーちゃん、あたしが困窮すること、わかってたのかな……」

「かもな。このファレンテインで、よくこれだけの金を貯めたと思うよ。これはこのままここに置いておこう。いつか、ディーナがまた生活に困った時のために」

「ちょっとライズ、嫌なこと言うなよ」

「はは、すまんすまん!」


 ライズはその箱をしばらく見つめた後、倉庫に戻してくれた。


「店番交代だ。森でグリフォンを見たって情報があったぞ。行ってきてくれ」

「本当か? じゃ、ちょっと行ってくるよ!」

「気をつけてな」


 その時の彼の笑顔が、無理をして作ったものだということに、ディーナは気付けないまま狩りに出た。


 ディーナが狩りから戻ったのは、二日後のことだ。

 グリフォンの羽を手に入れ、ほくほく顔で帰って来たディーナだったが、店が閉まっているのを見て訝しげな顔に変わる。


「あれ……ライズ、集金にでも行ってんのかな」


 そう思ったのも束の間。鍵を開けて店の中に入り、愕然とした。主力商品であるウェルスオリジナルがすべて消えている。


「ライズ!! ライズ!?」


 強盗にでも入られたのかと思い、ライズの身を案じてその姿を探すも、どこにも見当たらない。集金袋の中は空っぽ。生活費として引き出しの奥にしまってあったはずのお金も空っぽ。まさかと思いつつも、倉庫にしまってあったヴィダルがくれたお金も、箱ごと消えていた。

 部屋に荒らされた形跡はない。そこに金があると知っていた者の犯行だ。


「……ラ、イ、ズ……っ」


 ライズは消えた。ヴィダル弓具専門店にある、すべての金とウェルスオリジナルを持って。

 ディーナに怒りと悲しみと虚脱が襲いかかり、しばらくの間、何もできずに立ち尽くしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファレンテイン貴族共和国シリーズ《異世界恋愛》

サビーナ

▼ 代表作 ▼


異世界恋愛 日間3位作品


若破棄
イラスト/志茂塚 ゆりさん

若い頃に婚約破棄されたけど、不惑の年になってようやく幸せになれそうです。
この国の王が結婚した、その時には……
侯爵令嬢のユリアーナは、第一王子のディートフリートと十歳で婚約した。
政略ではあったが、二人はお互いを愛しみあって成長する。
しかし、ユリアーナの父親が謎の死を遂げ、横領の罪を着せられてしまった。
犯罪者の娘にされたユリアーナ。
王族に犯罪者の身内を迎え入れるわけにはいかず、ディートフリートは婚約破棄せねばならなくなったのだった。

王都を追放されたユリアーナは、『待っていてほしい』というディートフリートの言葉を胸に、国境沿いで働き続けるのだった。

キーワード: 身分差 婚約破棄 ラブラブ 全方位ハッピーエンド 純愛 一途 切ない 王子 長岡4月放出検索タグ ワケアリ不惑女の新恋 長岡更紗おすすめ作品


日間総合短編1位作品
▼ざまぁされた王子は反省します!▼

ポンコツ王子
イラスト/遥彼方さん
ざまぁされたポンコツ王子は、真実の愛を見つけられるか。
真実の愛だなんて、よく軽々しく言えたもんだ
エレシアに「真実の愛を見つけた」と、婚約破棄を言い渡した第一王子のクラッティ。
しかし父王の怒りを買ったクラッティは、紛争の前線へと平騎士として送り出され、愛したはずの女性にも逃げられてしまう。
戦場で元婚約者のエレシアに似た女性と知り合い、今までの自分の行いを後悔していくクラッティだが……
果たして彼は、本当の真実の愛を見つけることができるのか。
キーワード: R15 王子 聖女 騎士 ざまぁ/ざまあ 愛/友情/成長 婚約破棄 男主人公 真実の愛 ざまぁされた側 シリアス/反省 笑いあり涙あり ポンコツ王子 長岡お気に入り作品
この作品を読む


▼運命に抗え!▼

巻き戻り聖女
イラスト/堺むてっぽうさん
ロゴ/貴様 二太郎さん
巻き戻り聖女 〜命を削るタイムリープは誰がため〜
私だけ生き残っても、あなたたちがいないのならば……!
聖女ルナリーが結界を張る旅から戻ると、王都は魔女の瘴気が蔓延していた。

国を魔女から取り戻そうと奮闘するも、その途中で護衛騎士の二人が死んでしまう。
ルナリーは聖女の力を使って命を削り、時間を巻き戻すのだ。
二人の護衛騎士の命を助けるために、何度も、何度も。

「もう、時間を巻き戻さないでください」
「俺たちが死ぬたび、ルナリーの寿命が減っちまう……!」

気持ちを言葉をありがたく思いつつも、ルナリーは大切な二人のために時間を巻き戻し続け、どんどん命は削られていく。
その中でルナリーは、一人の騎士への恋心に気がついて──

最後に訪れるのは最高の幸せか、それとも……?!
キーワード:R15 残酷な描写あり 聖女 騎士 タイムリープ 魔女 騎士コンビと恋愛企画
この作品を読む


▼行方知れずになりたい王子との、イチャラブ物語!▼

行方知れず王子
イラスト/雨音AKIRAさん
行方知れずを望んだ王子とその結末
なぜキスをするのですか!
双子が不吉だと言われる国で、王家に双子が生まれた。 兄であるイライジャは〝光の子〟として不自由なく暮らし、弟であるジョージは〝闇の子〟として荒地で暮らしていた。
弟をどうにか助けたいと思ったイライジャ。

「俺は行方不明になろうと思う!」
「イライジャ様ッ?!!」

側仕えのクラリスを巻き込んで、王都から姿を消してしまったのだった!
キーワード: R15 身分差 双子 吉凶 因習 王子 駆け落ち(偽装) ハッピーエンド 両片思い じれじれ いちゃいちゃ ラブラブ いちゃらぶ
この作品を読む


異世界恋愛 日間4位作品
▼頑張る人にはご褒美があるものです▼

第五王子
イラスト/こたかんさん
婿に来るはずだった第五王子と婚約破棄します! その後にお見合いさせられた副騎士団長と結婚することになりましたが、溺愛されて幸せです。
うちは貧乏領地ですが、本気ですか?
私の婚約者で第五王子のブライアン様が、別の女と子どもをなしていたですって?
そんな方はこちらから願い下げです!
でも、やっぱり幼い頃からずっと結婚すると思っていた人に裏切られたのは、ショックだわ……。
急いで帰ろうとしていたら、馬車が壊れて踏んだり蹴ったり。
そんなとき、通りがかった騎士様が優しく助けてくださったの。なのに私ったらろくにお礼も言えず、お名前も聞けなかった。いつかお会いできればいいのだけれど。

婚約を破棄した私には、誰からも縁談が来なくなってしまったけれど、それも仕方ないわね。
それなのに、副騎士団長であるベネディクトさんからの縁談が舞い込んできたの。
王命でいやいやお見合いされているのかと思っていたら、ベネディクトさんたっての願いだったって、それ本当ですか?
どうして私のところに? うちは驚くほどの貧乏領地ですよ!

これは、そんな私がベネディクトさんに溺愛されて、幸せになるまでのお話。
キーワード:R15 残酷な描写あり 聖女 騎士 タイムリープ 魔女 騎士コンビと恋愛企画
この作品を読む


▼決して貴方を見捨てない!! ▼

たとえ
イラスト/遥彼方さん
たとえ貴方が地に落ちようと
大事な人との、約束だから……!
貴族の屋敷で働くサビーナは、兄の無茶振りによって人生が変わっていく。
当主の息子セヴェリは、誰にでも分け隔てなく優しいサビーナの主人であると同時に、どこか屈折した闇を抱えている男だった。
そんなセヴェリを放っておけないサビーナは、誠心誠意、彼に尽くす事を誓う。

志を同じくする者との、甘く切ない恋心を抱えて。

そしてサビーナは、全てを切り捨ててセヴェリを救うのだ。
己の使命のために。
あの人との約束を違えぬために。

「たとえ貴方が地に落ちようと、私は決して貴方を見捨てたりはいたしません!!」

誰より孤独で悲しい男を。
誰より自由で、幸せにするために。

サビーナは、自己犠牲愛を……彼に捧げる。
キーワード: R15 身分差 NTR要素あり 微エロ表現あり 貴族 騎士 切ない 甘酸っぱい 逃避行 すれ違い 長岡お気に入り作品
この作品を読む


▼恋する気持ちは、戦時中であろうとも▼

失い嫌われ
バナー/秋の桜子さん




新着順 人気小説

おすすめ お気に入り 



また来てね
サビーナセヴェリ
↑二人をタッチすると?!↑
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ