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ここはどこ?そして...

お待たせしました。

主人公の性格が途中で変になったりしてるかも知れない…。

生暖かい目で見て下さい。

「ん・・・」


頬にサワサワと優しい風が触れる。

その清々しい感覚に意識が段々と覚醒してきた。


「つ、きか・・・さま?」


手のひらに柔らかい草が当たる感覚に、私はガバリ!と身体を起こした。

そして、目の前に広がる光景に目を見開いた。


「ここは、どこなの?」

「あっれー?こんな所に人間がいるー」


柔らかな草原、美しい青空。

そして、背中から淡い紅色の翼を生やした少年。

翼と同じ淡い紅色のふわふわの髪と濃い金緑色の瞳が可愛らしい少年は、私を見つけて、ニヤリと獲物をねらい定めた猫のように笑った。


「ふふ。珍しいなぁ。魔王様とそっくりなんだけど」

「『魔王様』?と言うことは、ここは異世界なの?」

「もしかして君、魔王様を知らない?異世界って言ってるって事は『渡り人』か。よし!魔王様に献上しちゃおう!喜んでくれるかなぁ・・・」

「ちょっと待って下さい。あなたは誰なんですか?そしてここはどこ?」

私は怪しい異形の少年に尋ねた。

少年は私の言葉にほんの少し笑った。


「この僕に名前を聞くなんてねー。まぁ、いいや。僕の名前は、アドルチェ・レインツェラ。魔界の五大公爵家の一つ、レインツェラ公爵さ。ここは魔界で、僕の領地の中。異端なものが転がり込んできたと思ったら君だったわけ」

「そうなの・・・私は、四始神 (ししがみ)(りゅう)。私はね、実の母に売られそうになったところで、ここに来たの。だから半分救われました」

「人間って本当に残酷なことをするねー。なんで、実の子をそんな売買するんだろ。魔界の奴らでもやらないよ?子供はみんな大切な未来だからね!」


ふわりと誇らしげに笑うアドルチェに、ここは本当に子供を大事にする場所なんだと思った。


「良い場所ですね・・・私の故郷も、みんな同じ考えでしたら良かったのに」

「・・・よし!さっさと暗い雰囲気は捨てちゃって、魔王様の所行かないと怒られちゃう。さっ、行こう!

僕に掴まって。離さないようにね?」

「分かりました」

「よしよし。んじゃ、魔王城へ転移だ!」


トンッと軽い着地音を立てて降りてきたアドルチェの仕立ての良さそうな袖に掴まった途端、くらりと、こちらへ来た時のような見覚えのある感覚に襲われた。

思わず強く目を瞑れば、数秒後軽く肩を叩かれた。


「リュウ、ついたよ?目を開けてみて」

「はい」


そっと目を開けて見れば、そこは黒を基調に、暗めな赤や金などでシックに纏められた内装の部屋だった。


「ここは僕の仕事場。ここで書類をまとめて魔王様に提出するんだ。まぁ、この話は後にしといて、早速魔王様のところへ行こうか。『渡り人』は魔王様に報告する義務があるんだ。さっきは献上って言ったけど、あれは冗談。実際は保護だから安心して」

「『渡り人』自体は、よくある事なのですか?」

「まぁ、年に多くて2人は来るかな。落ちる場所は様々で、人間界とか魔界とか精霊界とか、とりあえず色んな場所に現れる。特定もできないから、基本的に落ちた国が保護する事になってる。けれど、人間界は『渡り人』の知識をモノにしようと境界関わりなく集めているようだけどね」

「ある程度、事情は把握しました」


おそらく、人間界は思ったより生活水準が高くないのだろう。

そこで、異世界の人間の知識を得ることにより、現状を打破しようとしている。

面倒臭いことこの上ない問題である。

「さて、お話はここまで。魔王様は3年前に現れて、腐り切っていた人間界のとある王国と魔界の重鎮を排除して、纏めてくれた人なんだ。魔界を纏めあげるだけの強さも勿論のこと、頭も切れて、その上凄い美しい方だから、失礼の無いようにね」

「分かりました」


にこにこと可愛らしい笑顔で言うアドルチェに、私の心もほっこりとした。

こうして普通にしていれば普通の美少年に見えるが、キビキビとした物言いは良いところのお坊っちゃんというには、些か無理が過ぎるだろう。

にしても翼が生えていたにも関わらず、洋服に穴が開いていないというのはどういう造りになっているのだろうか・・・。


「あの、私はその魔王様とお会いしたら、どうなるのでしょう」

「うーん。場合にもよるけど、基本的には魔王城の城下で、本人の希望の場所に暮らしてもらう事になるかな。まぁ、それは追々魔王様から説明があるから、今は良いよね」

「分かりましたーーーそれとあと一つ、よろしいですか?」

「ん?どうしたの?」

「私をどうか、アドルチェ様の所で雇って下さい。本人の希望の場所に暮らしてもらう・・・ということは、今まで異世界からやってきた人達は、2度と元の世界には戻れないのですよね?ならば、アドルチェ様に拾われて、私は大層恵まれた方だと思います。お願いします、私をどうか雇って下さい。下働きでも、計算物でも、なんでもやって見せます」


藁にも縋る思いだった。

見知らぬ土地で、自分の知らぬ常識の中で生涯を生きるのは、とても苦労するだろう。

ならばいっその事、見知った相手で、しかもその相手が上流階級の人物でコネがあるなら、使えるものは使うのが一番である。

アドルチェには悪いが、これからの未来がかかっているのだ。


「なぁんだ。てっきり僕の愛人にしてくれって頼むのかと思ったよ。ほら、僕ってとても可愛いでしょ?それにリュウは人間には珍しいくらいの美少女だし、僕もそれでもいいかなって思ってたんだけど・・・まさか、雇ってくれって言われるとは考えてなかったなぁ」

「あの、駄目でしょうか」

「ん?んー、そうだなぁ。短い間でもリュウはとても丁寧だし、控えめで大人しい。変な事も考えてなさそうだから、特別に雇ってあげる。それに、あの会話で『渡り人』が過去に1度も帰ったという事実が無いことも見抜いたし。もちろん、魔王様から許可頂けたらの話だけどね」


パチンとお茶目にウインクするアドルチェに、私は思わずくすくすと笑った。

最初の言葉で、酷く有り得ないことを聞いた気もしたが、あえて無視しておこう。

これで将来は安定したと、心の底から息をついた。


「んじゃあ、話はこれくらいにして、魔王様の執務室に行くよ。掴まって」

「はい」


この執務室へ来た時のように目を瞑れば、一瞬の内にあの感覚に襲われた。

転移したんだとわかって目を開ければ、目の前には重厚そうな古めかしい扉があった。


「魔王様、失礼します」

「入れ」


低く艶やかな麗しくも気だるそうな声。けれどどこか懐かしい声だった。

その声音に聞き惚れながら、私は顔を伏せながらアドルチェの後をついて行った。


「やっほー魔王様。ご機嫌いかが?」

「瀧・・・!?」

「え?」


アドルチェのご機嫌伺いのあと、突如としてアドルチェと違うたどたどしい発音ではなく、正しい発音で名を呼ばれた。

驚いて顔を上げれば、書類が積み重なっている机には、艶やかに切り揃えられた黒髪に切れ目がちな淡い紫の瞳。真っ白な肌が微かに赤く上気していて、息をするのも苦しいくらいに色気が滴っている。


行方不明になった兄がそこに居た。


「ぁっ・・・お、おにいちゃんなの?」

「りゅう・・・りゅう・・・っ」

「おにいちゃん・・・おにいちゃんっっ!!」


私は兄に駆け寄った。

そんな私を兄は両手を広げてギュウッと強く抱き締めてくれた。

ボロボロと涙を零しながら、『おにいちゃん』を連呼する。

兄は・・・月癒(るい)は、私を膝に乗せて椅子へ座り、頬やら瞼やら鼻やらにキスを繰り出す。


「あいたかったよぉ・・・おにいちゃんのばかぁ、りゅう、すごくすごくしんぱいしんだよぅ」

「うん、ごめんね瀧。僕も凄く凄く寂しかった。あの人達にはどんな事をされた?強引になにかされたかい?」

「あのね、だんなさまがこんやくをきめたんだけど、つきかさまがね、そのひとじゃないひとが、さんじかんでごじゅうまんで、わたしをかったんだって」

「あの糞共が・・・」


幼児返りをした私は、月癒の悪態に気が付かない。

ただただ、もう3年振りの月癒の事しか頭になく、スリスリと胸元に頬を寄せた。


誤字脱字がありましたら、ぜひコメントして下さい。

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