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09

私はさっさと飛んで家に帰ろうとした。

だが帰る途中にある森で悲鳴が聞こえた。

黒曜を振り返ると

「多分ですが男が二人、森の中にいます。魔物に襲われているようですが、いかがなさいますか?」

「その魔物はどのくらいの強さですか?」

「はい。森の主かと思われますが、強さはそれほどでもないでしょう。主や、私から見ればの話ですが」

「倒すとしたら時間はどれくらいかかりますか?」

「主ならば瞬殺かと」

ふむ。たいした時間のロスはないだろう。

助けるとするかな。

瞬殺で終わるのならば、兄が提示した時間には戻れるだろうし。

「森へ入ります。二人が襲われている場所はわかりますか?」

「はい」

「では、案内を」

「かしこまりました」

そう言って森へ入り、その二人のもとへ急いだ。

それから、3秒ぐらいだろうか。

二人の青年と森の主のもとへたどり着いた。

二人のうち一人は大量の血を流し、地面に倒れていた。

息はあるようだが、出血の量がひどい。

早く手当をしないと死ぬだろう。


森の主はその二人の目の前にいる。

森の主には様々な種族がなることができるがこの森の主は黒い獅子のようだ。

黒い獅子は今にも二人を食い殺そうとしている。

私と黒曜は、黒い獅子と二人の青年の間に入った。

青年はびっくりしてこっちを見ている。

黒い獅子もまた、黒曜をじっと見ている。

森の主の中には言葉が通じる者もいるという。

私は、黒い獅子に話しかけようとした。

だが私が口を開くその前に、黒い獅子は黒曜に向かって首を垂れた。

私が黒曜の方に顔を向けてみると、黒曜は眉間に皺をよせていた。

その後、何かを思い出したのか、「あー」と口にして眉間の皺をといた。

「知り合いですか?」

「はい。彼は精霊です。私が『獅子』という形を与えました」

精霊について少し説明しよう。

精霊は、簡単に三つの位に分かれる。

一番上は精霊王。

これは、火、水、氷、雷、風、光、闇の精霊たちのなかに各一人ずついる。

精霊王は、火、水、氷、雷、風、光、闇のすべての精霊を束ねる者、いわば主によって決められる。

その主は代々の精霊王が選ぶ。

わかりにくいが、精霊王は前の主に決められ、前の主が死ぬとその精霊王たちは新しい主を探し、選ばれた主がまた、新しい精霊王を選ぶ、ということである。

精霊王は、基本的に不死身だが選んだ主に殺されれば死ぬ。

だから主は、死んだ精霊王にかわる新しい精霊王を他の精霊のなかから決める。

だが、精霊王が代替わりしたのは、何億年の時のなかでたったの1回のみである。

そのたった1回の代替わりは、精霊王たちが主に選んだ者がそのすべての精霊王を殺し、新しい精霊王を選び、『精霊王達の主』という肩書を放棄し姿を消した、というものだった。

そこから今日まで、精霊王の主は存在しない。

そのため、精霊王もその時から代替わりをしていない。

新しい主を選ぼうと各精霊王は他の精霊王にこいつはどうだ?と候補を出してはいるものの、各精霊王達の中には『お気に入り』がいるようで、私のように契約まではしないが、その子を気に入り、その子に飽きるまでずっとそばにいて、この子以外には、お気に入りを作らないことが多い。

まあ、その話はまた後日、改めてするとしよう。

次に偉いのは、精霊王によって、姿を与えられたものだ。

普通の精霊は人間の目で見ることはできない。

だが、精霊王に何らかの『形』を与えられることによって、力を増し、人間にも見えるようになる。

一番下は普通の精霊である。

そこらへんにいっぱいいるが、さっきも説明したように人間や他の種族には見ることができないのだ。

ただし、『マナ使い』なら話は別で、マナ使いは精霊王以外の精霊を見ることができる。

これもまた、次の機会にでもお話ししよう。

話を戻そう。

黒い獅子|(森の主)は黒曜によって獅子という形を与えられた闇の精霊なのだそうだ。

黒い獅子は私の事を見てから、びっくりしたような顔で黒曜の事を見た。

それから泣きながら、私の前に首を垂れた。

何故、この二人を襲っているのかと聞くと、森をその者たちに荒らされたからだと言っている。

「あなた達はこの森荒らしたのですか?」

私は一人に尋ねた。

「してません!!」

「・・・してないと言っているようですが」

『彼らは森に入った。それは違反なのです。人間がこの森に立ち入ることは禁じられています。・・・マナ使いは別ですが』

「ああ、つまり存在自体が邪魔、というわけですね」

『はい』

「・・・では、この子たちを私にくれませんか?」

『それは、この人間たちの主になるということですか?』

「そうです」

『我らが王が決めた主の所有物なら我々は手出しできません』

「それは了承ということでよろしいですね」

『・・・』

「沈黙は是と受け取ります。では、これにて・・・そういえば、何故人間の言葉がわかるのですか?」

今更かもしれないが、私は精霊語を話していない。

それなのに何故理解できているのだろう?

『今更ですね・・・喋ることはできませんが理解することは多少』

「なるほど。では、私たちはこれで失礼させていただきます」

『またのお越しをお待ちしております。精霊王様も』

「はい」

「ええ」

そういうと、森の主である黒獅子は森の中へ姿を消した。

「・・・」

青年は怪我をしている人間を庇うように座り、こちらをびくつきながら見ていた。

だが、目だけは真剣にこちらを見据えていた。

おそらく、もう一人の青年は彼にとっての掛け替えのない存在なのだろう。

「・・・私はレベッカ・ウィリアムズと申します。あなたたちのお名前を伺っても?」

「ラ、ラムです」

「そうですか。倒れている彼は?」

「お、俺の兄で、ロムです」

「・・・双子か」

黒曜が呟いた。

その瞬間、ラムの体が震え、怯えた目でこちらを見てきた。

「なるほど。双子は忌み嫌われている存在、ですか」

「・・・・」

ラムはぎゅっと目をつぶった。

何故だろう。

私にはその行為の意味がよく理解できない。

「まあ、取り敢えず、手当をしましょう。そのままでは、彼は確実に死にます。大切な人なのですよね?」

「・・・た、助けてくれる、のか?」

ラムは閉じていた目をカッと見開いた。

「ですが、私にはこちらの人を治すすべを知りません。私の家には、おそらく医者がいます。そこで手当をしましょう」

おそらく、兄は私が大けがをして帰ってきてもいいように医者を呼んでくれているだろう。

私は、前世で医療を学んだことはあるがほんの少しかじった程度だ。

(もう少し医療を学んでおくんだったな・・・帰ったらやろう)

「応急処置ならば今できます。とりあえずそれだけしましょう」

私は着ていた服を割いて血を止め、できる限りの応急処置をした。

「事情は、私の家にて聞かせていただきます。今は一刻も早く家へ向かいましょう」

「・・・主、よろしいのですか?双子は人間の間ではとても嫌われていると聞きました。もし彼らを連れ帰って

「それは、問題が起きた時に考えます。今はけが人の治療の事のみを考えます」

「ですが」

「私は彼を見殺しにしたくはありません。まだ可能性があるのならそこに突っ込んでいきます。・・・それが人間ですよ。私がけが人を背負います。あなたはラムを連れてきてください。ああ、それとあの速さは彼らには耐えられないでしょう。シールドを張りながら進んでください」

「かしこまりました。空気抵抗があるため少し遅くなりまっすが」

「普通に歩くよりははるかに速いでしょう?」

私たちは急いで家に向かった。



私と黒曜は何とか家についた。

出迎えてくれた兄が気を失い、屋敷中から悲鳴が上がった。

その理由がわからなかったが、医者は予想通り来ていたのでけが人を託した。

鏡を見ると、悲鳴の理由が分かった。

服は裂けていて血がついている。

勿論この血はけが人のロムのものだが、それを知らない兄は私の血だと思ったのだろう。

目が覚めたら謝ろう。


ラムは、びくびくしながらこちらを見ていた。

「まずはお風呂に入りましょう。話はそれからです」

私はメイドたちにラムを預けた。

黒曜も・・・と思ったが精霊だからいらないと答えられた。

私も風呂に入ろうとすると黒曜がついていくといったのでそれは断っておいた。

風呂から上がり、自分の部屋へ戻るとラムは体中についた泥が落とされて服も従者用の服を着せられていた。

ラムを椅子に座らせると私もその向かいに座った。

メイドは全員下がらせ、中にいるのは3人(一人人でないものもいるが)だけだ。

黒曜はお茶を入れると、私の後ろへ立った。

私は、周りに音が漏れないようにする魔法『クローズ』をかけ、盗み聞きの防止を行った。

「では、何があったのかをお話しください」


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