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7話

よろしくお願いしますm(_ _)m

みっちゃんに訊かれた大路君は、私に向き直り頭を下げた。普段、王子と呼ばれ女の子に囲まれているような人がそんなことするとは思わず、驚きのあまり唖然とする。


「女子に追われている山下さんを見たんだ。今朝のことがあったからだろ?だったら俺のせいだ、ごめん。だから助けようと思って探してたら、あんなことになっていて……驚いた」


あんなこととは、湊ねぇの妄想にとり憑かれたみっちゃんに抱き締め上げられたアレですね。アレに関しては助かった、本当に苦しかったから。

でも、女の子達から助けようとした、というのはいただけない。もし、あの女の子達の目の前で助けられていたら、想像するだけでゾッとする。そんなの相手の嗜虐心を煽るだけだ。

大路君には悪けれど、間に合わなくて良かった。


「そう、なんだ、ありがとう。でも、もう助けようとしなくて良いよ。あと、私に構わないで、下さい」

「それってどういう意味?」

「そのままの意味、です。わ、私は目立ちたくない。大路君は、注目されることに慣れてるかもしれなしけれど、私は、無理……」

「話しかけるな、ということ?」


大路君は少し悲しそうに、そして少し怒ったように言った。

沈黙が流れるなか、私は小さく頷いた。


「……そう、分かった。山下さんに迷惑をかけるつもりはなかったんだ。ごめんね。俺、先に戻るから……」


ドアが閉まる音がして、大路君は出ていった。私は突っ立ったまま、拳を強く握りしめた。

大路君は私のお願いを聞いてくれた、それで良いじゃないか。なのになぜ、こんなにも気分が晴れないのか……。


「ねぇ、みっちゃん。私間違えたのかなぁ」


みっちゃんは私の質問に「さあなぁ」と答えた。そんなの答えになっていない。教師なら生徒の質問には答えて欲しい。

私の不満が漏れた顔を見て、みっちゃんは溜め息を溢す。


「そんな顔すんな、俺だって分かんないの。この歳になっても分からないことの方が多いんだよ。今望が考えていることの答えは、結果が出てからじゃないと正しいのか間違えたのか分からないことだ。しかも、本人にしか分からない」

「結果が出るのはいつ?」

「さぁ?でも一つだけ言えるとしたら、言わなきゃ良かったと思っているのなら、望にとっては間違いだったんだろう」

「……酷い。みっちゃんは意地悪だ」

「当たり前だろ、俺の優しさは湊限定だから」


「姉妹なんだから私にも優しくしてよ」そう言えば「湊が妬くだろ」嬉しそうに笑って言った。

予鈴が鳴った。教室に戻らなければいけない。でも、戻りたくない。教室には大路君が居る。しかも真後ろに……。


「みっちゃん……」

「情けない声出すなよ。頑張ってこい。ケーキ奢ってやるから」

「うん、行ってきます……」


ケーキは嬉しいけど、やっぱり戻りたくない。教室へ向かう足は鉛のように重かった。こんなにも憂鬱な気分になったのはいつぶりだろう。

一歩一歩、教室に近づく度に胃が痛くなっている気がする。

ああ、やだなぁ。だから私はモブで居たいんだよ。

ひっそりこっそり学校生活を送れていたら、女子に追いかけられることもなかったはず。


本鈴ギリギリに教室に戻ると、無意識に大路君の姿を探していた。大路君は自分の席に座って窓の外をボーッと見ている。

私が席に座っても、大路君の視線は動くことはなかった。



「……望ねぇ、機嫌悪い?」

「別に、悪くないよ」


りっちゃんは卓さんご飯を食べに行くと出掛けたので響と二人、向かい合って夕食をとっていると窺うように訊かれた。


「じゃあ、落ち込んでる?」


素っ気なく答えると、今度は落ち込んでいるのかと訊く。“落ち込む”その言葉を聞いて箸が止まった。

結局あれから大路君と目が合うことは一度もなく、もちろん話しかけられることもなかった。

自分が言い出した事なのに、モヤモヤが残って気持ちが重い。

響に指摘されて分かった。そっか、私落ち込んでいるんだ……。


「私、悪いことしちゃったのかもしれない。どうしよう……」

「謝れば良いじゃん」


軽く言う響にムッとする。私は響と違ってコミュ力が高くない。第一、構うなと言っておいて謝罪するのは矛盾する。


「そんなに簡単なことじゃないの」

「ふ~ん。良く分からないけど、望ねぇは悪かったって思ってるんだろ?そのまま伝えれば良いことじゃん。なにが難しいの?」

「だって、私がお願いしたことだもん。相手はそれを守ってくれているだけだから……。だから謝れないんだよ」


そうだ。大路君は私の頼みを聞いてくれて、守っているだけ。それを今更無かったことにして下さいなんて、自分勝手にも程がある。


「望ねぇが人間関係で悩むって珍しいな」

「そうかな?」

「うん。普段は人と関わらないようにしてるじゃん。なんだっけ、モブ?それになりたいとか言い出した時は頭が可笑しくなったのかと心配したけど、あんなことがあったからしょうがないかなって。だから誰かのことで悩むことがあるんだなぁと思ってさ」


随分と失礼だな。響って基本的に私に遠慮がないよね。弟だから当たり前けど。


「後悔してるなら自分から行動しないと。まずは挨拶からやり直したら」


挨拶からか……。それでもハードルは高いけど、クラスメイトなら挨拶するのは自然だよね。なるほど、挨拶ね。


「ちなみに悩んでる相手って男と女どっち?」

「言う必要ある?」

「いいから、どっち?」


訊く意味が分からないけど、小さく「男子」と答えた。すると響はさっきとは打って変わって「やっぱりナシ!」と言って立ち上がる。


「ちょっとー。応援してくれるんじゃないの?」

「女なら応援する。でも男はダメだ!謝らなくて良い、挨拶もしなくて良い、関わらなくて良い!」

「いきなりどうしたの?男子だと何がダメなのさ」

「望ねぇは考えなくて良いから!とにかくダメなものはダメ!ごちそうさま!」


響は律儀にお皿を下げて部屋に戻った。結局、何がダメなのか分からなかったけど、食器を片付けながら決意を固めた。

構うなと言った手前挨拶をするのも気が引けるが、言い出したのが自分なら行動するのも自分からではないと大路君に申し訳ない。今日のことに懲りず大路君から話しかけてくたら楽なのになんて甘えられないし……。


「よし、頑張ろう」


小さな決意と勇気を持って、私は眠りについた。

次回もよろしくお願いします。

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