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6話

「ああ、湊が消えた……」

「最初から居ないから!」


ぽっかり空いた腕の中の空間を見つめ、寂しそうな顔をする。

幻覚まで見えるようになっているなんて、怖すぎ。

私は大路君に抱き寄せられたまま、みっちゃんに突っ込んだ。

そうだよ、なんでこんな状態になってるの?おかしすぎるでしょ。


「あの~、大路君?助けてくれてありがとう。もう、大丈夫だから」

「……」


あ、反応なしですか。そうですか。

元はと言えば大路君のせいなんだけど、その元凶に二度も助けられた身としては抗議しづらい。

それとなく体に回っている腕を外しにかかる。すると、気づいた大路君が「まだダメ」と言って私の手を取った。がっちりホールドされ、手も足もでない。


「大木先生、山下さんに何してたんだよ」


……怖い。めちゃくちゃ怒ってる。大路君が怒る理由が分からないから尚更怖い。

説明しようとしても、「山下さんは良いから」と聞いてくれない。

いや、聞いてくださいよ!

みっちゃん、早く正気に戻って!

口をパクパクさせて、みっちゃんに「せ・つ・め・い!」と伝える。


「ん?望、なにやってんだ」

「何やってんだ、じゃないよ!説明してって言ってるのー!」

「説明?まあいいや。とりあえず中に入るか」


みっちゃんは大路君に抱き締められている私の格好を気にも留めず、一人で自分の巣である準備室に入ってしまった。

どんだけマイペースだ!ふざけろ、変態教師!絶対湊ねぇにチクってやる!


「お、大路君。説明するから、なか、入ろう?」

「……アイツと居て大丈夫?」

「うん、大丈夫。それも説明するよ」


「分かった」そう言って私の体に回していた手を離した。

ホッと息つく暇もなく、腰に腕を回される。

なんだろう、大路君て無意識にボディタッチとかしちゃう人?

普通だったら嫌悪されるだろうけど、大路君くらい顔面偏差値が高いと逆に喜ばれるんだろうなぁ。

でもさ、皆が喜ぶと思ったら大間違いだよね。現に私は無理。

モブの立ち位置を求めている私には、こんなに目立つ主役と一緒いるって自爆行為だと思うんだ。


「大路君、手、離して欲しいです」

「何で?嫌?迷惑?」

「えっと、歩き難いかなぁって……」

「分かった。……これなら良いよね」


え、良くないです……。

何を思って良いと言っているのかわからないけど、大路君は私の手を握ってそう言った。

妥協案が手繋ぎって……。どうなの?容認して良い事なの?

良いのか悪いのか、それすらも分からなくなっている。

複雑な顔で繋がれた手を見る。うん、やっぱりダメでしょ。


「できれば離して欲しい」

「……山下さんが嫌なら離すよ」


なぜ大路君の中には嫌か良いかしか無いのか。不思議だ。

嫌だと告げてはいけない気がするが、ここは頑張れ私!


「い、いや、です」

「分かった。今回は山下さんの気持ちを尊重する」

「ありがとう」


お礼を言ったけど、“今回は”ってなに?

次もあるの?

そんなこと、一度も望んだことありませんけど。


中に入るとみっちゃんは上着を着替えていた。どうしてなのか聞くと私を湊ねぇと間違えて抱き締めたとき、ファンデーションが付いたのだと言う。

そっか、ファンデーションが……。


「お、お、大路君、ちょっと見せて!!」

「急にどうしたの?」

「朝、ぶつかった、ファンデーション!」

「ぷっ。山下さん片言過ぎ」


笑ってる場合じゃないんだよ、ファンデーションは染み抜き大変なんだから!

服を剥ぎ取る勢いで確認すると、ぶつかったのが鼻先だけだったからか汚れてなかった。

良かった~、これで汚れていたら大路君のファンにどやされるところだったよ。

ブス以外の暴言をぶつけられるところだった。暴言ならまだ良い、直接攻撃されたら立ち直れない。


「お前らいつの間にそんな羨ましい関係になったんだ」

「みっちゃん煩い!……え、それはなに?」

「これは俺の癒しだ」


目をキラキラさせて言われても……。

今までで気づかなかったが、みっちゃんの仕事机には湊ねぇの満面の笑みを写した写真が飾ってあった。一見すると妻か恋人のようだけど、二人はまだ付き合ってすらいない。

湊ねぇ、みっちゃんもうダメだった。限界突破しちゃってるよ……。可哀相で涙が出る。


「山下さん、説明」

「あ、そうだった。ごめんなさい」


余りの衝撃にすっかり大路君の存在を忘れていた。こんなに存在感あるのにね。

大路は私とみっちゃんが軽口を叩き合っているのを見て、不審な目を向けていた。


「大木先生は昔同じマンションに住んでいて、小さい頃からの知り合いなの。さっき抱き付かれたのは、あの写真の人の真似を私がしかたらで……」


これ、真実を言って良いのだろうか。みっちゃんが変態だって誤解されないかな……。ま、いいか。事実、変態だし。

言っていることも、やっていることも、要求も誰が見聞きしても変態だよね。


「真似すると抱き付くの?なんで?」

「それは……、写真の人は私の姉なの。大木先生は、姉が好きで、でも、まだ付き合えなくて……。だから、その……。ふ、普通じないんだよ、姉が関わると大木先生は可笑しくなるの!」


もう良いでしょ!?これで納得してください、お願いしますから!

助けてくれたことには感謝してるけど、これ以上追い詰められたらキレるよ。逆ギレしちゃうよ?

普段大人しい人がキレると怖いよ!怒り方をしらないからね。


誰が見てもテンパっている私に大路君は笑いながら「もういいよ」と言った。

あ~、嫌な汗かいた。大路君みたいに目立つ人との会話って疲れる。慣れないことはするものじゃないね。


着替えを終えたみっちゃんは、椅子に座り、湊ねぇの写真を見た後で「ところで大路は何で居るんだ」と訊く。

そう言えば、何でだろう?

いつの間にかアクセス数が凄いことになっていて、怖いです。

1・2話を上げたときは1日のアクセス数は30くらいだったので、混乱してます。

こんな拙い文章でも少しでも楽しめていただければ幸いです。

次回もよろしくお願いしますm(_ _)m

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