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1話

新しく始めたました。

短編の予定が思いの外長くなってしまったので連載です。


よろしくお願いします。

一本500円の薔薇よりも、道端に咲くタンポポが良い。

ブランド物のバッグよりも、ファストファッションのバッグが良い。

テレビドラマや映画のエンドロールに出てくる通行人Aや、クラスメイトFが良い。

ようするに、私はモブで居たい。

ひっそりこっそり、教室の隅っこで陰日向に過ごし、そんな人居た?と同窓会で言われるくらいが私には丁度良いポディションだと自負している。


私には双子の兄と姉、弟がいて、両親がマンションの購入を決めたのは、兄と姉の幼稚園入園に合わせてのことだった。

まだこの世に生を受けて居なかった私は、購入したばかりのマンションで育った。

隣には1日違いで産まれ、産院も同じ。正しく産まれた時から共に育った幼馴染の女の子、斉藤さいとうりつ。通称りっちゃんが住んでいる。

りっちゃんのご両親はそれぞれが日本とお外の国のハーフという、とても国際的なゴージャス夫婦。

その夫婦から産まれたりっちゃんは、同じ年齢とは思えない程大人っぽい。

灰色の瞳に長く緩やかなヘーゼル色の髪。白い肌とモデルの様な容姿と体型はかなり人目を引く。

羨ましい、とは思うけど、りっちゃんになりたいとは思わない。

りっちゃんの口癖は「視線がウザイ」だ。

可哀想なりっちゃん。そんなりっちゃんの癒しが私らしい。

どうやらこの平々凡々な容姿がいたくお気に入りで、ストレスが溜まると抱きついて離れなくなる。

私の容姿は自己評価で中の中。身長・体重・学力、全てにおいて平均。そう、私こそキングオブ平均。

学力に秀でた兄。容姿に秀でた姉。運動に秀でた弟。そんな目立つ兄弟の中でなぜ私の様な平々凡々が産まれたのか、不思議だ。成る程、これが人体の神秘というやつか。しかし、弟に言わせれば私が努力していないだけらしい。

努力?なにそれ美味しいの?

努力しないと手に入らない幸せは、幸せとは言わない!

だって、幸せになる過程が苦行ってことじゃないか。


私の夢はそこそこの大学に進学して、そこそこの会社に就職して、普通の容姿の人と普通の恋愛をして、普通の家庭を築いて、子供は二人か三人。

人生の最後は子供や孫に見守られながら旅立つ……。

そんなの……最高じゃないか!

なのに、なぜ。なぜこんなことになっているのでしょうか。

誰か教えてください!


キングオブ平均こと山下のぞみ。先月めでたく18歳になりました。

今日の朝に観たテレビの星座占いでは一位でした。

新しい環境で素晴らしい出逢いがあるでしょうと言っていました。

しかし、これは素晴らしい出逢いではない!断じて違うと宣言します!


占い通りなのか、ホームルームで席替え発生。新しい環境になりました。

窓際の後ろから2番目の席は上々。ひっそりこっそり学校生活を送りたい私には打ってつけ。

後ろに奴が来なければ……。


奴とはこの学校で女子生徒人気No.1の男。イケメン興味なし。ハイスペック興味なしの私ですら認識しているモテ男である。

ちなみに、男子生徒人気No.1はりっちゃん。さすが私の幼馴染。鼻高々です。

そのNo.1男の名前は大路おおじしゅう

大路って……。人気No.1で名字が大路って!!

お分かりのように、渾名は王子だ。

その大路が私の真後ろを陣取っている。

痛い……。視線が痛いです。助けてりっちゃん!

どんなにSOSを送ってもりっちゃんは助けてくれない。だってクラスが違うから。

視線を向けてくるのは当たり前だけど女子だ。男子だったら面白かったのにね。

「離れろ、ブスっ」の無言の圧力と、「お前なら安心」のあまり優しくない安堵が一心に注がれるこの席は、はっきり言わずとも居心地が激ワルです。

これじゃひっそりこっそり生活出来ない。

どうする?よし、こうしよう!

このまま針の莚でいるよりは、一瞬の勇気だ!

頑張れ、私!


「先生っ」

「何だ、山下」

「黒板がよく見えないので、前に移動したいのですが」


私はなけなしの勇気を振り絞り、再度席替えを要求する。

ギラッとハンターの目になる女子。

ひぃー怖っ。寒気マックスだよ。


「そうか、なら誰かーー」

「なんで?」


先生がせっかく席の交換を了承してくれたのに、余計なことを言いやがった。私の真後ろの大路がっ!

なぜ、どうして、Why!?


「山下さん、視力悪くないじゃん」


なぜお前が知っているんだ!?

確かに私の視力は悪くない。だけど、左右で視力が違う不同視なので、眼鏡で矯正している。

裸眼でも見えるけど、長時間裸眼で過ごすと眼精疲労が溜まり、頭痛を引き起こしてしまうので眼鏡は必須。

決して地味子を演じるためじゃない。じゃないったらないのです。

まぁ、多少?狙ってることもなもないのは否定しない。


「ねぇ、どうなの?」


追い討ちをかけるかの如く悪魔は囁く。

私の平和な生活を脅かす奴は悪魔でじゅうぶんじゃ!


「あ、あの。えっと、ですね」


しかし悲しいかな、言い返す度胸がない。

冷や汗をかき、しどろもどろになりがらやっとの思いで出た言葉は「やっぱり、良いです……」

……バカだ。バカにも程がある。

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