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二人の魔王の世界征服  作者: 魔王
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魔王のこれからについて

あれから宴は無事に終わり、皆地べたに寝転んでいる。フリーだな〜とか思いながらそんな光景を眺めていると、ラストが顔だけ俺に近づけてきた。そんなラストの頭を優しく俺は撫でてやるのだった。

「ぐるぅ」

「なんかもう、ここまで来ると犬っぽいな」

「?」

ちなみにここはお城の三階のベランダ。もちろん、ラストは体自体がでかいためこのお城の中には入れない。そのため、こうして城のすぐ側の外に離しているのだ。フォルムだけで言うなら誰もが腰を抜かすような存在なんだろうが、今の俺にはタダのじゃれてくる子犬にしか見えない。

「こんな所にいらしたのですね」

「ん?」

声がして振り返ってみるとそこにはフレイヤが立っていた。みんなと一緒になって酔いつぶれたと思っていたのだが…。現に一番大きい篝火の所にガイは酔い潰れて眠っている。その隣にはエリザもガイに寄りかかるようにして寝ている。そんなエリザの反対側にフレイヤも眠っていたはずなのだが。

「えと…」

「ぐるるる」

ラストはまだフレイヤのことが嫌いなのか威嚇する。しかし、攻撃してはダメと分かっているのかそれだけにとどまる。

「ふふ、今夜は少し風が涼しいですね」

今夜、と言っても太陽も月もどこにも見えない魔界なのだが。まぁ、風が涼しいのは確かだな。それも、ラストの羽ばたきのせいなのだが。

「そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ」

「グルゥ」

フレイヤはラストと仲良くしたいのか宥めては見るものの、全くもって効果なしだ。

「どうかしたの?」

「いえ、ただ少しカイ様とお話がしたくて」

「そ、そう」

俺の隣に来たフレイヤは少し風で乱れた髪を治して俺に向き直る。そんなフレイヤのちょっとした仕草にドキッとしたのは気のせいだろうか。

「単刀直入に言いますと、カイ様はしばらくここに留まるのですよね。その後はどうなさるのですか?」

ずばり、さっきまで考えていたことを言われて少し戸惑う。この世界に来て、おそらくまだ二日も経ってないだろう。わからないことが多すぎるのだ。なんとかハイドアビリティである観察眼の解説のおかげで大体の状況は飲み込めたが。それでも、魔法の使用方法、この世界の現状、帰れる方法、クリアの条件などなど、やる事探すことは沢山あるのだ。ハイドアビリティである観察眼にも限界はあるし分からないことはほんとにわからないらしいし。こう、裏で誰かが俺を操ってるとかそういう展開でもなかったし。

正直ゴールが見えないのだ。

「まだ、わからないんだ」

「わからない、ですか?」

「俺は一体なんのためにここにいるのか」

「哲学ですね」

フレイヤは俺の真面目な質問にニコッとするのだった。

よし、ここでおさらいしよう。まずだ。

これが俺の知ってるラノベとか異世界ファンタジーゲームみたいなものであるならだ、必ず美少女みたいなサポートキャラがいて進んでいけばいくほどやるべき事が見えてくるはずなのだ。最初から。

大雑把に例えるならこうだ。

まず、何らかの事故で異世界に転移される。

転移された場所には美少女か村長みたいな存在がめの前に立っている。

すると、その人から「この世界をお救いください」とか「あんたは今日から私の奴隷よ!」とか言われる。

そうして街の人たちを救ったり、美少女をかっこよく助けたりする。しかも、チート持ち。

そうすることで、さらに裏側の敵と戦うことに。

みたいなのが俺の知ってる王道な展開なんだよなぁ。

ないじゃん、これ。だって最初に転移されたのわけも分からない密林だぞ!?しかもその場所に誰もいないどころか街や村さえもないし、人っ子一人もいなかった。挙句、一番最初に仲間にしたのがスライムである。いやまぁ、フジサンは仲間にして正解だから文句は言わない。問題はその後だよ!やっと人に会えたかと思うと相手は魔王だし!ていうかラスボス的存在だし。チート能力はあるにせよ使い方がわからないし。

かと思えば魔王のお城に招待されてそのうえ仲間?みたいに迎え入れられたし。

うん、いや、この主人公がダークヒーロー系なら納得したよ。でもなぁ…。まぁジョブがジョブなだけに納得せざる得ないが。うーむ。

「カイ様?」

「え、あ、ごめん」

つい考え込んでしまったのかフレイヤのことが頭から離れていた。

「それで、カイ様はどうされるのですか?」

「えと、なんでそんなに詳しく聞きたがるのかな?それは異世界とはいえ同じ魔王という存在がいるから放っておけないって意味なのかな?」

「あら」

俺の数少ない知恵を振り絞って出した質問にフレイヤは驚く。そんなフレイヤだがすぐにまた笑顔に戻って答えてくれる。

「まぁ、そういう意味では確かにそうですが、別段そこら辺は気にしておりませんわ。まず、今のカイ様がガイ様と争うことはないと思いますし」

まぁ、そうだろうな。なにせ戦闘になって負けるのは間違いなくこっちなのだから。いくらラストがこちらにいてくれたからってここでは多勢に無勢だろう。それに、ガイ自身がラストに飛びかかっていくぐらいだ。それは倒せるという確実な保証があるからだろう。いくらチートスキル持ちの俺でも数を出されたら負けるだろう。個人個人が圧倒的なパラメーターの差があるならそうはならないだろうが、ここにいる魔物もといガイの部下達はそれぞれが強力な個体だ。瞬殺されるのが目に見える。そんな改めてちょっとした絶望に浸っていると、フレイヤが説明してきてくれた。

「カイ様のところがどうだったかは分かりかねますが、この世界には十二柱の魔王がいるのです。つまり、この世界の魔王はガイ様だけではないのです。あ、カイ様を含めると十三柱ですね」

そんなことを軽くケロッと言っちゃってくれるフレイヤ。まてまて、この世界には魔王がそんなにいるのか?

「まぁ、魔王と言っても皆がガイ様みたいな崇高なるお方とは言えませんが。あ!もちろん、カイ様は別ですよ?」

慌ててフレイヤは訂正する。

「う、うん」

「魔王にはそれぞれ支配する土地がわかれているのです。その大陸ついては大きくわけて三つあります、ユーフィズ大陸、オーデンセント大陸、アーカセル大陸の三つがあります。加えて魔界と天界と神界の三つがその大陸の影と光になるように重なって存在します。そうした計十二大陸にそれぞれの魔王様が居られます」

き、規模がでかいなこの世界。天界に加えて神界、それプラスこの魔界。それに重なって存在する通常世界。そして、そのどこにも魔王という存在がいる。ストーリーとしては莫大すぎるほどだ。

「ち、ちなみにだけど、ここはどの大陸の魔界なの?」

「ここはこの世界でも最も大きいと言われるユーフィズ大陸の裏側、簡略して言うならユーフィズの魔界でしょうか?」

なんだか色々と簡略してる気はするがまぁだいたいわかった。今の話でユーフィズ大陸がおそらくこの世界で一番大きい大陸だということも、そんな大きい大陸の魔界を支配してるのがガイなのだとしたら、とてつもなく強いのだガイは。支配者の強さは土地の大きさがそれを語ると昔の偉人の本に確か書いてあった。まぁ、それだけ大きい大陸をたった一人で支配しているのだとしたら、それは相当なものだろう。

「ふふ、そうですね。カイ様、私に提案があります」

何かを思いついたようにフレイヤは俺の目の前に顔を寄せる。

近い近い!

「な、なに?」

「カイ様はまだこの世界についてとんと知らないご様子ですし。何をやるにしてもこの世界のことは知っておくべきだと思います」

「ま、まぁそれは確かに」

「ですので、明日からこの世界について詳しく勉強致しませんか?もちろん、私がワンツーマンで教えいたしますので」

「え、いいの?」

それは願ってもない提案だった。確かにこの世界については俺は全然知らない。せめて知っているのはパラメーターというものがあり、それぞれにスキルやジョブが存在する。モンスターもその例外ではない。さらには魔法が存在する。そしてこの世界の名前、レムリアということぐらいだ。

「えぇ、では明日から早速お勉強ですね」

フレイヤはとてもいい笑顔でそう言った。

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