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二人の魔王の世界征服  作者: 魔王
4/7

魔王再誕!

不意打ちでした。確実に不意打ちでした。俺は今、1人で大量のモンスターを目の前にして立っています。



〜数分前〜


「ふむ、では始めるか」

「帰れるのね!」

「仰せのままに」

ガイがこの遺跡のさらに奥に進む。すると、地面に魔方陣的な何かが刻まれた部屋に出た。

「何をしている?はやくこい」

「あ、あぁ」

俺は急かされるままにその魔法陣の中に入る。

「では、帰るとするか。我が国に」

「国?」

俺のそんな疑問にガイは答えず呪文をぶつぶつと唱え始める。ガイの代わりにフレイヤが近づいてきた。

「今からテレポートしますのでしっかり掴まっていてくださいね?」

そうフレイヤが手を差し出す。俺は躊躇するもののその手をとるのだった。

「では、飛ぶぞ」

「はやくはやく!」

「はい」

「へ?」

次の瞬間、体全体に浮遊感がはしり視界が一気に白に染まる。あまりにもいきなりのことだったため俺はフレイヤと繋いでいた手を離してしまった。

「うわぁぁぁ!?」

そのまま俺は白色の世界に吸い込まれていった。



そして目を開けたらこれである。どうしようもない。助かりようがない。めっちゃ怖い!なんか、もう色々なごついモンスターだらけ。周りの景色はというと、黒い瘴気が所々に見えて剥き出しの大地しか目に入らない。いや、正確にはモンスターに囲まれてそれしか見えない。しかも、すごく空気が澱んでいる。これ死んだんじゃね?もう死んだよね?デッドエンドだよね?やっとチュートリアルかと思ったら罠にハマったパターンだよね?最初からラスボスの部屋に行くあのイベントだよね?

俺は顔面を蒼白にして棒立ちになる。思考回路は真っ白である。

「キシャァァ」

「グルゥァ」

「ガルルル」

モンスター達はそんなカイを円になって囲むようにしている。それぞれ種族はバラバラなのか、どいつも見た目が違った。蛇みたいなやつ、と言ってもほんものの蛇ではない、大蛇。しかも、全長30mは超えるであろうバケモノ級。他にも狼みたいなモンスターに石でできた体、ゴーレムみたいなものまでもいる。さらに、驚くことにドラゴンがいるのだ。そう、あのファンタジー世界でもゲーム世界でも必ずと言っていいほど存在するドラゴン。群を抜いてこいつが一番でかかった。テレビ画面とかだったら真っ先に体が見切れてるやつだ。俺はガクブルしながら視線を徐々に上に上げていく。ほかのモンスター達は何匹か集まって俺を囲んでいるがはっきりとドラゴンとわかるフォルムをしているのはこいつだけだった。

「グルゥ…」

うわ〜、本物の絵に書いたようなドラゴンだぁ…。

ぎゃぁぁぁぁあ!!勝てるわけない!いかにもラスボス感でてるよアイツ!漆黒の龍鱗に凶悪的なフォルム。その口からは度々紅い炎がチラ見する。その威圧感はほかのモンスターと比べて群を抜いていた。

むり!あんなのに勝てるわけない!一撃で屠られる!

そう頭の中の恐怖感が混沌としていると、あのドラゴンの『情報』が出てきた。

『 相手モンスターの情報を取得しました。

種族 ドラゴン 固有種 レクイエムドラゴン LV300

STR 30000

DEF 30000

AGI 15000

INT 30000

CHR 30000


スキル


レクイエムブレス

効果・触れたもの全てを即死させるブレスを放ちます。


終焉の眼差し

効果・長時間、敵をロックした時、拘束・即死効果を付与させます。


アビリティ


ドラゴンソウル

効果・生命活動の九割を削られると発動します。全パラメーター

1.5倍になります。


固有アビリティ


終焉の力

効果・独自の終焉魔法を使用できます



以上がレクイエムドラゴンのパラメーター及びスキル、アビリティになります。』


えぇ〜、即死ってどういう事やねん。俺の言った通り一撃で屠られるよ。まさに必殺。一撃必殺の即死アボーンだよ。

そんな馬鹿みたいなチート効果をみて意識を手放しそうになった時。どこからか声が聞こえてきた。

「うわ!なにこれ!?」

どこかで聞き覚えのある声に俺は振り返る。そこには、あの犬歯が異様に鋭い犬歯をもった赤髪ツインテの子が空から降りてきていた。背中には悪魔みたいな翼が生えていた。それを使ってか空を飛んでる。間違いなくガイの側近の子だろう。その子は俺のそばに降り立つなり目を見開く。

「これ、あんたがやったの?」

既に意識を半分ほど手放していた俺は思考がうまく回らず正直に答えた。

「怖いっす」

「へ?」

そんな俺の正直な感想にツインテの子は思わず間抜けな声がでる。

「怖いって、これはあんたがやったんじゃないの?」

「わかりません」

「そ、そう…」

俺の壊れ気味の返答にツインテの子は反応に困る。が、覚えだしたかのように俺に責め寄る。

「あ、そういえばあんたフレイヤの手を離したでしょう!せっかくあいつが優しく手ほどきしてやってたのに!」

「フレイヤ?」

「あの耳が長い淫乱女よ!」

「え、ぁ、あぁ、あの人」

「そう!なんで手を離したのよ!おかげで探すのに苦労したんだから!」

「ご、ごめん」

俺がそう素直に謝るとツインテの子は不思議そうに俺の顔を除きみる。

「ねぇ、もしかしてだけどあんたさ、テレポートも知らなかったの?」

「あ、はい」

「やっぱり…。じゃなきゃ手なんて離さないものね。でも不思議ね、魔王まで上り詰めてるのならテレポートぐらい知っててもおかしくないのに」

そう、腕組して思案顔になる。が、今は考えるのをやめたのか俺の手を引っ張る。

「ほら、戻るわよ。ガイがあんたを待ってるんだから」

「あ、はい」

俺は美少女に手を引かれてドキマギ…とはならず。半分の意識をかろうじて稼働させて無意識的について行くのだった。

連れていかれる際、後ろからモンスター達の悲しい声が聞こえてきたのは気のせいだろうか…。



「ほら、着いたわよ」

「お、おぉ」

なんというか、着いた先は国ってよりもお城だった。周りは寂れ果てていて目の前のお城以外何も見当たらない。まぁ、あのモンスター達の中心にいるよりかはマシだ。

「ありがとう、えっと…」

お礼を言おうとして言葉が詰まる。そういえばこの子の名前を俺は知らないんだった。そういえば、フレイヤやガイの情報は出てきたのにこの子だけ情報が出ない。なんでだろう?

「別にいいわよ」

そんなこともいざしれず、ツインテの子は先へ先へと進むのだった。俺も置いていかれないようについていく。いつまでも名前を知らないわけにもいかないので勇気を振り絞って聞いてみることにした。

「あの、えとさ、名前聞いてもいい?」

俺がそうたどたどしく聞くとその子は勢いよく振り返って

「はぁ!?馬鹿じゃないの?なんでそんなこと…」

思いっきり罵られた。名前聞くことがタブーなのこの世界?自分で探して当てる感じなの?ガイは俺の名前を知ってたしどこかに名前が表記されてるのこれ?俺は心に傷を負いながらとぼとぼついて行こうとしたらツインテの子が動いてないのに気づく。

「えと、どうかしましたか?」

ずっと俺を睨んでる。そんなに悪いことだったのかなぁ。もしかしたら殺されちゃう?殺されちゃうの俺?

そう俺が卑屈になってるとツインテの子はため息をつく。

「はぁ、そういえばあんたはこの世界についてなにも知らないんだったわね」

「あ、あぁ」

「いいわ、特別に教えて上げる。私の名前はエリザベート・V・バートリー」

「エリザベート?」

俺がそう名前を復唱すると唐突に頭の中に『情報』が入り込んできた。

『相手の情報を表示します。


名前 エリザベート・V・バートリー 種族 吸血鬼

EXジョブ 吸血姫ドラキュリア Lv.100


STR 5600

DEF 3500

AGI 10200

INT 8300

CHR 22222


スキル


吸血

効果・生き血を吸い取り自身のパラメーターをアップさせます

※吸血量、血種によって変動します


癒血ドレイン

効果・生き血を吸うことで自身を回復させます



アビリティ


魔臓

効果・五つの心臓を持ちます。場所は不特定。同時破壊しない限り再生を繰り返します。


暗闇の目覚め

効果・夜間帯は覚醒状態にはいり自身のパラメーターを底上げします。


側近

効果・主の半径五キロメートル以内にいる場合、主のそばにいつでもテレポート可能です。その逆も可能です。


バッドアビリティ


朝日の邪光

効果・朝から夕方までの時間帯、日に触れてる場合は自身のパラメーターを半減します



固有アビリティ


Vの血族

効果・???



以上が相手の情報になります』

吸血鬼かぁ、フレイヤって人が確かエルフだったよな。んでもって今目の前にいるエリザベートが吸血鬼。あれ?そういえばガイには種族って出てたっけ?出てなかった気がする、魔王だからかな?

でもいいな、吸血鬼。それならあの長い犬歯にも納得がいく。あれは吸血するためのものだったんだ。そういうところはわかった。

ただ、一つだけ謎な部分がある。それは固有アビリティであるVの血族だ。これだけだ、俺のハイドアビリティである観察眼でも謎のままだ。まぁ、これでわかったのは二つ。エリザベートには観察眼にも感知されないアビリティがある。そして、観察眼でもわからないことはある。全部ばばばって暴いてくれるほどチートスキルではなかったか、観察眼。いや、充分チートだけどね?魔王のパラメーターとかスキル、アビリティもすべて筒抜けだから。だからって勝ちっ子ないけどね!

「いい?私の名前を言いふらすようであれば真っ先にあんたを殺しに行くからね」

「そ、そんなに名前をバレるのは危ないことなのか?」

「私はね」

「?」

「はぁ、私はそういうめんどくさい事はやらないから、後はフレイヤに腐るほど聞けばいいわ。何だかんだで全部答えてくれるから。あと、私のことをエリザベートって呼んでも殺すからね?呼ぶならエリザって呼んでよね」

「あ、はい」

エリザベートもといエリザはそう言って先を進む。なんだろ?名前わバレることを嫌ってるような、それとも自分の名前が嫌いとか?それはないか。エリザに関しては謎がいくつか残ってる。まぁ、エルフの側近のフレイヤって子が教えてくれるらしいけど…。

魔王との初見イベントに魔物に囲まれる罠(自業自得)、エリザの観察眼に対する耐性の謎。今日一日で俺は一体どれだけイベントをこなせばいいんだろうか?そんなことを思いつつエリザが開けたでかい扉、いかにも魔王の間と感じさせる部屋へとはいっていくのだった。



「ふむ、無事か?」

もうそのまま、まじでそのまま。むしろ王道すぎて俺はびっくりだよ全く。どこの世界も共通なんですかね、魔王の間って。少し長い廊下?廊下じゃないな、魔王への通路か?とりあえず、まっすぐ進む。周りは暗く近くの以外のものは何も見えなかったが進むにつれて奥側が明るく見え始める。んで、案の定そこには階段がありその上には魔王の玉座があって、そこに座ってるガイがいた。もう、なんだろ、関心するよ俺は。

「まぁ、エリザさんのおかげでなんとか…」

「エリザでいいって言ったじゃない」

俺がそう答えるとエリザが横から注意してくる。いきなり呼び捨てするのもな〜と思いさんづけしたのだが逆にダメだったらしい。そんなエリザとの会話を見てガイは少し驚いたような顔つきになる。

「真名を教えたのか?エリザ」

「えぇ、ほんとは教えるつもりなんて毛頭なかったわ…。けど、こいつはガイの分身体みたいなものなんでしょ?それに、この世界について本当に何も知らないみたいだし何かあった時の保険によ」

なんだかエリザはめんどくさいと言いながら俺を庇う的なことを言っているがこれはツンデレというヤツなのではないだろうか?ギャルゲーの必須キャラだな。

「ふむ、まぁよかろう。カイよ、今宵は我の復活の宴をする。主も参加せよ」

「宴?」

「我は実に五百年もの間眠らされていたからな。あの勇者共らを殺す時が来た。だが、それにはまず我が復活したことを我の下僕しもべ達に伝えなければならない。そのための宴だ」

「は、はぁ…」

正直言おう、参加したくない!そんなの怖いに決まってるじゃん!料理とか絶対に不味そうなのしか出ないよ!魔物の宴って…、考えただけでも悪寒が。というか、より一層俺は下手こけない。やっちまったあははで済まされない。今度こそ死ぬ。

なんだこれ、なんでゲームしようと思ったら異世界に飛ばされて半日で死亡フラグ立てまくるって、なんて日だよ!

「まぁ、準備が整うまで部屋でくつろぐといい。フレイヤ」

ガイはそう言うともうひとりの側近であるフレイヤを呼ぶ。すると、どこからともなくフレイヤが虚空から現れた。

「はい」

「案内してやれ」

「かしこまりました」

えぇ、どっから現れたよ…。まさかずっとそこに居たとか?でもそんな気配なかったし。

「ではカイ様、ご案内しますね」

そうフレイヤは俺の前まで来て恭しく礼をしたあと、俺の手を引っ張って行くのだった。



「ここがカイ様のお部屋になります」

フレイヤが案内してくれたお部屋は極々普通じゃない。当たり前だ、誰が異世界に地球の日本の普通を期待するものか。むしろ、和室とか出たら俺はもう何も言えんよ。世界観だだ壊しだよ。ファンタジーとかだとこれは普通と言ってもいいのだろうか?いや、普通でもこの部屋はちょっと豪華すぎやしないか?牢屋とかそうじゃない分だけマシだけど!

「お気に召しませんでしたか?」

フレイヤが心配そうにこちらを見る。身長的には俺の方が高いわけで上目遣いに見える。エリザもそうだけどフレイヤも次元的に可愛さが違う。二次元並に。有名なイラストレーターさんが、しかも自分好みの絵を書いてくれる絵師さんがまるでどストライクのキャラを書いてくれた時並にむっちゃ可愛い。正直、エルフも吸血鬼も嫌いじゃない。ガイはいい線してるよ。

「い、いやいや!そんなことない!むしろ、こんな豪華そうなところを貸してもらってもいいのかなって…」

俺がそう正直なことを言うとフレイヤはくすくすと笑い出す。

「ふふ、カイ様はおかしな方ですね。カイ様も異世界?とはいえその世界の魔王の一人、これだけでは全く足りる気がしないと思いましたが…」

あぁ、そっか、魔王な魔王。すっかりその設定?じゃない、ジョブを忘れてたよ。でもだからってなぁ…。

フレイヤはちょこんと首を傾げる。そんな何気ない仕草も可愛い。金髪巨乳美少女とか現実じゃいないもんな。いや、いまが現実みたいなものだから実質どうなのかわからないけど。

「あ、えっと、じ、充分だ!」

なんとか魔王っぽく返してみようにもぎこちなさが際立っている。急に魔王プレイっていったてどうしたらいいのか咄嗟に思いつくほど俺もコミニュケーションに慣れてるわけじゃない。カウンセラーとかだったらババっとすぐに答えられるんだけどなぁ…。

「左様でございましたか」

そんな俺にフレイヤはそう笑顔で返してくる。俺は気恥ずかしくなってさっさと部屋に入るのだった。

「ここに置いてあるものはご自由にお使い下さい。私めは少しガイ様とのお話がありますので。なにかおありの際はどうぞフレイヤちゃんとお気軽にお呼びください」

フレイヤはそう俺を茶化してその場から消えるのだった。あまりにも急だったから言葉が出なかった。どっちが急だって?フレイヤちゃんとお呼びくださいの部分だよ!それより、今のでわかった。フレイヤが唐突に現れたり、さっきみたいに消えたりする現象が。側近のアビリティだな。これもテレポートと呼ぶんじゃないだろうか?とも思ったが言うのはやめておこう。にしても、側近のアビリティは便利だな。使い勝手良さそう。

俺は誰もいなくなった安堵からベッドに腰をかけるのだった。その際にふにょんとしたものがお尻に当たった、というか踏み潰してる感じ?それでも弾力があってバランスボールみたいにとまでいかないが人をダメにするソファみたいに沈む。いいなぁ、このベッド。こんなので寝れたら最高だよなぁ。

とか、考えてると不意に鳴き声?が聞こえてきた。

「きゅぅ〜…」

「ふぁっつ!?」

俺はびっくりしてその場から飛び上がる。何事かと思い、鳴き声が聞こえたベッドの方を見てみると、なんだろ?青いシミが布団にベチャーってくっついてる。え、なに?これやばいヤツ?と、焦っているとその物体は広げていた面積を徐々に元に戻していくように集合していく。そうしてだんだん元の形に戻っていくとそこには…。

「フジサン!?」

感覚的にわかった。丸いポヨンポヨンとした物体がベッドの上にいる。明らかにスライムだ。しかも、俺が最初に仲間にしたモンスター。

「きゅぅー!」

フジサンは気づいてくれたのが嬉しかったのか俺の元に飛びつく。俺はそんなフジサンをキャッチする。

「おま、おまえどこにいたんだ?」

まぁ、どこって確実に俺の尻の下にだろうけど。

「きゅぅ〜」

そんなことよりも俺に会えたのが余程嬉しかったのかフジサンは俺に頬擦りをする。とても柔らかくてプニプニして気持ちいい。

しかもひんやりしてて熱が冷めていく。心にも少し余裕が出来てきた。スライムがまさか俺にとってこんな癒しになるとは。もう絶対にスライムは倒さないようにしとこ。

俺はスライムを優しく抱きしめベッドに仰向けになる。服がシワクチャになるがどうでもいい。

フジサンは頭にはてな浮かべてるみたいに動かない。

「きゅぅ〜?」

声まで疑問みたいに言ってくるし。俺はそんなフジサンの情報を見ることにした。

『情報を提示します。

フレパートナー

名前 フジサン 種族 スライム Lv.5


STR 14

DEF 23

AGI 35

INT 0

CHR 8


スキル


取り込み

効果・物質を取り込み、稀にその能力を得ます。


アビリティ


物理吸収

効果・物理的攻撃力を半減します。


以上がフレパートナーの情報になります。』

え?ちょっと待ってくれ。

「フジサン、お前なんでそんなに…」

俺はそこで言葉を区切った。そのせいかフジサンはより一層疑問顔?でこちらを見ている。

どういうことだ?最初にあった時よりも滅茶苦茶弱くなってる?

というか、格段に弱くなってる。フジサンなのに変わりはない。それはもう『情報』が教えてくれてる。一体この子に何が…。

そんな奇々怪々な謎に悩んでいると不意に扉をノックする音が聞こえた。

「はい?」

俺はつい条件反射で答えてしまった。

「私です、フレイヤちゃんです。扉を開けてもよろしいでしょうか?」

扉の向こう側からフレイヤの声が聞こえてきた。

というか、フレイヤちゃんって…。言ってほしいのだろうか?

俺はどうぞと言って中に入らせる。

フレイヤは入ってくるなりニコニコしていた。しかし、とある一転を見つめて少しびっくりする。

「あら、あなたもいたのですね」

「きゅぅー!」

そうフジサンが元気よく返事する。そんなフジサンにフレイヤは礼を述べる。

「あの時はありがとうございました。あなたがいてくれなければ私は死んでいたでしょう」

フレイヤはそんなぶっちゃけたことを言ってフジサンの頭を撫でる。

「し、しんでた?」

あまりの危険ワードに聞き返してしまった。そんな俺の言葉にフレイヤは丁寧に教えてくれた。

「はい、私達が勇者と戦い敗れる際。私とエリザは殺されるところだったのです」

ま、まぁ、そりゃあそうか。王道であるならば魔王は勇者に倒されて当然と言っても過言ではないだろう。もちろん、その側近であるフレイヤ達もだ。

「そんな時にです。この子達が私たちを取り込んだままその場から助けてくれたのです」

なるほど、だからあの時、ガイが魔法を唱えたら急に現れたのたか。てか、どんな魔法を使ったわけよ。

ん?まてよ。いま取り込んだって言った?

ふと、フジサンのスキル『取り込み』を思い出す。

ということはつまり…。フジサンが最初にあった時にあんなにパラメーターが上がっていたのはフレイヤを取り込んでいたからなのか?そして、それはガイの何らかの魔法によって引き剥がされたからこうして元のパラメーターに戻ったのか。これで一つの謎が解けた。これだな。これしか説明使用がない。あ、別に弱くなったからフジサンを捨てるという選択肢はない!ただ単純にこのプニプニしてひんやりした感触を楽しむために仲間にしたのでそんな強さなど関係ない!

「そ、そうなのか」

「はい」

そこで会話が途切れる。数秒間沈黙がこの場を満たす。フジサンもフジサンで空気を読んで大人しくてしている。こういう時ぐらい暴れてもいいんだよ?

「カイ様」

「はい?」

「カイ様はこの世界について何も知らないとお聞きしております。

もしなにか聞きたいこと、分からないことがあれば私めに何なりと仰ってください。私の持てる知識を持ってお答えさせていただきます」

フレイヤはそういって一礼する。

分からないことって、分からないことだらけだけど。たったいまフジサンの謎が解けたのが初めての謎だよ?たぶん。

でもまぁ、エリザの言った通りどうやら俺の質問にフレイヤは答えてくれるらしい。どうせ宴には強制参加だ、ここから逃げることもできないだろう。なら、それまでにわからないことを聞いておこう。

「じゃあ、ちょっといいかな?」

「はい、なんなりと」

「まず一つ目なんだけど、エリザはなんで名前を隠しているの?」

これはさっき起こった出来事で一番の謎だ。この世界では名前がバレるのはいけないことなのか。それだけでも知っておきたい。

「それはエリザが吸血鬼だからです」

「へ?」

「ふふ、カイ様の世界には私みたいな耳のながいエルフや犬歯が鋭いエリザのような吸血鬼を見たことがないと仰っていましたね」

「あ、あぁ」

「では、吸血鬼について教えいたしますね」

フレイヤは丁寧に順をおってわかりやすく説明してくれる。

「吸血鬼、とは一種の魔族みたいなものです。その中でも群を抜いて強い。いわば、高貴な存在なのです。魔族とは名を知られてはいけない存在。それは吸血鬼も同じ。名を知られればその魔族は最後、名を呼ばれたものに服従することになります」

「服従って…」

だから名前で呼ぶなってエリザはいったのか。名を呼ばれればその者に服従しなくてはいけなくなるから。絶対に呼ばないようにしないとな。

「エリザは吸血鬼の中でも一番高貴な方なのです。吸血鬼族トップの姫様。吸血姫ドラキュリアなのです」

パラメーターのジョブにあったな、その表示が。つまり、エリザは生粋のお姫様ってことか。

「エリザは既にガイ様に真名を授けましたのでカイ様に服従することはないと思います」

よかった、万が一名前を呼んで服従させることになったら今度はガイが黙ってないだろう。最悪のケースになることはないと思いたい。

「以上がエリザの名を知られてはいけない秘密です。何かわからない点がございましたら遠慮なく申してくださいね?」

「いや、ありがとう。おかげでわからないことが解けてスッキリしたよ」

「どういたしまして」

そう、フレイヤは恭しく礼をする。

「他に聞きたいことはございませんか?」

そうフレイヤに言われて少し考える。聞きたいことは山ほどある、がそれを全部聞くのは時間がかかるしフレイヤも疲れるだろう。必要最低限に絞ろう。

「じゃぁ、この世界にはフレイヤやエリザみたいな種族は幾ついるの?」

「そうですね、およそですが百はいますね」

「そんなにいるの!?」

てっきり15〜16ぐらいかなーとおもってたけど。そんなにいるのか。ていうか、自分の知ってる範囲だけだとそれぐらいしか分からないから他にどんな種族がいるのか検討もつかない。

「はい、その中でもですが、この世界の地の五割を支配しているのが人族になります」

「ご、五割も?」

要するにこの大陸の半分は人間が支配してることになる。こんな魔族やらエルフやらがいて五割も支配してるって…。どんだけ強いのさ、人間。

「はい、少し前までは大人しかったのですが。五百年前から急に何かが変わったように人族は大陸を支配し続けました。結果、大陸の五割を彼ら人族が支配するようになりました」

えぇ、俺魔王なんだけど確実に殺されるよね?もしかしたらそこら辺の中ボスよりも弱いよ?今の俺…。どうしようか、これから…。

「カイ様はこれからどうなさいますか?」

ピンポイントで思ってることをフレイヤに聞かれ少し戸惑う。

どうするもなにも。そもそもこの世界自体に俺は詳しくない。何がいてどういうものがあって一体いくつの種が存在しているのか。ゲームなら簡単にネットの攻略法、書き込みなどによるマップ説明、先にゲームをクリアした人たちや製作者側が出すブログや本。それらの全てを使えばモンスターの把握、種族のちがい、世界の状況、倒すべき相手、必須アイテム、そんな隅々までのことがわかる。だけど、お生憎様だが、今の俺にそんな便利アイテムはない。PCもなければスマホもない。あるのはじぶんのアビリティとスキル。倒すべき相手も、味方についてくれる存在もいない。いや、一匹を除いては、だな。

俺は足元に佇んでいたフジサンを抱き上げる。今の俺にとっての味方はこいつだけだ。抱き上げられたフジサンはハテナマーク浮かべて俺を見る。

ここでやるべきことなんてない。ミッションもなければストーリーさえも存在しない。某有名なワールド創作ゲーム、マイクラフトに近い。フレイヤの質問にはなんて返そうか迷う。そんな俺を見てかフレイヤは言葉を切り出す。

「もし、行く宛もないのであれば。しばらくここに住んでみてはいかがでしょうか?」

恐らく今日の宴が終われば俺はここから出されるものだと思っていたのだが、フレイヤのそんな予想外の提案に驚く。

「いいのか?」

それはこちらとしては非常に助かる。なにせ、泊まる宿どころかここがどこかさえも分からないゆえに周りは寂れたら岩肌だらけ。確実に人族が住んでるような場所ではない。ましてや他の対話が可能な種族がいるのはゼロに等しい。なにせ、ここは魔王ガイのお城であり国だ。周りは魔物だらけだ。そんなところに一体誰が来るというのだろうか。それならいっその事ここで匿ってもらって、この世界について調べごとをした方がいいだろう。フレイヤもある程度なら答えてくれるみたいだし。

「もちろんです。なによりもガイ様がそう提案していらしますし」

ガイが?まぁ、確かに話したいことはある。ただ、それには危険がつきまとう。まだ、魔法の使い方さえも知らない俺は無力だ。いくらパラメーターがよかろうと、スキルやアビリティが強かろうと、それを所持するものが使い方を知っていなければ無意味。この提案は危険があるものの乗っておいて損は無いだろう。

「わかった、ならお言葉に甘えさせてもらうよ」

俺はそう言ってその提案を快く承諾した。

「かしこまりした。では、ガイ様にそうお伝えてしてきます」

フレイヤはそう言うとまたその場から消えた。ガイの所までテレポートしたのだろう。

俺はベッドに腰掛ける。

「しばらくは考える時間と調べる時間が必要だな」

「きゅぅー」

俺のそんな独り言にフジサンは元気よく返事するのだった

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