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桜の季節
「じゃあ、帰ります」
私は先輩の家をあとにした。混乱した先輩のお母さんは憔悴しきっていたのと、前から一度連れて行こうと奏音くんが思っていたのとで、精神科のある病院に行き、そのまま入院することになったそうだ。奏音くんは、お母さんに付き添ってそのまま帰って来なかったので、家の簡単な片付けを先輩とした。
「さくらちゃん!!」
数歩歩いたところで、先輩は私の名前を呼んだ。
「好きだよ! ありがとう!」
私は振り向いて笑った。
◇◇◇
季節は移ろい、春になった。私は新しい制服に身を包んで、鏡の前で一回転した。
「さくらー?準備できてるの?お迎えがきてるわよ?」
「今いく!」
リュックを背負って駆け出す。
玄関を飛び出すと、明希先輩が自転車に乗って待っていた。私と同じ、紺色のブレザーに身を包んで。
「うしろのり!」
先輩は白歯をみせて笑った。
「はい!!」
私が先輩のブレザーを掴んだら、自転車が走り出した。
爽やかな春の風が私たちの横を通り抜けていった。




