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さくらの季節   作者: 木内杏子
6/61

体験

 私はとうとう吹奏楽部の体験入部に向かった。太鼓やラッパの音がする。楽器のことをなにも知らない私は、音楽室にぼーっと立っているだけだった。そんな様子を見て、女の子が近づいてきた。


「体験入部のコ? どんな楽器が吹きたいの?」


 ああ。先輩なのか。そういえば、りぼんも紺色だ。


「あの、えーと、なにも知らなくて……」


「あーー……じゃーー……明希!! ちょっと来てくれない!?」


 見覚えのある名前に、私は反応した。


「あーーはいはい、わかったって」


 やっぱり。山野辺明希先輩だ。


「あれ? さくらちゃんやん。やっと来てくれた! ほらほら、こっちこっち!」


 明希先輩はにこにこ笑いながら私の手を引いた。手を掴まれてドキドキした私は、顔があげられなかった。


「俺が吹いてんのはこれやねん。トロンボーン。かっこええやろ」



「は、はい……」


 私はトロンボーンの体験を一通りした。あまり音はならなかったけれど、先輩といることで幸せになれた。


--一年生の体験入部終了時刻です。一年生は速やかに下校しなさい--



 そう放送が流れると、私は帰る用意をして先輩と別れた。廊下に出ると入れ違いに、さっきの女の先輩が入っていった。


「あーき! お疲れ!」


 振り向くと、さっきの女の先輩が明希先輩の腕に絡みついていた。


「疲れてへんで。沙耶こそ疲れたんちゃう? またにっこにこ愛想振りまいて」


 明希先輩の言葉がちょっとだけ皮肉っぽく聞こえた。


「まーた、そんなこと言って!」


 沙耶先輩はそういいながら明希先輩から離れて私の横を走り去っていった。


 チッ……


 私の耳元で舌打ちを残して。


 

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