先輩
数分前。
「じゃあまた明日!」
わたしは奏音くんと山野辺家の前で分かれて、歩き出した。
その数秒後のことだった。
『そうだっていえよ。 そう思ってんだろ……』
と声が聞こえた。その後に、階段を駆け下りる音がして、わたしは無意識に奏音くんの家まで戻り、玄関を開けた。
「奏音くん?!」
呼びかけたが、気づいていない。
「やめて! こないで」
女性の声が聞こえて、声が聞こえた部屋のドアをあけた。そこには、うずくまる彼のお母さんと思われる女性と、彼がいた。
そこが他人の家だとか、私はもうそんなのどうでもよかった。ただ、この状況をどうにかしないといけないと思った。
二階に、明希先輩がいる。私は勇気を出して二階への階段を駆け上がった。
拳で殴った後のあるドア、血痕。でも、私はその部屋をそっとのぞきこんだ。明希先輩は、そこにいた。
私が今までみたことのない、大粒の涙をこぼしながら、声を抑えてなく、先輩が。
「あきせんぱい……」
のどが、ひっついてうまくはなせない。熱くせり上がってくるものが、私を自然に動かした。
「桜ちゃん……?どうして……」
先輩が愛しくてたまらなかった。私は、先輩の大きな背中に腕を回した。
「どうしたんですか、先輩。なんで、そんなにないてるんですか、手、痛くないですか」
先輩は、首を横に振った。
ただ、私に頭を押し付けてこういっただけだった。
「結局、俺は変われなかった」
関西弁じゃないことになれてしまったイントネーションで。




