どうして
「ただいま」
僕は、玄関の扉を開けて、階段をあがると、ぎょっとした。
お兄ちゃんの部屋のドアは突き破られていて、ところどころ血痕がついていた。
「お兄ちゃん?」
「奏……」
お兄ちゃんは、部屋の隅に丸まったままこちらをみた。
「俺は、人を大事にできない人間なんだ、そうだろ、奏?」
血走った目で僕を凝視する目から目線をはずせないまま僕はただうろたえるばかりだった。
「そうだっていえよ。 そう思ってんだろ、どうなんだよ」
混乱する頭で必死に考えた。そういえば、お母さん、お母さんは?僕は逃げるように階段を下りた。リビングにつながる扉をあけると、お母さんは縮こまってふるえていた。
「お母……」
僕がおかあさんに歩み寄ろうとしたとき、お母さんがどなった。
「やめて! こないで!」
お母さんがおびえた目で僕をみた。立ちすくんだまま、僕は動けなかった。
どうしたらいい。どうしたらいいんだ。頭が真っ白になってなにもわからなかった。上からお兄ちゃんが壁を殴っている音が聞こえる。そのたびにお母さんは悲鳴をあげた。
どうしてこんなことになってしまったんだろう?僕たちは家族なのに。なにも悪いことなんてしていないのに。
いつの間にか涙があふれ出ていた。視界が曇って、頭がジンジンする。
突然、声が聞こえた。
「奏音くん」
「桜……? どうして」
そこには、桜がいた。




