伝わる思い
あたしが家に帰ってメールを確認すると、浦川くんからはあのメール以来なにもきていなかった。二三通のダイレクトメールを見向きもせずに消去して、ギターでもひこうとケースに手をかけたとき、着信音が鳴った。
ロック画面にうつったのは、浦川祐介の文字。心が躍る。
「もしもし!」
〈もしもし……。浦川です。かれんさんの携帯ですよね?〉
「はい!そうです」
〈今日は、残念でしたね〉
あたしは言葉に詰まった。あたしは何を浮かれているんだろう。彼は友達のことを思いやっているのに。
「うん……」
電話の向こうで、自転車を止める音がした。
〈僕は、もうこれ以上明希にしてやれることがわかりません。明希は、桜ちゃんと弟がつきあっていることを知ってて、でも好きなんですよ、桜ちゃんのことが〉
「うん……」
〈どうしたらいいんだろう、僕らがいってどうにかなるものでもないんでしょうけど〉
それは違うと思った。少なくとも浦川くんの言葉は、明希に届いてほしいと願った。
「それは……違うと思う。あたしは、浦川くんと明希がなにをはなしたか知らないけど、伝わってると思う。浦川くんが明希を思ってるってことが」
あたしが言うと、浦川くんは黙ってしまった。代わりに、かすかな息づかいが聞こえた。
泣いてる……?
「浦川くん?ごめん、なんかへんなこといった?」
〈いえ、違うんです、嬉しくて〉
いつも穏やかな浦川くんの声が乱れて、あたしはきゅっとなった。
〈自信が……なかったんです。僕は自分の自己満足でこんなことしてるんじゃないかって。かれんさんはいつも明希とか桜ちゃんのために行動してたのに、僕はどうなんだって。結局自分の為じゃないかって〉
そんなことない。だって、あたしは、浦川くんと会うのが楽しいっていうこともあったから。
「あたし、そんな立派じゃないよ」
〈僕は途中から、かれんさんに会うのが楽しみになってました〉
あたしはびっくりして顔が赤くなった感じがした。
「あ、あたしも……」
〈また、次は作戦とかじゃなくて、あいませんか?〉
「うん……」
あたしは誰もみていないのに赤くなった顔を隠すようにしてうなずいたまま、電話を切った。




