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さくらの季節   作者: 木内杏子
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悪口と私の心

おひさしぶりです。

 「なんか、後輩の勇姿をみたいだとかなんとかぶつぶつ言ってましたよ。じゃあ、また明日! さようなら」


 いつのまにか奏音くんの家の前についていて、わたしがさようならという前に彼は家に入ってしまった。


 先輩が体育祭に来る。来て欲しくないような、でもこないとがっかりしそうな、そんな気持ち。本当に私はどうなりたいんだろう、どうしたいんだろう。



 翌日から授業でも体育祭の練習三昧になり、日焼け止めはまたたくまになくなっていった。お茶は2リットル、スポーツドリンクを少し。それが最低限の装備。今年から運動部が遠慮してくれて、放課後、グラウンドでマーチングの練習ができるようになった。それはいいことなのだが、それに比例するように疲れは増していった。



 そして、一年生の中でも体調不良を訴える人や突然来なくなってしまう子がいたりして部内でもごちゃごちゃとして来てしまった。住川先生は、毎日のように部内反省会を開いて、一年生に叱ったりしたが、一向に改善されないままだった。


「うち、きつい部活に入ろうと思って入部したわけじゃないのよね」

「それな」


「マーチングの時さ、いっつもミスするやつがいるんだけど、ほんとむかつく。いい加減コンテ覚えなさいよ、バカなのかしら」



……いつもミスしてるのはお前だよ。私は心の中でその一年生をにらみつけた。


「あとさあ、神谷先輩、うざいよね。みんなマーチングやりたくてやってるわけじゃないんだし。なにがきれいな演技しましょうだよ。ほんっとにあんなタイプの人間嫌だ。先生にこびへつらってさ」

「やめなよ、誰か聞いてるよ……」


 ショックだ。一年生にこんな風に思われていたなんて。マーチングリーダーに任命された時点で、誰かしら私を嫌う人が出てくることは、私は分かっていた。部長なんて、同級生にも陰口をたたかれていたし、普段仲がよさそうなパートでも必ず闇がある。でも、いざ自分の悪口を聞いてしまうとやっぱきついな……。



 そんな気持ちを抱えたまま、また下校時間になった。

 私がいつものように校門を出ると、奏音くんが、自転車で近付いてきた。


「あれ、今日は自転車なんだね。急いでるの?」

私が聞くと、奏音くんはさわやかに笑った。

「いいえ、別に」


 私たちは歩き出した。奏音くんは自転車に乗ろうとせずに私に合わせて歩いてくれた。しばらく沈黙が続いた後、奏音くんが珍しく質問してきた。

「桜先輩は、親のことどう思ってますか」

「お母さんとか?うーん、改めて考えると難しいね。私たちのためにお弁当を作ってくれるし、落ち込んだ時はなぐさめてくれる。感謝しないといけないよね」


 私がそういうと、奏音くんは少し考え込むように、うつむいた。

「まあ、いいか」


 独り言のように、彼はつぶやいて、また私に笑顔を見せた。


「桜先輩、後ろに乗ってください」


「へ?!」


「いいから」


そう促されて、私は荷台に横座りした。


「どうして? えっ、ちょっと、家と逆方向だよ?」


そんな私の言葉を無視して、自転車は走り出した。



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