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さくらの季節   作者: 木内杏子
32/61

揺れる夏の終わり

◆◆◆


「じゃあ、お兄ちゃんと沙耶先輩はバレンタインぐらいに付き合い始めたんですね〜」


いけない、私。ついつい喋りすぎちゃって浦川先輩の話までしてしまった。ほんとに奏音くんって聞き上手だよね〜。


「っていうか、お兄ちゃん最悪じゃないですか。浦川先輩が言う前に桜先輩にネタバレしちゃってるし」


「いやー……。まあ、あの時突然浦川先輩に告白されてたら、私完全に逃げてたと思うな」

「そうなんですか?」

「うん。告白されたのなんて、あれが初めてだったしね」


奏音くんはふーん……とつぶやいてそれっきり黙ってしまった。



まともな会話もせず、四日間にわけてこの話をした私は、また沈黙がたえられなくなってしまった。

「か、奏音は恋したことありますか?」

「……」


え、この質問ダメ?


「そ、そうですね。今してるという感じですかね」


今?今してるの?誰に、部活はなに部の人だろうか、どんな子だろう。今までそんなそぶり……。いや、私が話してばっかりで気づかなかっただけかもしれない。


「あ、そうなんだ。叶うといいね」

「そうですね」


そうは言ったけど、奏音くんの好きな子が気になってそわそわしてしまう。


私は家に帰ってからもしばらくそのことを考えていた。別に奏音くんが誰かと付き合おうが私には、関係ないとまでは言ったら違う気がするけど、祝福するべきだとは思う。別に、気にするほどのことでもないのだ。でも__。


もやもやする。私は、私は……誰が好きだっけ。明希先輩に振られる前ならきっと私は、「明希先輩が好きだ」と素直に思えたはずだ。クラスメイト?塾の男子?違うな。好きな人がいないってことを、初恋をする前まではどうも思わなかったのに、急に意識をしだす。


好きな人がいないことは変なことじゃないのに。その人が笑うだけで、嬉しい気持ちを知ってしまったら、また恋をしたくなった。もう明希先輩を好きかって聞かれると、はっきりと、「そうだ」なんていえない。でも、好きな人は誰がと聞かれたら、私は口ごもってしまうだろう。……つまり、明希先輩とはもう答えない。



また、恋がしたい。

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