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さくらの季節   作者: 木内杏子
30/61

デート 前半

 私は、今、ある先輩に呼ばれてとあるカフェにいた。

 店内には、春休みということもあって中高生や大学生でいっぱいだった。女子会をしているグループもいれば、一人で黙々と勉強をしている人もいる。しかし、圧倒的に多いのがカップル。どのカップルも楽しそうに過ごしている。店内にはおしゃれなジャズ風の曲が流れ、店員たちはおいしそうなスイーツを運んでいた。

 そう、ここはデートスポットなのである。



「まった?」


 そう言って急ぎ足で私の方にかけてくるのは、明希先輩__ではなくて、浦川先輩だ。

「そんなに待ってませんよ」

本当は早く来すぎて水ばっかり飲んでいたけど、一応嘘をつく。

「そっか、よかった。何食べる?」


 なぜ、私が体験入部でしか話したことのなかった浦川先輩と、こんなおしゃれなカフェで待ち合わせているかと言うと、すべては明希先輩の計画だった。明希先輩と浦川先輩は小学生からの親友で、恋愛相談に乗っていたところ、たまたま浦川先輩の好きな人が、明希先輩の後輩である私だったので協力することになったらしい。でもいきなりデートは早すぎないか。



「いちごのパフェ、おいしそうですね」


「じゃあ、神谷さんはそれでいい? 僕はリンゴのアイスにするよ」


 ベルをならして注文をした浦川先輩は、何も言うことなく、ニコニコしている。


私は何も話さないのが苦痛になって、口を開いた。


「あの、何か話しませんか……」

「あ、ごめんなさい。うーん、とりあえず名前から。浦川祐介です」


「はい、神谷桜です」


「桜ちゃんって呼んでいいかな」


「あっ……はい」


「……」


 だめだ、会話がまったく続かない。しばらくして、パフェとアイスが運ばれてきた。

「わあ、おいしそう」


 私たちはほぼ会話することなく黙々とそれぞれ頼んだものを完食し、レジに向かった。

 銀縁メガネをかけて、さらさらの少し茶色が入っている髪をもち、色白の先輩をみて、私は先輩に女子力で負けているような気がしていたし、不釣り合いのような気さえした。この人は、なんで私なんかが好きなんだろう。一回しか見たことないのに。


「1512円になります」


 意外と高かったな。私はそう思いながら、三角巾でつられた左手と、普通に使える右手を駆使してお財布を開けた。

「えーと、756円……」


「いいよ、神谷さん。ここは僕に払わせて」

まじか。私は申し訳ないので、割り勘にしようとした。


「でも、申し訳ないから。ちょうどあるんで」


「僕のわがままで来てるんだから。それくらい払わせて。好きな子にはおごりたいし」


 「好きな子」と言われて、私がぽーっとした隙に、先輩はちゃっちゃっとお金を払い、私は何回もお礼を言ってお店をあとにした。先輩がそんな大胆な発言をすると思っていなかった私は、それから浦川先輩と目が合うたび、顔が火照っているのを感じた。


「桜ちゃんはどんな映画が好きなの? 泣ける系?コメデイー系?」


「うーん。あんまりジャンルは気にしませんね。観たいなって思ったやつを見に行く感じなので」

「そうなんだ。じゃあ、映画はいいか。どっか公園で話そ」


 私たちは桜の下にあるベンチに腰掛けた。


「明希からどれくらい聞いてる?」


 どれくらいと聞かれてもね……。明希という単語にドキっとしてしまう私はもそもそとこう言った。

「うん……あ、いや、その。浦川先輩が私を好いてくださっている、と言うところまで」


そういうと、先輩は難しい顔をした。なんか悪いこと言っちゃったのかな。

「好きってことぐらい、自分で伝えたかったな……」


 ポツリと先輩がつぶやいた。浦川先輩が明希先輩に頼んで言ってもらったと思っていた。


「あの、返事はまた、僕をもっと知ってもらってからでいいので」

「はい」


「……好きです。君を彼女にしたい」


 耳たぶまで赤くなっている浦川先輩をみて、こっちもドキドキしてきた。先輩はまっすぐ私を見てくれているのに、私は視線を返せないままうつむいていた。告白を受けるのって、こんなにもドキドキして、切ないんだ。息を整えて、先輩をやっと見つめ返した。


「考えさせてください」


  その答えに、先輩はほっとした様子だった。


「いきなり振られたらどうしようかと思った」

 ゆっくりとはにかむ先輩を見て、私の心は少し揺れていた。私が好きなのは明希先輩なのに、どうして直ぐ振らなかったんだろう。でも浦川先輩といても、少しドキドキする。この気持ちは何なんだろう。



 告白なんてされたことないので、気持ちは全部想像です。ご了承ください。

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