運命を変えるマーチング(2)
軽快なパーカッションのリズムで『宝島』が始まった。そして、リズムの切れ目で、一斉に全員の足が上がる。サックスのメロディがはじまり、Aメロがはじまると同時に列が動き出す。グラウンドを楽器の音が侵食していく。私たちはトランペットと一緒にサックスの合いの手を入れながら、複雑に動いていく。サックスのメロデイーが続いた後、トランペットに主旋律が変わり、トロンボーンの前にいる彼らが目立つように、後ろに下がっていく。また木管楽器がターラララッタラと吹き始めると次はいよいよ、サックスのソロ。ソロと合いの手を入れる楽器が中央に残され、他は方向転換をしていったん楽器を下した。、真ん中に私たちトロンボーンとトランペット、サックスだけが残される。先輩がソロを吹き切ると、またパーカッション。真ん中からサックスだけが前を通って横にはけると、次はトランペットとトロンボーンがサックスのいた場所を埋めるように合流した。金管独特の誇り高いメロデイーの間、ほかの楽器たちは後ろで隊列を組む。その四角い隊形に二つの楽器が合流し、いよいよ曲のクライマックスへ。一列ずつ横にスライドしていき、そのあとに次の列が……。波型に隊列が変わる。最後は、ポイントいっぱいに広がって、ベルを高らかにあげて、演奏が終わる。
たった3分間の演技だった。でも、グラウンドの人々は一気にマーチングに引き込まれたようだった。
数秒間、静寂に包まれたグラウンドに、やがて拍手が盛大に起こった。
私はほっとして、隣にいる芳佳ちゃんに笑いかけた。芳佳ちゃんも安心した様子でうなずいた。
私はグラウンドを後にしながら、夏海のほうをみた。夏海が笑っていた。手をずっと叩いている。
それだけでもう十分で、少しでも夏海の力になれたかな、と思っていたのだが。
部活パレードを終え、クラスの座席に帰ると、夏海が声をかけてきた
「お疲れさま!」
「ありがと」
「あのね、桜」
笑っていた夏海が、急に真顔になり、私は一瞬不安になった。
「私にも、マーチング、できるかな」
その言葉を聞いて、私は大きくうなずいた。
「もっちろん!」
こうして、夏海は陸上をあきらめる代わりに、その年の11月、足の状態が落ち着くのを待って、吹奏楽部に入部した。
◆ ◆ ◆
「なんか夏海先輩の名前出てこないからおかしいと思ってたんですよ。途中から入ってきてたんですね」
奏音君がなるほど、と頷いた。
「あれ? 言ってなかったっけ」
夏の夜は蒸し暑い。
「あ、このマーチングがすごい好評で、もっと尺がもらえるようになったんだよ。だから今年は10分くらいできる。曲も二曲だしね」
私は、奏音くんと別れて1人で歩き出した。
夏休みはまだ始まったばかりだ。
ああああ、めっちゃ短い……。最近忙しくてですね、、言い訳ですね……。もうちょっと頑張ります。普通だったらもうちょっとマーチングって長いのです。描写が難しくて途中で放棄してしまいました。マーチングファンの方、申し訳ありません。




