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鬼喰い  作者: 勝又健太
第四章 寄り添うものたち
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第四章(3)

「"歯"じゃと?」


 天一郎は眉をひそめた。骨片や肉片の一つさえも見当たらなかったはずの大量失踪の現場に、"歯"とはいったい?


「……そういえば、なにやら小さな白いものが転がっておったような気がするが……」


「それが"歯"よ。調べなかったの? 丁度失踪した人数分あるんじゃないかっていうぐらい、前歯から奥歯まで全部、血だまりの中にたくさん落ちてたわ」


「……ふむ」


 天一郎は顎をつまんで思案顔になった。自らが分村に立ち寄った際は、主に"殺害に使われた凶器"を調べることに気を取られていたため、目に入りながらもつい後回しにしてしまっていたが、家々の布団の上、路上の血だまり、あらゆるところに"小さな白いもの"は確かに大量に転がっていた。


「どう思う? 死体はひとつも見当たらないのに、血と歯だけは残されていた。なぜかしら?」


「分からんな。やぶの歯医者が村中を回って、村民の歯を片っ端から引っこ抜いたか……」


「……真面目に考えて」


 少女は冷たい視線で天一郎を睨んだ。この男の冗談好きは嫌というほどよく知っているが、デリカシーのかけらもない、悪趣味で下品なこの男のジョークに付き合うのは御免被りたいというところであろうか。


「わしはいつだって真面目じゃ。他に考えられるとすると、歯ぎしり癖が治らなかったか、あるいは肉と骨だけを溶かす殺人アメーバか……」


「もういいわ。たまに鋭い見立てをするから、多少は当てにしてたのに」


 少女はうんざり顔で言った。天一郎の推理好きもよく知っていると見え、自分とは異なる視点の見立てを期待していたようであるが、その思惑は見事に裏切られたようである。


「自分から聞いといてなんじゃい。失礼なやつじゃ。直観を大切にせねばいかんぞ」


 せっかくの自分の推理 ーー というよりも単なる思いつき ーー を否定され、天一郎は不機嫌そうに言った。


「はいはい。で、あんたが戦ってる敵の正体は分かったの? 相手が"いと近きもの"という可能性はある?」


 少女は天一郎の不平を軽く受け流した上で、不思議なことを言った。


 "いと近きもの"?


「ふん、やはりそれがお目当てか。"いと近きもの"かどうかは知らんが、敵の能力はおおよそ分かったぞ」


「すごいじゃない! で、どんな能力なの? 教えなさいよ」


 先ほどまでのうんざり顔はどこへやら、少女は興味津々という表情になった。


 女性らしい変わり身の早さと、自分の関心ある話しか聞こうとしない身勝手さに今度は天一郎がうんざり顔になったが、この少女のこういった性格はよく把握しているのか、あるいは怒る元気も出ないのか、げんなりしながらも、天一郎は敵の正体に関する自分の考えを述べ始めた。


「……相手が"誰"なのか"何"なのかはまだ分からん。はっきりしていることはただ一つじゃ」


 天一郎はもったいぶるように一旦言葉を切り、早く答えを聞きたがっている少女をじらすようにしてから続けた。


「間違いない。敵は"しびとの魂"に寄り添っておる」

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