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鬼喰い  作者: 勝又健太
第二章 本村"日守村"
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第二章(2)

「分村のちょうど北の方角に、陸上自衛隊の駐屯地があったの。"大異変"のときにほとんど何もかも地割れに飲み込まれてしまったけど、隊員の人たちは何人か生き残って、その人たちが中心になってこの村を作ったのよ」


「そういうことか。なるほどそれで"日守村"というわけじゃな」


「そうね。"大異変"で何もかも失って、そのあと一から村を作っていくときに、"自分たちが日本を守っていく"という誓いの気持ちを込めて、"日守村"っていう名前をつけたのよ」


「なるほどな。国家や政府という体制が失われても、国を守るという誇りは失わんかったということか。うむ、あっぱれな男たちじゃ」


「"男たち"ってなによ?自衛隊には女性だってたくさんいたでしょ」


「ふん、闘うのは男の仕事じゃ。女には女にしか出来んことがあるのじゃから、わざわざ男の職分に出しゃばる必要はあるまい」


 古い風習をいまだに引きずる、ふんぞり返った骨董品のような物の考え方をするこの男であったが、女が男を選ぶ基準が「食糧と安全を確保できるかどうか」へと一気に変化し、腕力や暴力の価値が"大異変"前とは比較にならないほど大きくなったこの時代においては、その思想は決して間違っているとは言えなかった。


「今の時代に生まれて良かったわね。"大異変"前だったら、あなたみたいな男尊女卑の差別主義者、どこの会社でも雇ってもらえないわよきっと」


「かもしれんな。人は生まれてくる時代を選べんが、時代はわしを選んだということじゃ。ほっほっほ」


「楽しく生きてらっしゃるようで良かったわね。あなたと話してるとほんと頭が痛くなるわ……」


「お姉ちゃん大丈夫?"だんそんじょひ"ってなあに?」


 すばるがニコニコと無邪気な顔で聞いた。


「常に厳しい鍛錬の世界に身を置き、ひとたび事あればその身を捨てて女や弱き者を守ってやる男のことじゃ。つまり、わしのことじゃな。ほっほっほ」


「すばる!意味はあとで教えてあげるから。とにかく、こんな人になっちゃ駄目よ」


「なんで?おにいちゃんすげえ強いし、かっこいい刀持ってるし。おいらも強くなりたいもん!」


「うむ。子供は強くて逞しいものに憧れる。正しい反応じゃ」


「だね!」


「……もういいわ。あとで男同士で勝手にやってちょうだい。とりあえず、役場に着いたわよ」


 村の様々な機能を集約しているだけあって、役場は他の家屋と比較するとかなり大きかった。

 地震を警戒して平屋建てなのは同様であったが、主にプレハブ建材を使用して造られた建物は様々な箇所に念入りな補強が施されており、村の中で非常に重要な役割を担っていることは一目瞭然であった。

 おそらくこの役場の建造にも自衛隊員たちの技術が生かされているのであろうが、そう思って見てみると、あたかも前線基地のような、簡素ではあるが頼もしい雰囲気を持つ建物であった。


「うむ、着いたか。案内ご苦労じゃったな。おまえたちはどうするのじゃ?」


「一緒に行くわよ。そもそもわたし達が付き添わなかったら保安官にも面接官にも会えないもの。東の門で言われたでしょ?」


「そうじゃったな。よそ者は常に見張り付きか。難儀なことじゃな」


「見張り付きだからここまで普通に来られたのよ。みんなよそ者にはすごい敏感なんだから。知らない顔の人間が一人で村を歩いてたら、すぐに周りのみんなに取り押さえられてボコボコにされるわよ」


「ふむ。それはそれで面白そうじゃの」


「面白くないわよ!この暴力人間。あなたを村に入れたわたし達の責任になるんだから、問題を起こしたら承知しないわよ」


「分かっておる。お前らの立場を危うくするようなことはせんから安心せい。入口はここで良いのか?」


「そうよ。まずは保安室に行って、分村の事件の説明をしてもらうわ」


「いや、その必要はない。村長が直接お会いになるそうだ」


 天一郎たちの会話が聞こえてきたのか、入口の内側で待っていたと思われる男がひょっこりと顔を出し、3人の会話に割って入った。

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