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番外編6:王妃は遠征に行きたいんです! 1

季節について追記しました。現在、結婚後の秋になります。

「え!?」


 結婚してもう四か月は経つ、夏のことだった。

 私が行くと言ったら、全員がそう言って驚いた顔をする。

 なんでだろう?

 だってルアインへ遠征するんでしょう? じゃあ魔術師も行くよね?

 

 ルアイン国王は、春のうちはのらりくらりとかわしていた戦後補償についての話し合いに、全く応じなくなった。

 夏になってから、全く音沙汰がないらしい。それに絡んでの出来事だった。


 当初からそうなるだろうという話は出ていた。

 そもそも戦後補償費が膨大すぎる。

 とてもルアインが払えるとは思えないけれど、慣例のままだと要求し続けることになっただろう。


 でもさすがレジーだ。

 無理難題だけを押し付けては、きっとルアイン国王が暴発して、何をするかわからないと逃げ道を用意した。


 戦後補償費を出せないのなら、こちらが推す人間を王位につけて、国王ならびに王族は下野するようにという交換条件を飲むことだ。

 そうすれば戦後補償費を減らしてあげる、と付け加えた。

 

 人によってはその要求も、けっこう鬼のようなものらしいけれど。

 やっぱり下野した後の生活が心配だからかな?


 なんにせよルアイン国王は王位から降りることをよしとせず、戦後補償も払いたくないと交渉を断ってしまった。

 そしてエイルレーン、サレハルドともども、三方向からルアインをぎりぎり締め上げに行くことになったのだ。


 まぁ、これも予想できたことではある。

 だからレジーは、ちゃんと行軍の準備とかをさせていたわけだけど。

 当然私も行くと言ったら、えって言われたわけで。


「だって、魔術師必要よね? ささっと戦いを終わらせた方が、後始末も早いしいいんじゃないの?」


「いや……本気かい?」


 レジーまでそんな聞き方をするので、私は内心で首をかしげながらうなずいた。

 一体何がそんなに問題なんだろう。

 抱えている師匠は「ウッシシシシ」と笑うだけだ。


「そうか……本当は……だけど、約束したからね」


 レジーはぶつぶつつぶやいた末に、了承してくれた。


「わかった、連れて行くよ」


 約束をもらえたので、私はその場から立ち去ろうとした。

 旅をするとなれば準備がいるので、さっさと済ませてしまおうと思ったから。

 でも扉を閉じようとしたところで、変な会話が聞こえてくる。


「どうするんですか、あれ……」


 扉を締め切らないようにして、中をのぞく。

 珍しく不安げな表情で言うカインさんに、レジーも困り切った表情をしていた。


「連れて行きたくないんだよ……私だって」


 苦悩の証に、眉間に皺が現れている。


「でも本人が、現状はなんでもないと言う以上は、どうしようもないだろうし。あの調子だと、置いて行ったら何をするかわからないだろう?」


「……処置なしですね」


 そこへ心配そうにアランが言う。


「うちの母上に連絡しておくよ。それで万が一の時にはどうにかなるんじゃないか?」


「頼む……アラン」


 え、まさか途中退場させる相談? とんでもない!

 私はこっそり置いて行かれてはなるものかと、その日のうちに荷物を全部整えた。

 一年前の行軍と同じ荷物で十分だし。それで足りないようなら同時進行で準備を整えてくれているメイベルさん達がなんとかしてくれるだろう。


 ……でも後から考えてみれば、茨姫にでもレジー達が言ったことを伝えて、相談すればよかったんだと思う。

 でも茨姫もレジーに同調して、私を止めようとしてたの。


「キアラ、やっぱり今回は休んだら?」と言って。


 ハニワな茨姫に慣れ切った女官さん達も、一斉にうなずいた。


「ご結婚して間もないのですし……」

「やはり王妃様だけでも、お城にいらっしゃった方が、何かと良いと思いますの」


 確かに、国王も王妃もいないなんて、不安かもしれない。

 けれど運営のお手伝いは、心強い助っ人もいる。


「エイブリー様がいるもの。大丈夫よ。信頼できる方なのはよくわかっているし」


 カッシアの運営を見込んで、レジーは彼を宰相職に迎えた。以前の宰相は亡くなっているし、そもそも王妃の仲間だったから。


「それでも、もし何かあったら逃げてね。奪還するために私がんばるから」


 安心させようと思って言ったのだけど、そういうことじゃない、というため息をつかれてしまった。

 けど、私には何がなにやら? の状態だったことは言い添えておきたい。


 そうして遠征へ出発した。

 季節は秋。少し涼しくなってきたので、旅もそう辛くはない。

 王都から連れて行くのは二千の兵だ。

 そこそこの人数がいるけど、後で前回の戦で被害が少なかった領地から拠出させた騎兵と合流する予定だ。


 各地で貴族もしくはその代理を将とした兵を吸収しながら、ルアインへ向かう。

 最終的にエヴラールで合流するという形で、各自行動にしたのは、食事や様々な物資の準備が膨大になるからだ。


 また、王都を出発するのは騎兵が半数以上を占めるので、移動も早い。

 真っ直ぐ東へ移動し、あっという間にラクシア湖を渡る船の上へ。

 追い風に乗って数日進めば、デルフィオンに到着だ。

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