一匹の家族
短いです
「使え」
私はアレンさんから氷の入った袋を受け取り言われた通り足首に当てる。
今だに足首の痛みは引かないけど骨は折れてないと言われた。
「こんなにズキズキするのに」
「ただの捻挫だ。騒ぐ程じゃ無い」
どうやら私が大袈裟に痛がっていただけの様で捻挫というのがどんな怪我かはよく分からないけど骨折程ひどい怪我じゃないらしい。
アレンさん曰く二、三日足を動かさず冷やし続ければ腫れ痛みもも引くそうだ。
でも三日もジッとしてるのはなかなか辛いかもなぁ。
私は改めて室内を見渡す。
内装は殺風景の一言に尽きた。
家具がほどんど無い。
あるのは私が座っている椅子と同じものがもう一つ。
それと1m四方程の大きさの丸テーブル。
他にはタンスとクローゼットくらいだ。
そんなに広い家では無いはずなのに見える壁の面積が大きいせいか妙に広く感じる。
それになんだか生活感が無い様な。
「ここに住んでいるんですか?」
聞き様によっては失礼な質問かもしれたいと言った後に気づいたけどアレンさんは特に気にした様子も無く答えてくれた。
「殺風景過ぎると言いたいんだろう?よく言われている」
「えっ?あっ!いや・・その・・・あはは・・・」
考えていたことをズバリ言い当てられて思わず苦笑い。
「もっと新しい家具を買い揃えてくれと度々ねだられるんだがしっくりくるものが無くてな」
・・・・・ねだられる?
アレンさんには同居している人がいるのかな?
でも椅子は一つしか無いし。
「アレンさんは誰かと一緒に暮らしてるんですか?」
「・・・あぁ、家族が一人。いや、一匹だな」
「? それってどういう」
そう言いかけた時だった。
ドアを叩く音が室内に響いく。
丁寧なノックの音ではなくてドンドンと大きな音を立てて。
それを聞いたアレンさんは溜息をつきながら扉を開けた。
「ガイウス・・・ノックはもっと静かにやれ。扉が壊れる」
「あー、ヘイヘイ了解了解。ってそんなことよりもアレン!ミント婦人とこの猫みっけてきたぞー」
そこにいたのは人間の言葉を喋る青い毛並みの犬だった。
・・・
何故犬が人間の言葉を話すことが出来るのかヒジョーに気になるけど一人と一匹がさも当たり前のように会話している姿を見てツッコム気もなくなった。
もしかしたら私が知らないだけで犬と言う動物は人の言葉を話す生き物なのかもしれない。
うん、きっとそうに違いない。
「は〜ん、アレンが女をね〜」
そういいガイウスと呼ばれた犬はニヤニヤした顔を私に向けた。
子犬の頃だったら可愛げがあっただろうけどこの犬の大きさは160cmを超えそうなぐらい大きい。
普通にしていれば凛々しい顔付きだろうにニヤニヤしたその顔はスケベ親父のそれと重なった様に見えた。
「アレンさん・・・」
「あぁ、こいつが俺の同居人のガイウスだ」
同居人。
・・・・・人?
どちらかと言うと同居犬じゃ・・・
「おうおう女ぁ!この家に住み着くのはアレンが認めたから口出ししねぇがこの俺を犬扱いすることだけは許さねぇからな!そこんとこだけ覚えてろよ」
「・・・いや、犬でしょ」
「ちょっ・・・おま!何ソッコーで口答えしてんだ!犬だと思って舐めてんじゃねーぞ!?」
なんだろう・・・
昔から犬は希少種だから写真を見た時には結構憧れたこともあったのに。
いざあってみると凄くめんどくさい。
「はっはー!俺様の剣幕にびびって声も出ないか!」
私はゆっくりアレンさんに目を向けた。
アレンさんはゆっくり顔を逸らした。
「それでミント婦人とこの猫はどうした?」
「いやー獣友情報網のおかげて見つけたは見つけたんだけどな?またベタなことに木の上で降りられなくなっててよー。俺じゃ木登りなんて出来ないし・・・」
「そうか、場所を教えてくれ」
「うーい」
そう言うとアレンさんはさっき脱いだばかりのコートを羽織った。
「お二人(?)は猫を探しているんですか?」
「仕事でな」
「えっ⁉︎」
アレンさんは猫を探すことか仕事なの⁉︎
なんかアレンさんのクールなイメージなはそぐわない。
「別に猫を探すだけが仕事なわけじゃない。俺は便利屋なんだ」
「俺達!な‼︎」
「便利屋さ・・・ですか?」
パン屋や帽子屋なんかだったらしっくりくるけど便利屋ってなんだろう?
「まぁ、簡単に言えばおつかいだな!俺達は依頼人がやりたくない事ややりたくても出来ない事を代わりにやってその見返りとして金をもらってるんだ」
そんな仕事もあるんだ・・・
地の文が安定しない