走り書き
まだ連載はしません。
頭の中で蠢いていた物を形にしないと現在連載中の拙作に支障が出そうだったので、冒頭とあらすじだけ置いておきます。
夏も終わりかけの、初秋の日。平日にも関わらず、高校生であるはずの私は車に揺られていた。
窓から見えるのは、まだ緑色の山と田畑。その間に民家がぽつぽつと点在している。開放的で、牧歌的。灰色だった学校とは大違いだと、私は自嘲気味に口元を歪ませた。
ここへ来るのは1年半ぶりだ。高校受験に合格したことを報告しに、祖父母に会いに来たのが一昨年の2月。随分と昔のことのように感じるが、数字にするとそうでもないことに驚く。
視界を流れていく風景は、記憶の中にあるものとさして変わらないのに、私自身は随分と変わってしまったような気がする。それがたまらなく苦しくて、私は視線を横の窓から隣の席へと移した。
ハンドルを握るのは、私の母方のおばあちゃんだ。まだ50代らしく、髪には何本か白が混じってはいるがその見た目は若々しい。服装もいわゆる"おばあちゃん"らしいものではなく、母の隣にいると姉妹に間違われるのも頷けた。なにより肌にハリがある。だいぶやつれた私より、ずっと生命力に溢れているのではないだろうか。
そう思いながらおばあちゃんを凝視していると、彼女はこちらにちらりと目を向けた。
「あら、どうしたの?お手洗い行きたくなっちゃった?」
「あっ…ううん、違うの、ごめんなさい。おばあちゃん、本当に綺麗だなって思って」
「もうこの子ったら、褒めても夕餉のおかずが増えるだけよ?」
照れてはいるが、否定しないあたり自覚はあるのだろう。そりゃ、あんなに溺愛されていればなぁ……とおじいちゃんの顔が浮かんでくる。
「おかず増えるの?嬉しい。おばあちゃんのご飯美味しいから」
「まっ、そんなに言うなら3品くらい増やしちゃうわ」
「おじいちゃんも喜ぶね」
言い合って、二人で笑う。
私はまだ人前でこんなふうに笑えたんだと安心する一方、普通に接してくれるおばあちゃんに心が痛んだ。私はまだ何も説明できていないのに、説明を求めない。急に数ヶ月間孫を一緒に住まわせてくれなんてお願い、理由を聞いたとしても快く承諾できるものではないだろう。1日2日のお泊まりとは訳が違う。
いつか、話さなければいけない。ただ、私がまだそこに向き合える段階ではないのは確かだった。
車は交差点を左に曲がり、目的地へと向かっていく。車内には、少し前に流行った曲が流れていた。




