邂逅
これが魔術学園の教員なのかと、ヘレナは失望していた。
遠くで教員2組のやり取りを見て笑っている生徒もいれば、杖を素振りして遊んでいる生徒もいる。
どいつもこいつも。これから始まる試験で魔術師としての今後が大きく変わるという時に何故こんなにも緊張感がないのだろうか。
煮えたぎる思いを押し込めるために、杖を握る手に力を込めた。
私は強くならなければいけない。絶対に。
そして強くなるためにはよりランクの高い魔術師にならなければならない。
ここにいる誰よりも。
そして改めて辺りを見渡す。相変わらず気の抜けた空気が漂っているが、その中に1人だけ異質な存在がいた。
この魔術学園に通い始めて1ヶ月と半ばは経つので顔ぐらいは知っているのだが。
いつも教室で孤立してる男子生徒だった。名前は……なんだっけ。申し訳ないが覚えていない。
というか、あれは何をしているのだろうか……?
その人物は、他の生徒が立ちながら試験の順番を待ってる中、床に膝を着けて、大理石のタイルにスケッチブックのようなものを置いて何かを書いていた。
あまりに異質で目を引く存在。こういうタイプは底抜けの天才か……あるいはただの馬鹿か、そのどちらかと相場が決まっている。
その人は私より、数人挟んで前にいたので、何を書いているのか、体勢を傾ければ覗くことができた。
どうせ暇つぶしの落書きでも描いているのだろう。
そんな軽い気持ちで覗いてしまった。
「……なに……あれ」
思わず鳥肌が立った。そして息を飲み込んでしまう。
スケッチブックには、明らかに素人とは思えないような魔術回路がびっしりと書かれていた。しかも私も知らないような魔術式や詠唱呪文まで。
私とて上位魔術師を志してる身、魔術を扱うための技術や学術は日々学んでいる。それも常人の倍以上に。
しかしそこに書かれていたのは、私の知らないまったく新しい魔術式。
ふと、そういえば彼が他の生徒から何て呼ばれていたか思い出した。
「落ちこぼれ学術師の子孫……」
この時期の生徒なら魔術式なんて理解できない、そもそもまだ習ってなどいない人もいるはずだから、確かに彼がどんな魔術式を書いてるかなんて見当もつかないのだろう。
しかし私には分かる。あれは、デタラメを書いてるわけではない。ちゃんとした法則に乗っ取った式だ。
そして、何故彼が落ちこぼれ学術師と呼ばれているのかも何となく察しが着いた。
それは彼の試験の結果を見て答え合わせをしよう。




