追憶
絶え間なく続く悲鳴が断末魔の叫びに変わる。
人間が焼かれ、家屋が炭に変わり、思い出が煙になる。
今はただ――生き残るために必死だった。
焦げた臭いが煙となって暗い夜空に吸い込まれる。
対極的に火の海に呑み込まれた村は、真昼のように明るかった。
――っげて!! ――逃げて!!
誰かがそう叫ぶ。
火の海は押し返す波のように私の背後に迫っていた。
熱を帯びた空気を吸い込みむせ返す。けれど立ち止まる訳にはいかなかった。
――なぜ、こんなことに。
――なぜ、私たちがこんな目に。
むせ返った反動で煙を吸い込んでしまい、徐々に意識が朦朧としてくる。
体が言うことを聞かなくなり、ついには足が絡まり地面に伏せるように倒れ込んでしまった。
「――ヘレナ!!」
倒れ込んだ私の元へ誰かが駆け寄り、そっと体を抱きしめた。
「大丈夫よヘレナ! さぁ早く――!」
こんな時でも母親の声を聞くと不思議と安心してしまう。いや、こんな時だからこそそう感じてしまうのか。
――急いで起き上がらないと。
――あれ、体が動かない。
あぁ、だめだ……。ごめんなさい……お母様……。
「アンリエッタ! ヘレナ!」
続いて男性の声が響いた。
「……お父……様……」
「待ってろ、今回復魔法をかけるからな……」
そういうと、男性は腰に差した杖を取り出し、短い言葉を詠唱する。直にヘレナの体を緑色の光が包み込み、体の痛みも朦朧とした意識さえも完治させたのだった。
しかし、時はすでに遅く。引くことを知らない火の海はゆっくりと、しかし確実にこちらに迫っていた。
「……ヘレナ。お前だけでも逃げなさい」
お父様の優しくそして厳格のある声が私の鼓膜を震わせた。
「ヘレナ、お願い……生きて……」
続いてお母様の切実な願い。
嫌だ……私は悟ってしまったのだ。ここで2人とはお別れなんだと。
「ヘレナ、覚えておいてくれ。下級魔導師の一族と笑われても、最後まで魔獣の猛手に立ち向かった。そんな勇敢な姿を」
嫌だ……嫌だ……嫌だ……嫌だ……嫌だ……嫌だ!!!
私に背を向けるように、2人は杖を構え、魔獣が作り出した火の海に立ち向かった。
しかし突如――火の中から燃え上がる巨大な手のようなものが這い出て2人を包み込み、そして握り潰した。
呆気もなかった。その火の手の中から上る煙が、私が見た両親の最後の姿だった。
「いや……そんな……いや……いやああああ!!!!」




