第9号 友達
ステップ16 背中
背番号71がひときわ大きくみえる。
この背中は、多くの人を導き光を与えてきた。
背中で引っ張り、笑顔で癒す。
七花のスタイルとも言えた。
小学生の中で、身長も飛び抜けていた。
登下校では必ず、「でか!大きい!スゴい!‥」は当たり前だった。
七花は、ひまりや葵の気持ちはよくわかっていた。
七花は小学校卒業時は、169cmで、さすがにこれ以上は伸びないだろうと思っていたら、中学卒業時は174cmになった。
高校卒業時は、178cmになった。
「もう、伸びなくていい‥」
ほとんどの男の子は自分より視界が下だ。
そんな七花だが、背が高いだけで、可愛さは際立っていた。
何もしなければモデルか?と思われるほどに。
「それは、子供の時だからだよ」と七花に聞いたら、そう言われた。
モデルみたいで、スポーツもできる。
人気がないわけがない。
「ん?友達といるくらいで、人気あるとかなかったよ?」と、七花に聞いたらそう言われた。
本人が自覚してないだけかもしれない。
「わ、わたしとも仲良くしてくれる?」勇気を出して聞いてみた。
わたしは、その時の七花ちゃんの笑顔が忘れられない。
「うん!いいよ!よろしくね!まこちゃん!」
この瞬間、朝日七花を、背中を追いかけていた伊藤まこは、友達として、親友として肩を並べて歩むことになった。
真司くん入団前
まこ「どした?」
七花「今少し話せる?」
まこ「うん、大丈夫だよ!」
七花「じゃあ、ビデオ通話に変えるね!」
まこ「七花、パジャマかわいい!」
七花「ありがと!26でかわいいでいいのかわからないけど」
まこ「な、七花はかわいいでいいの!」
七花「わかったよ、まこ、いい出したら止まらないからなぁ」
まこ「わかればよろしい。で、なんの話だい?」
七花「あっ、そうそう、入団試合やるんだけど、また、まこに手伝ってほしいんだ」
お互い、ベッドの上でゴロゴロして話している。
真司くんの説明をする七花。
まこ「へぇー、見たことあるんだ」
七花「うん、一回だけね!試合じゃなくて練習しているところだけど」
まこ「七花ってすごいよね!一回みただけで顔覚えちゃうの」
七花「そう?すごくはないと思うけど‥」
まこ「いやいや、すごいよ!わたしなんかおぼえてないよ!‥」
まこ「でも‥」
七花「うん」
まこ「高校で七花を初めて見た時は忘れなかったな」
七花「ストーカーまこの時か?」
まこ「す、ストーカーはひどいんじゃない?だって、七花、人気者だったし‥友達になれると思わなかったから‥」
七花「‥」
まこ「ちょっ、何ニヤニヤしてるのわよー!もう!」
七花「‥よかったね!まこちゃん!」
まこ「ななかー!」照れながら頬を膨らませて、ジタバタしているまこがスマホの画面にうつっていた。
急にしょんぼりするまこ。
まこ「でも、高校で野球やめるとは思わなかったよ」
七花「またその話かい?」
まこ「だって‥」
七花「過去は過去だよ!まこ!今のわたしをみてどう思う?格好悪い?」
まこは首を横に振っている。
まこ「すごくカッコいい」
七花「ありがと、まこ」
まこは思った。
七花の背中は、そばにいても優しくて力強くて、キラキラしてるんだ‥と。