第6号 朝日とのはじまり6
ステップ11 先生と夏
甲子園といえば夏、夏といえば、柊夏だ。
間多理団のオールラウンドプレイヤー。
どこでも普通にこなす。
キレイな長い髪をポニーテイルにしてプレイする男の子。
夏のオールラウンドは、彼の思考に依存している。
朝日の言うことをいち早く理解し、行動に移せるのだ。
また、他の人のプレイをコピーするのも早い。
それゆえに、多彩な活躍をする。
ただ‥
真司くん入団試合‥
小野ちゃんがやられて、柊夏に打順がくる。
どうするか考える夏。
自分の次は葵だ。
「スキをつくろうかな‥」
そう言ってバッターボックスに立つ。
高杉は思った‥(なんで5番に夏なんだ?)
高杉がそう思うのも訳がない。
夏は、バッティングが得意ではない。
ちゃんと言うと、まだ、体の成長が年齢に追いついてないのだ。
色々できるが、100%ではないのだ。
技はあるが力がないというほうが、わかりやすいだろうか。
高杉に簡単にツーストライクと追い込まれる。
(相変わらずだな、高杉くんは)
3球目を振り抜く夏。
キーン!
真後ろへのファールだ。
(軽い高杉くんの球で、こんな押されるなんて‥)
思わず、クスっと笑ってしまう。
それを見ていたモッチーは思った。
(喋らなければ女の子だな)
そんなモッチーを他所に、4球目が来る。
アウトコースだ。
振り抜く夏。
カーン!
また、真後ろへファールだ。
ヘルメットを被り直す夏。
(葵ちゃんがやってくれるだろうな‥)
バッターボックスに入る夏。
「夏くん、あれでパワーあったら大変ですね!」千香子が朝日そう話す。
「ちか、まだまだ甘いわね」そういいニコリとする朝日。
構える夏。
(ボクだってパワーがあれば‥と思ったこともあったよ)
5球目が来る。
右バッターの胸元。インハイの球だ。
夏はコンパクトに振り抜く。
コーン!
打球は真上に高く上がる。
パス!
キャッチャーフライだった。
ベンチに帰ってくる夏。
「ごくろうさま!」朝日が声をかける。
「先生、あれで高杉くん調子に乗りますかね?」と笑って話す夏。
朝日も笑う。
「葵にやられるかもね!」
夏のスイングは、力はないこそタイミングはあっていた。
高杉の球も軽いとはいえキレていたのもあるが、その球にバッチリと合わせるあたり、夏のセンスを感じる。
当たり前だが、パワーがなければ、野球ができないわけではない。
また、夏が、こういう駆け引きや心理戦が好きなのもあるが、朝日は人をよく見ているとしか言えないだろう。
なにより、夏の最大の武器は、両投げ両打でもある。
ちなみに、高杉くんの時に右打席に入ったのは、後の葵のためでもある。
ステップ12 先生とカルテット
間多理団にはマタリカルテットと呼ばれる4人がいる。
北川、東郷、南野、西崎の仲良し4人で構成されている。
彼ら4人は、どのポジションも一応できる。
他のチームでは、ベンチが定位置だった。
しかし、朝日に出会い、朝日と野球をすることにより、彼らは変わった。
同じベンチにいたとしても、今は‥なのだ。
朝日は、スターターを固定しない。
自分の目でみて判断し決めるのた。
上手い下手ではない。
そのため、彼らのモチベーションも高まる。
「先生はちゃんとみてくれている」
朝日は、選手全員でやらなければ団ではない‥と考えている。
選手たちも、そのことを理解している。
その中でも、マタリカルテットは、さらに『それ』を意識している。
全てのポジションができるのも、朝日から言われたことが軸となっている。
「ポジション?ん?今決めないといけないことはないよ!もし、今決めたら、これからの野球人生の視野が狭くなっちゃうよ?」
結果的に、マタリカルテットにとって、自分たちの居場所を見つけることになった。
真司くん入団試合ー
マタリカルテットも試合に当然でている。
北川、東郷は真司くんのいるBチームで、南野、西崎はAチームだ。
北川はレフト、東郷はサード。
南野はファースト、西崎はショートでプレイしている。
彼らは、朝日の練習試合が大好きだ。
自分たちがどんな試合に、どう出場できるのかと考えるとワクワクする。
真司くん入団試合の時、朝日に呼ばれた。
北川「先生がオレらを呼ぶってことはアレかな?」
南野「うーん、どうかな?ボクは何かお願いされそうな気が‥」
東郷「なんちゃんが言うならあり得るかもね」
西崎「マジか?きーも、なんも、とーもすごなぁ、僕は先生に何言われてもいいもん」
3人が、西崎をみる。
「な、なに?」西崎は驚く。
3人が西崎の肩に手を置く。
北川「にし」
南野「にしくん」
東郷「にっしー」
「え?え?」西崎はオロオロしだした。
北川「その通りだ!」
南野「その通りだね!」
東郷「その通り!」
3人の声が重なる。
西崎「せ、先生は、ホントみんなのこと見てるし、考えているよね‥」
頷く3人。
北川「じゃなきゃ、ここに今いなかったかもな‥」
チーム分けでマタリカルテットの4人は、2人ずつ分かれた。
彼らは決して天才でも、才能があるわけでもない。
普通の男の子たち。
ただ、野球を楽しむ気持ち、仲間を思う気持ちは、誰にも負けない、いや団の中でも突出していると言えるかもしれない。
そんな彼らにも、朝日は別としてアイドルというか、スターというか、憧れの選手がいる。
柊夏だ。
プレイスタイルはもちろんなのだが、彼らには女の子にしか見えないらしい。
どちらも彼らの話題になっているのだ。
そして、夏の野球に対する姿勢も大好きだ。
「今、楽しまないなんて、もったいなくない?」そう言った朝日の顔を、彼らは一生忘れないだろう。




