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第30号 七花帰還

ステップ37 七花帰還する



数ヶ月‥わずか?いや、まだ?いやいや、もう?いや違う‥


人によって感じ方は違うだろう。

ただ、待つ方としては長く感じるのは現実である。


七花がアメリカに行って数ヶ月。


その日が来た。


「ただいま日本」

七花が空港に着くなりそう言った。


「ホント久しぶりね」

と、ほのかが七花の横にきて言う。

「瑠璃子さんに電話しなさいよ!」


ほのかは、何気に瑠璃子がお気に入りだ。

「そうだね、喫茶店に行こうか」

「うん」ほのかは嬉しそうだ。


志津香さんの煎れたコーヒーを久々に飲み、瑠璃子とも合流し、話に花が咲く。


荷物を自宅に置き、ある程度落ち着いたら着替えて出かける七花。

ほのかも一緒だ。


青いハスラーをほのかが走らせる。

「もうこれでしばらくは大丈夫よね?」と、ほのかが七花に聞く。

視線は、しっかり前をみている。


ほのかは、運転中は脇見をしない。

なので、前を向いて話す一番安心なタイプだ。


「多分大丈夫だと思うよ。わたしとほのかがサポートしてあげたんだよ?これでダメとか言われたら困るよ」

「確かに!」

ほのかが笑う。


「まあ、我儘というか、向上心があるというか、貪欲というか‥すごいよね」七花がさらりと言う。


「あれは野球バカだね!」

「間違いない」

2人で笑いだす。


車はグラウンド専用の駐車場に止まる。

「ねぇ、わたしたちも野球バカじゃない?」とほのかがハンドルを握ったまま言った。

「そうだね!人のこと言えないね」

また、2人で笑う。



間多理団は、今日は練習はお休み。


「静かなものだね」七花がグラウンドをみながら言う。

「人ってすごいよねー」ほのかが応える。


「ん?うるさいってこと?」七花はほのかをみる。

ほのかも七花の目を見る。

「ちょっと、そんなこと言ってないでしょ?」


七花はほのかの言葉にニヤリとする。

「あー、やっぱり面倒くさいわー七花は‥」


頭を抱えるほのか。


「まあ、人の活気ってすごいよね」

七花が真面目な線路へ誘導しだす。


「あ、やっと人の話を聞く気になったわね」

ほのかは少し安心している。


「一つのことに向かってみんなで協力し助け合い励まし合い進む‥」

七花はグラウンドをみつめる。

ほのかが横にくる。

「そうね、色々な人がいるのに目標に向かって進んでるのよね」


しばらく沈黙が続く。



「七花」

「ん?」


「これからどうするの?」

ほのかは真剣な目で七花をみつめる。


「んー‥」

七花はそういい空をみる。


「そうだなぁ‥若いものに任せる?」

そういい七花はほのかをみて笑う。


「七花!」


2人の笑い声が誰もいないグラウンドを駆け抜ける。






まどかと会ったら大変だった。

お姉ちゃん、七花さんのローテーションで止まらなかった。


そんな中、七花は丘のとの練習試合のノートをみる。

「へぇー、6-0かぁ‥すごいね」

その言葉に、まどかの顔が輝き出す。


「みんながんばりましたよ!」

まどかは腰に手をやり、自慢してるかのようなポーズをとっている。


「七花はどう予想してたの?」ほのかが聞いてきた。

「んー、10点はとれるかな?って思ってたよ」


「10点⁈」まどかは驚く。

ニヤリとする七花。

「丘のの投手力は弱いんだよ。だから10点はいけるかな?って思っていたんだ」


「に、新崎くんが投げてもですか?」

まどかが切り込む。

「うん。うちの子たちなら問題ないはずだよ。」


「確かにヒットは出るんですが繋がらなくて‥」まどかは振り返る。


「そうだね‥打線は問題ないかな。守備はがんばったね。打ち合いなら完封はできてなかったかもしれないし」

七花は冷静に話す。


「へぇー、これはこれは‥」

ほのかが、試合のデーターをみて頷いている。


「まどか」ほのかがまどかを呼ぶ。

「はい!」少し驚きながら返事ををするまどか。


「この試合、ほとんど采配してないわね?」

「う、うん。あまりにもみんなが生き生きしてたから‥ダミー采配したり、後半少し采配した感じだよ」


「うーん‥悪くはない‥七花もやるし(ちらりと七花をみる)‥でも、少ないわね」

ほのかがノートを返しながらまどかにそう言った。


「少ない‥?」ノートを受け取りまどかは困惑している。


「七花が10点くらい‥って言ってた時のこと覚えてる?」

「もちろん、うちの選手ならって‥」


「そうね、間多理団なら大丈夫って‥(また七花をみるほのか)そう言うことなのよ」


まどかは考えている。

そんなまどかを七花は静かに見守る。


「あー、七花が何にも言わないから!」

「ん?わたしは言うことないよ?楽しんだみたいだしさ」


「もう、また、わたしが言うの?」

ほのかはため息をつく。


「ふふっ、ほのかの性格がでてるね!」七花が笑う。

「七花!」

「ごめんごめん、わかったよ」

そういい七花は話し始める。


「まどか、ほのかが気にしてるのは、トータルじゃなかったってことなんだよ」

「トータル‥」


「そう、チームは全員でチーム。スタメンになったから、上手いとか人より才があるとかではない‥うちのチームなら尚更ね!」


「わかります!あっ!選手全員を使ってない?あー、そうかー」まどかは頭を抱える。


「そうだね、まあ、それはそこまで重要じゃないかな、今回は。楽しめたみたいだし、まどかもサインだしたり采配してるし」

「でも、ダミーサインよ?」ほのかがツッコむ。


「それでもいいんだよ。選手が楽しめる環境をつくり与えてるからね」

「だとしても、勝ったからいいものの‥」ほのかは心配そうだ。


「うーん、勝つか‥試合ってさ、どちらが勝つ事目的にやってるでしょ?」

「そうね」

「はい!」

ほのかとまどかは頷く。


「わたしはね、この試合勝つぞ!とか勝ちに行くぞ!とかさ、必要ないと思ってるんだ。まどかはわかってると思うけど」

「はい!七花さんはいいませんもんね」


「うん、それ前提のゲームであって、負けるためにやらないでしょ?だから、わたしは言わない。その言葉に力がないわけではないし、力もあると思う。だけど、足かせにはなってほしくないんだよね」

七花は、ほのかのハスラーをやさしく触る。


「なるほどね、重荷になって、本来の力が出せなかったり、楽しめないなら本末転倒ってわけね」ほのかは納得する。


「うん。それは、言わなくても当たり前のことだし‥そうだなー、息をするようなものであってほしいかな」

「息をする‥」ほのかは何か思うところがあるようだ。


「無意識に息をしているのに、息をしろ!とか意識しろ!とは言わないでしょ?」

まどかの顔が崩れて声がでる。

(七花さん、わかりやすい例えだなー)


「それで、リズム崩したりしたら大変だわね」ほのかは冷静に返す。

「そうだね、それくらい、ごく当たり前で、自然なことなんだよね」


「それを、あえて大人がつつくわけですね!」まどかも意見を述べる。


「まあね。さっきも言ったけど、ダメではないけど、わたしは言わないし、みんなを信頼してるからね」


「七花さん‥カッコいいです」

そう言ってまどかはハスラーに寄りかかる。


(わ、わたしの車‥)ほのかはため息をつく。


「ということで、今回のまどかは、たいへんよくがんばりました!かな」

七花はそういい、まどかの頭にハンコを押すような仕草をした。


「あ、ありがとうございます」

まどかは嬉しそうだ。


「‥でもよ?やっぱり、まどかはまどかだったわね」

少し頬を膨らましているほのか。


それをみて七花は口を開く。

「まどか、今度はもっとみんなに頼ることだね」


(みんなを使えじゃないのね、七花、あんたって人は‥)

ほのかはやさしい目をしていた。




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