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第28号 好きだからこそ‥④

ステップ35 好きだからこそ‥④



6番 サード 大塚ひまり


後ろで一つに結んだ髪が風に靡く。

バッターボックスへ向かうひまり。


スイッチヒッターのひまりは、今回は左打席に入る。


ひまりは、一礼してはいる以外は、普通に打席に立つ。

ピッチャーが投げるまでは左肩にバットを乗せてリラックスしてるかのようなスタイルだ。


そんなスタイルだが、身長があるだけに威圧感がある。


ワンアウト、ランナー一塁。


ひまりが左打席。

千香子は、頭の中で処理していた。


ひまりの次は高杉だ。

(‥ん?そういうこと?)


千香子はひまりと目が合った瞬間、ヘルメットをさわる。

(ひまり!〇〇なの?)


ひまりは頷く。

丘のの守備は左より。

これは、千香子らの時の変わらない。

ツーアウトにしてまでランナーを二塁に送っても意味はない。

いや、なくはないが、ひまりはこの時は、それが最善の策とは思わなかった。




長打‥



これが、ひまりの選択した攻撃だ。

左打席なら、それの可能性が上がる。



千香子の足、自分の足を考えればのことである。


だが、丘ののバッテリーもやられっぱなしなわけではない。

小野ちゃん、千香子によってテンションも上がっている。


案の定、低めに集めた配球で攻めてきた。


そして、たった一球、本当にそれだけだった、高めインコースよりをひまりは振り抜いた!


高めの場合、ボールの上を叩いてしまえば、バウンドかゴロの可能性がある。

逆にボールの下を叩いてしまえば、フライの可能性がある。


どちらも、延長線上にはヒットという結果もあり得るが、大体が前者になる。



しかし、ひまりは左打席にいる。

右打席ではない。


(ホームラン、まして長打なら右打席のはず‥でも左‥ここで動いたということは‥)



「ただの長打ではないね」

まどかが呟く。

「まどかさん⁈」と葵が訪ねる。


まどかは、ひまりを見ていて視線を逸らさない。



ひまりは、高めインコースよりの球を見事なジャストミートで空に打ち上げた。



その瞬間、千香子はフライにもかかわらず走り出す。


打ったひまりもだ。


丘ののキャッチャーは打球をみて思った。

(おいおい、どこまで上がるんだよ)



ライトとファーストの間でラインから数mの辺りだろうか、打球はぐんぐん上昇する。


そして、限界がくると落下をはじめる。


「あの打球は‥」丘のの監督も頭をかかえる。


重力に導かれ加速する打球。


しかし、丘ののライトもセカンドもファーストも、それを取ることは出来なかった。


千香子は三塁を蹴る。

ひまりはもう二塁を過ぎ三塁に向かっている。


「あの子たち!‥」まどかはワクワクしていた。


左打者の打球の性質とひまりのミート力、そして、超特大のフライの落下スピード。


それは、落下しながらスライスしていく打球となり、丘のの選手からまるで逃げているようにも見えた。


もし、仮にキャッチされれば終わりだ。


追いかける選手たちだが取れない。

打球はバ大きくウンドして、数回のバウンドを繰り出しライトのファールラインを越え転がる。


千香子ホームイン、ひまりもホームインする。


ひまりはホームに両足でぴょん!っと乗り、両手をあげて喜んでいる。


「ひまり!っ」

まどかが抱きつく。

「まどかさん!やったよー!」


「よくあんな攻撃を‥」

「ん?先生とよくやってたからね!」


まどかかは思い出した。

守備練習もバッティング練習も兼ねてやっていたなぁーっと。


「それをここでやる?」

「んー、楽しくないですか?ヒットかアウトかわからないのって!」


千香子は聞いていて吹いてしまった。

「アウトでもいいから、走るなんてないものね」


スコアは0-5


初回から良過ぎる出だしだ。


しかし、丘のバッテリーもがんばる。


続く、7番 レフト高杉 かけるをファーストゴロにする。


8番 ピッチャー 佐々木真司をサードゴロとして、一回の裏を終えた。


2人がアウトになったものの、悪くないバッティングだった。


真司くんに抑えられる丘のの選手たちとは違い、間多理団の選手は、リズムに乗っていた。





二回の裏、間多理団の攻撃。


9番 ショート 柊 夏からだ。


オールラウンダー。

トレードマークの長い髪はバッサリ切っている。

理由は「みんな髪長いから‥」


夏は打席に入る前に考える。

(高杉くんのファーストゴロも真司くんのサードゴロも変なんだよな‥)


夏はバットを両足で挟み、ヘルメットを直して、確認してから、両手でバットのグリップを確かめながら打席に入る。

今回は右打席だ。


丘ののピッチャーは、2番手の左投げなのもある。


打席からグラウンドをみて理解した。

(なるほど、そういうことか)

夏は確信した。


内野は、やや前進守備。

外野も、定位置からやや前よりで、右打席の高杉に対しては、ライトは定位置、レフトはラインよりの守備だった。


左打席の真司くんに対しては、内野は同じで、ライトはラインより、レフトは定位置だった。


そして、夏は右打席。


内野は同じくやや前進守備。

外野もやや前進守備の布陣だ。


ヘルメットを整えながら打席で構える準備をする夏。

(なるほど、下位打線だからか‥)



「下位打線‥と丘の(むこう)が思っているなら夏くんにやられるわね」まどかがベンチで呟く。

千香子も葵もそれを聞いて頷く。


通常、打順は上位の方が上手いとか凄いとか思われるし、それが当たり前だ。


しかし、七花は違った。


123、456、789をどうみる?と聞かれた時、まどかは「打てる人から‥ 」と言った。


まどかの考えも間違いではない。


しかし、七花は違った。


「123番はね、考えて打てる人が適任なんだよ」

それを聞いてまどかは、「みんな考えて打ちますよね?」と、当たり前のことを言った。


七花は首を横に振る。

「何度も来る打席で、考えて対応できる人ってことなんだよ?」


まどかは納得した。


「456番はなんなんですか?」まどかは聞く。

「456番はね、流れを読める人たちかな」さらりと七花は言った。


「流れを読める‥」まどかは考える。

チラリとまどかをみる七花。


「あー、空気を読むとも言えるかな」

七花をみるまどか。


「何をすればいいか、わかるってことですか?」

七花がサムズアップしている。


「そう、自分の所にどう流れが来ているか、何が最善かを理解でき行動できるか‥かな」

そういう七花をみているまどか。


「あ!だから、小野ちゃんやちかちゃんなんですね!」

ニコリと返す七花。


「‥だとしたら、789番ってなんだろう‥」

まどかが考えている。

それを見つめる七花。


「‥」

「‥」


「ふふっ、悩むよね」

「悩みますよー‥」


「789番はね、全体を理解できるか‥だね」

「全体を理解できる‥考えて‥流れを‥全体を理解‥」

まどかはブツブツ言い出した。


「わたしはね、この789番が打順のカギだと思ってるんだ」

七花は空を見上げて嬉しそうに話す。


「下位打線?何が?って思うんだよね」

その言葉にまどかが七花の方をみる。


「打順はさ、ループしなきゃ意味ないんだよね」

七花は誇らしげに話す。


ごく当たり前のことを言ってるようにも聞こえる。

でも、そうではない別の意味があることくらい、まどかでもわかる。


「チームの状態、今、何をするのがいいのか?それは、自己犠牲を伴う時もある‥時には123番のように、時には456番のように‥ね!」




「自己犠牲‥」

七花との会話を思い出して呟くまどか。


高杉、真司くんの2人は、まさに自己犠牲をチョイスした。


ガンガン行って追加点を取れるだけ取る‥それもいいだろう。


しかし、それは今ではない。

みんな打席に立てば、ヒットをホームランを打ちたいだろう。


みんなが打っていれば、余計その思いは募る。


しかし、七花はちゃんとみて、理解しているし、くれる。

選手たちも、それを理解しているからこそのプレイとなる。


高杉と真司くんの2人のアウトは決して無駄ではない。


2人のお陰で、丘のの守備陣形に変化が現れる。


夏は、それに気付いた。


インコースの球を素直に打ち返す夏。

それは、前進守備のセンターとレフトの間を、頭を越えて、どんどん転がっていった。


「綺麗なフォームね」

まどかがそういうと、みな頷いていた。


夏は、一塁、二塁、三塁と周り、ホームまで帰って来る。


ランニングホームラン。


間多理団、1点追加の0-6



丘のの選手は勿論、監督も落ち着いていられなくなっていた。





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