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第27号 好きだからこそ‥③

ステップ34 好きだからこそ‥③



ワンアウト、ランナー二塁。

間多理団の攻撃は‥


5番 キャッチャー 関千香子。


七花の片腕として、かつては活躍していた千香子も、今や、りっぱな選手となった。


ここまで、数々の攻撃を繰り出してきた千香子。

この場面でどうするか?


千香子はまどかをみる。


まどかは、両手をグーにして上下で数回合わせた。


丘のの監督が気付く。

(ここで動いた?)


千香子はまどかのサインに頷く。

打席に向かう千香子。


一礼し、左打席に入る。

ホームベース外側の真ん中辺りにバットの先を置く。

そこから、測ったように立ち、肩幅位にスタンスする。


バットを両手に持つと、ゆっくり構えるのが千香子だ。


丘のは、まだピッチャーを変える気配はない。

今、間多理団で一番警戒しなければいけないのは、千香子なのだが、丘のバッテリーには、それはない。


ランナー二塁。

長打なら得点になる。


例え送っても、ツーアウトからだと無理ではないが確率は下がる。


丘ののピッチャーがセットアップから投げ始める。

投げ込まれた球はインハイの球。


千香子は見送る。

打席を一瞬離れ、千香子はモッチーにサインを出す。


頷くモッチー。


二球目はアウトローのボール球。

千香子は振らない。

そして3球目。

真ん中よりやや外角の球が来る。


その球を待っていたように振る千香子。


千香子は空振りした。

その次の瞬間、丘ののキャッチャーだけ、みんなの世界から隔離された。


ピッチャーに球を返そうとして、異変に気付く。


モッチーが三塁に向かっていた。

ピッチャーが投げた後に盗塁したのだ。


(見えなかった‥そうか!)

丘ののキャッチャーは、拳を地面につく。


基本、投手が投げてからの盗塁はリスクがあるのでしない。

でも、見えなかった。

それは、千香子の戦術が優ったことを示す。


「なんて子なの‥」まどかは脱帽していた。


丘のバッテリーの配球を読み、事前にモッチーへサインを出す。


その時が来たら、千香子の空振りでアシストする。


千香子のバットの軌道。

それは、丘ののキャッチャーの視界を、モッチーを視野に入れるのを奪った。


千香子が左打席だからもある。

これが右打席なら、やりようはある。

しかし、左だ。


二塁ランナーが動くのも、三塁に行くのも見える。


同じキャッチャー目線だからもあるだろう。

だとしても、それは、すごいことでもある。



天才やセンスはいらない‥



「七花さん、ここにすごい子いるじゃないですか‥」


ベンチからみるまどか。


千香子が打席に入る時に送ったサインは、ちかの好きなようにやりなさい‥だった。


采配しなければいけないのだろう。

だけど、七花の凄さもみたい。


そして目の当たりにする。


千香子がモッチーに出したサインは、3球目走ってだった。

この全てのサインをヘルメットを触る事で行っている。


千香子のサインは、みな理解できる。


ただ、なぜ3球目なのかは理解している者は少なかった。


「配球読んでるわね」と、葵が口を開く。


まどかは、葵の方を向く。

気付く葵。

「まどかさん、関千香子は、先生の一番弟子ってことですかね?」

そういってニコリとする葵。


まどかは笑顔で応えたが、言葉が出なかった。



これで、ワンアウト、ランナー三塁。

状況は前進した。


千香子は理解していた。

「ないは、ないと」


ヘルメットを直しバッターボックスに入る時に千香子は呟いた。

「七花さんの言う通りだ」



千香子のバットの振るタイミング、場所、キャッチャーのミットを構える位置と腕‥


偶然ではなく、千香子の観察眼がいかに七花によって鍛えられたのか‥よくわかる場面だった。


丘ののキャッチャーは警戒モードに変わる。

(いつの間にか、この子に気を取られていたのか‥)


スクイズ?プッシュ?バント?


色々なシチュエーションが脳裏に浮かぶ。


その全てを、千香子が上まわるのをこの後知ることになる。



丘のバッテリーの配球は、外よりになる。

最悪、四球でもいいだろうということだ。


スリーボール、ワンストライク。


歩かせるのか?

みんなの脳裏にそうぎる。


丘ののピッチャーが投げた球はまた外角だ。


(それでいいの?)千香子はそう思いながらスイングを開始する。


ファール!


スリーボール、ツーストライク。


千香子はピッチャーをみる。


(それで楽しい?)


千香子から漂う気を、丘のバッテリーは感じていた。

(この子もだ‥)


逃げてるわけではない。

戦術といえば戦術だ。

カウントからピッチャー不利なのもある。

一塁も空いている。


しかしだ、野球とはこんなものなのか?

ワクワクや楽しいことはないのか?

作業スポーツなのか?


今、個々に丘のの選手は感じている。


この子たちは、本当に楽しんでいる‥




千香子は、丘のピッチャーがこの回で終わりだと感じた。

だからこそ、それでいいのかと。


「いい‥ちか。試合はうちらだけではできないんだよ?」と七花が言っていたことを思い出す千香子。


「当たり前じゃないかと思ったでしょ?でも、ちがうのよ。‥相手と高まり合い、相乗効果かあって、そこから生まれるハーモニーがなければ、試合ではないんだよ。それは、ただの練習と変わらないんだ」


(わたしもそう思う)



丘ののピッチャーが投球にはいる。

(さっきのといい、この子まで‥)

そうは思っているが、楽しそうにみえた。


「来る!」

千香子は構える。


インコース低め。

(いい球ね!)

かなり際どいコースだ。

(間違いない、ストライクだ)

千香子のバットは止まらない。


ファール!


粘る千香子。

丘ののバッテリーは思った。

(何を待ってるんだ?何をするんだ?)


フルカウントは続く。


丘ののバッテリーも、四球で逃げてもいい。

しかし、逃げない。

ピッチャーもキャッチャーも共に「楽しい!!」と思っていた。



何球ファールが続いただろう。


そして、その時は来た。


丘ののピッチャーが投げる。

構える千香子。

(きた!)


千香子のバットが始動する。

インコース低め。

ストライクの球だが、甘い球ではない。


千香子のスイングが‥


みるみる変わる。

「セーフティバントか⁈」丘のの監督が思わず口に出してしまう。


と、同時にやられたことを痛感する。

(あの子に気を取られすぎたか‥)


フルカウントからのファールで粘るバッティング。

ボールだろうがストライクだろうがカットする。


外角への配球ゆえにわかりやすいとはいえ、スクイズではなく、ヒッティングでもない。


丘のの守備位置も左より。


全ては千香子のストーリー通りになってしまった。


千香子のセーフティバントの球は一塁線上左を転がる。


お丘のの守備は左より。

一塁もセカンドよりに守備していた。


ピッチャーもファーストも間に合わない。

ワンチャンあるとすれば、間に合ってタッチアウトなのだが、それが、難しい所にうまく転がっていく。


その間、モッチーは生還。


0-3になる。

千香子は一生懸命走る。

ファーストベース前で、バランスを崩しよろける。

そのまま駆け抜けて、崩れるように座り込む。


「上手くいった!」息を切らせながら千香子がそういった。


そんな千香子に、丘ののライトとファーストが大丈夫ですか?と寄ってくる。

「あ、大丈夫です!」

そう言った千香子の顔を見て、2人とも何故か頬が赤くなっていた。



「犠牲フライでもいい場面‥面白い野球をやるわね」まどかはワクワクしていた。

(これは、七花さん、楽しいわけだ)




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