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第21号 時は来るもの

ステップ28 時は来る


佐々木瑠璃子が朝日七花と出会ってから2年近く、間多理団に真司がはいってから1年が経った。


その頃から、間多理団のスタッフの中である噂が漂う。


朝日七花が監督を辞めるみたいだと‥。


瑠璃子は内心怒っていた。

噂は構わない。

でも、なぜ本当かどうか、本人に確かめないのか?と。


瑠璃子は、ベンチでダブレットをみている朝日の所へ向かう。


「七花さん!」

「あれ?どうしました?瑠璃子さん、なんか怒ってます?」


「お、怒ってはいませんが、ちょっと興奮してるかもです!」

朝日は、瑠璃子の両手をチラッとみる。


しっかりグーになっている。


「瑠璃子さん、いいですよ」

朝日は瑠璃子の方へ向き両手を膝の上に乗せて瑠璃子の顔をみる。


瑠璃子は一瞬止まる。

(か、かわいいわ!)

そんな思いを振り払い、声に出す。


「あ、あのー、七花さんが、か、監督を辞めるかもって、噂が流れてます」


まるで、某名探偵みたいなポーズをとる朝日。

「んー、なるほど‥スタッフにも困ったもんだな」


「ほ、ホントなんですか⁈」

朝日の顔の近くまで接近して、恥ずかしくなり、また距離をとる瑠璃子。


「えっとですね‥半分正解かな?」

「半分?」

そんな瑠璃子を自分の横に座るよう促す朝日。

瑠璃子は指示されるがまま座る。


「スタッフというか、コーチングミーティングの時に話したことがありまして」


「あ、こないだやってましたね」

「ええ、その時に将来のビジョン的な話をしたんですよ」


「将来のビジョン‥」

「瑠璃子さんは、わたしと色々話しているので理解してくれると、していると思ってるんだけど‥わたしは時が来たら監督は譲るつもりなんで、今、まどかを鍛えてるのも、そういうことなんですよね」


「は、はい。理解しています!育てるつもりはないって話を聞いて、『それ』は感じていました。でも、わたしは、噂で七花さんが色々言われるのが嫌なんです!」


「ありがと‥確かにそうだけど、もういいんだよ?」

「ど、どうしてですか?」


「あ、えっと、わたしが気にしないから!ね!」

しばらく朝日をみる瑠璃子。

突然吹き出す。

「七花さんったら、もしかして天然ですか?」

瑠璃子は笑う。


「な、ちょ、瑠璃子さん!天然って、酷いんじゃない?」

「いや、天然です!間違いありません!気にしないなんて‥まぁ、七花さんらしいといえばらしいですけど‥」


「瑠璃子さん、遅かれ早かれ、その時は来るんですよ。同じ環境が永遠に続くわけではないですしね」

そういう朝日の顔には、笑顔には、一点の曇りもない。


「そうですよね‥ずーっと続く訳ではないですもんね‥」

朝日とは対照的に、瑠璃子は曇りだらけの表情だ。

そんな瑠璃子を見守るように見つめる朝日。


「瑠璃子さん、今、今ですよ!今を楽しみましょう!どうなるかわからない先のことで考え、悩むのは、もったいないですよ」


「七花さぁん‥」

少し瞳がウルウルしている瑠璃子。


「瑠璃子さん、自分がいなきゃ、やらなきゃ出来ないって思うのは、傲慢、驕りそのものです」

「責任感ではないんですか?」

ウルウルの目を朝日に向ける。


「確かに、それもありますね。でも、そう思う人は、もう責任感で動いてる。さらに、責任を負う必要はないんですよ‥でもできない」

「‥た、他人に任せられないってことですか?」


「まぁ、全てではないけど、そうですね。だから、わたしは、それを高慢、傲慢、驕りと思ってるかな」

「‥確かに、そうかもしれませんね」


急にベンチで両手両足を伸ばし背伸びする朝日。

「あー!気持ちいいー!‥でも、自分の力と他人の力が合わさった時は‥」

チラッと瑠璃子を見る朝日。

「合わさった時は?」

瑠璃子もそういい朝日をみる。


「最強最高なんですよ」


瑠璃子は、その時の朝日七花の笑顔を忘れることはなかった。





ある日の夜


朝日の自宅。


PCで何やらやっている七花。

ゲームではない。


「えっと‥」

「‥」

「あー、そうだった!」

「‥」

「んー‥」


などを繰り返している。


自宅での七花にしては真剣だ。


気分転換にミルクティーを飲む。

インスタントで、志津香のミルクティーには敵わないが、美味しい。


「ミルクティーは落ち着く甘さだよね」そういい笑顔だ。


自分が指導して、子供たちは十分楽しめたのだろうか?

自問自答する時もある。


「わたしって、やっていること中途半端かなぁ‥」

ミルクティーを飲むと引き換えに、言葉がこぼれる。

その繰り返し。


「結局、他の監督ひとと変わらなかったりしたら意味ないなー」


「‥さてと、続きをやろうかな‥」


その日、七花の部屋の明かりは遅くまで灯っていた。






数週間後ー


瑠璃子が家のことをやっていると、スマホが鳴る。

「あ、LINEか」


通知をみて止まる瑠璃子。

朝日からだった。


朝日七花

皆さんにお知らせがあります



瑠璃子は通知画面から動けなかった。

どのくらい経っただろうか、LINEを開く。



朝日からのLINEをみて、瑠璃子は座り込んでしまった。









朝日七花


皆さんにお知らせがあります



来年からアメリカに行かなくてはならなくなりました。

詳細は後日、日を改めてお伝えします。

急で大変申し訳ないですが、ご理解いただければ幸いです。




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