第19号 光ないところ影はなし
ステップ27 光と影
間多理団練習中ー
ベンチで見守る朝日。
その横にまどかが来る。
「七花さん」
「まどか、どうしたの?」
朝日の横に座るまどか。
「あのですね、姉が帰ってくるんです!」
「ほのかが?そうなの?」
「ええ、なんか長期の休みをいただいたらしくて‥」
「珍しいね、ほのかは忙しいから」
「そうなんですよね、休んでるのか心配な時がありますが、今回の休みで少し安心しました」
朝日は、まどかをみてニコリとする。
「まどかは、お姉ちゃん大好きだね」
まどかの顔が紅くなる。
「な、七花さんも大好きですよ」
そういって、さらに紅くなるまどか。
「ありがと!ほのかもそうだろうけど、わたしもまどかのことは大好きよ!」
まどかは沸騰し、頭から湯気がでている。
「ほのかが監督やったら、すごいと思うんだよね!」
空を見上げる朝日。
手には、飲み掛けの水筒から注いだお茶が蓋の中でゆらゆら揺れている。
そこにも、真っ青な空が映し出されていた。
「お姉ちゃんがですか?‥やらないですよね」まどかも空を見上げる。
「‥自由‥だからなぁー‥ほのかは」
朝日は息をするかのように自然に話す。
「ふふっ、自由というか、考えているようで、考えてないんですよね」
朝日はまどかの方を向く「わかる!特化型だよね、ほのかは」
2人で顔を合わせて笑い合う。
そして、また空をみる。
「ほのかと、美羽さんに会いに行くかな‥」
その言葉に、笑顔で返すまどか。
爽やかな風が2人を一瞬包み込み、すり抜けていく。
おもむろに立つ朝日。
「さてと、やりますかね!」
「はい!」
そんな朝日を見上げるまどか。
(七花さんもすごいのにな‥)
七花、高校1年の時
女子野球部部室
「いいの!わたしはそれで」
「ほのか、そこまで徹底しなくても‥」
ほのかは真剣な顔をしている。
「‥わたしは、七花を支えたい、みんなを、チームを支えたい!」
「それはわかってるよ、でも、選手登録しないって‥」
七花は寂しい顔をしている。
ほのかのリアクションがない。
チラッとほのかをみる七花。
「‥あー、もう!わかったわよ!選手もやるわ!でも、基本は、サポートよ?いい?」
みるみる七花の顔色が変わる。
「ホント?やったー!ほのかとプレイでっきるー!」
「まるで、子供ね‥」そう言ってるほのかは嬉しそうだ。
そして、この後、1年生チームが決勝まで行くという、類を見ない奇跡を起こす。
七花はますます注目を浴びる。
代表にも選ばれる。
幼い頃から光を浴びてきたし、光り輝いてきた七花。
しかし、七花の影ともいう存在のほのかにも注目が集まる。
それは、七花が、自分が活躍できるのは、出来たのは、チームやスタッフやサポートのおかげだと再三言っているからだ。
ほのかは、代打という形でチームに貢献することにした。
それは、七花も了承した。
ほのかは、七花にバッティングについて色々教わった。
感性のものが多かったが、ほのかは、それを自分なりにデータ化した。
そんな七花が、バッティングを教え始めて気付く。
何度か練習試合をする。
ほのかが代打ででる。
左打席。
構えに何にも感じないないほど、普通だ。
七花はじーっと見ている。
そんな七花の横に1人寄り添うように近寄ってきた。
「ねぇ、なーちゃん、ほのちゃん、緊張とかしないのかな?」
小声で話してきたのは、山田杏七花のチームのエースだ。
「わかる?あんず」
「うん。緊張感がないみたいな感じだよね?」
「そうなんだよね。わたしも、やる気がないというか、バッティングに執着してないというか、感心がないのかな?って思ってたんだけど、最近違う風に感じできてさ」
「違う風に?」
ほのかは、カウント2ボールノーストライクである。
「そう、緊張してないことは確かなんだけど、集中力が半端ないみたいな感じなんだ」
「集中力‥あっ、なるほどね!」
「あんずもわかるよね?」
「わかるわかる!ほのちゃん、一点集中でしょ?」
2人が顔を見合わす。
「その集中が異常なんだよね」
「マジでか!」杏はほのかをみる。
「なーちゃん、ある意味怖いな!」
七花の方を向き、少し怯えている杏。
そんな杏をみて笑う七花。
「化け物扱いは可哀想だよ?」
「ごめん‥」
「あんず、ほのかはさ、体がちゃんと出来てたら、凄い選手になると思うよ」
「うぉー、マジかー!すごいじゃん」
しばらくの間の後、2人は顔を見合わす。
「絶対つくらないよね‥」
「間違いない、それはない‥」
そのあと、またほのかをみる七花。
「‥にしても、あの緊張感のなさ、すごいや」
杏は七花をみる。
「なーちゃんは緊張する?」
杏をみる七花。
「緊張しますよ、あんずくん‥ただ‥」
「くんって‥で、ただ?」
「いい緊張かな?‥ワクワクよりの緊張」
「なーちゃんらしい!わたしは、ドキドキしちゃうもんな」
「普通はそれだよ!そう考えると、わたしとほのかは違うのかもね」
こう話している間、ほのかはフルカウントからファールで粘っている。
「みんな緊張はするんだよ」
七花は、千草から聞いたことを杏に話し出す。
「‥その緊張をどれくらい感じるか、どう感じるかなんだって」
「どのくらい感じ、どう感じるか‥か」そう言って杏がほのかの方を指差す。
頷く七花。
「ほのかの場合、緊張しても殆ど感じない」
「それはわかっていることだ」
杏はうんうん頷きながら自信を持って言っている。
「問題は、どう感じるか‥なんだよね」
「うーん‥あっ、あれだけ粘ってフォアボールで出塁した!‥てか、ほのちゃん、どうもこうもないような‥」
「そこなんだよ。なんかさ、データとか分析の延長線みたいでさ、当たり前でしょ?みたいになってるんだよ」
杏が七花をみて笑う。
「そんな、ほのちゃんでも、なーちゃんのことになるとアレだもんね」
七花が杏の頭にチョップする。
「いたっ!‥くない‥」
2人がクスクス笑い合う。
「ほのかはさぁ、あえて影を選んでるというかさ、わたしばかりじゃなく、自分を大切にしてほしいよ」
「なーちゃん‥」
「杏、練習試合に集中しようか!」
「うん!」
杏は思った。
なーちゃんだから、ほのちゃんは、影でもいいと思ったんだろうって‥。




