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第17号 ほのか

ステップ25 ほのか



門倉ほのかが、朝日七花をみた時の衝撃は凄かった。


七花と同じチームの男の子との二枚看板みたいな感じだった。

ほのかは、その男の子より、七花に目を奪われた。


同世代で、こんな子がいるのか?と思うほどだった。


こんな子をもっとみたい、知りたい、そう思い七花のいるチームに入ることにした。


野球経験はない。

当然、七花と同じステージに立てるわけではない。

ほのかは別の意味で凄かった。


七花のいたチームは、強かったが、とても居心地のいいチームだった。

新しいことはなんでもチャレンジするところもあり、七花も楽しんでいた。


「わたしの同い年?」と、練習中の七花に監督は教える。

「七花、色々教えてあげてね」

そう言われて任された七花。


「よろしくね!ほのかちゃん」

「は、はい!こちらこそ、よろしくです」


ほのかは、七花に色々教えてもらい嬉しかった。

だけど、受けるばかりで申し訳ない気持ちで一杯だった。


「あの‥」

勇気を振り絞るほのか。

「どうしたの?ほのかちゃん」


「こ、これ」

七花の目の前に一冊のノートが差し出される。

ノートの表紙には、ほのかの字で書かれた題名がある。


ーあさひななかデータ集ー


「え?わたしの?みていいの?」

頷くほのか。

ノートを開くなり真剣にみる七花。


「‥」

「‥」

「‥‥」

七花が顔を急にあげほのかをみる。


「これ、全部なほのかちゃんが書いたの?」

「は、はい‥どうでしょうか?」


「ねぇ!ほのかちゃん!わたし、左の方が長打力あるんだね!知らなかったー!」

「そ、そうなんです。右でのホームランが多いので、右が強いと思ってたんですが、実は左の時の方が長打が多いんです。もちろん、左はヒットも多いです」

ほのかの顔をじーっとみる七花。


「ほのかちゃんすごいね!こんなにわたしのこと教えてくれてありがとね!」

その言葉に、ほのかは一瞬、時が止まったかのように感じた。


色々なデータをみせると、そんなに見てるの?とか、気持ち悪いとか、なんの役に立つのとか、こんな事してないで勉強したり遊んだりしなよとか言われ続けてきた。


しかし、七花には感謝された。

その一瞬で、ほのかの渇ききった心が満たされていく。


(よろこんでもらえた!)

幸せに包まれるほのか。

「ほのかちゃん!」

「は、はい!」

現実に戻されるほのか。


「わたしの弱点のところ、書いてないよ?」

「あ!はい!それはですね‥」

ほのかがモジモジしている。


「大丈夫!いってちょうだい!」

七花は、どんと構えた。

「は、はい!書いていいか悩んで‥でも、それしかなかったんです」


「いいよ!教えて!」

「はい!えっと、弱点は‥お、女の子です」


「‥」

「女の子です」ほのかの声が頭の中で繰り返される。


「‥確かに、ほのかちゃんの言う通りかも。負けたくはないけど、そこはそうか‥今は負けないけど」

ニコリと笑う七花。

「ご、ごめんなさい。他に見当たらなくて‥」


「全然平気だよ!他にないのが心配だけど、ほのかちゃんが言うなら気にしないよ!」

その言葉に、ほのかは溶けそうになる。


「ほのかちゃん⁈」




それからというもの、ほのかのノートを中心に、2人であーでもない、こーでもないと話す日々が続く。


ほのかは、七花という媒体を通して花開くことができた。


チームも、ほのかのデータ分析の恩恵を受け成長していく。


自分の好きなものが、これほどみんなを潤すとは‥。


監督と七花が何やら話している。

「いいんだね?」

「はい、わたしはいいと思います。あとはほのかちゃん自身で決めてほしいです」


そのあと、ほのかが呼ばれる。

「ほのか、このチームはどうかな?」

監督の千草(千草)美羽みわから優しい声で聞かれる。

「は、はい。投打のバランスもよく、チーム間の関係もいいですし、みんな練習熱心で努力をよくしている、いいチームだと思います」

千草は、それを聞いて笑う。


「ほのか、すごいな!わたしはほのかがこのチームに入ってどうか聞いたんだが‥」

「あっ!す、すみません!わたし、またいつもの‥」ほのかは顔を紅くしている。


「大丈夫だ。で、実際どうなんだ?」

「は、はい。こんなわたしでも、楽しく野球ができています。ただ‥」

チラッと千草をみるまどか。


「いいよ、話してごらん」

「‥ただ、わたしは選手には向いてないのかもしれません」


ほのかの頭に手をのせる千草。

「‥ほのか‥やっぱりか‥」

その言葉に頷くまどか。


「いい?ほのか。向いてないんじゃないんだよ?ほのかには、更に進むべき道があるんだよ」

頭に手をのせたまま、ほのかを見つめる千草。

「わたしが進むべき道‥ですか?」

「そうだ、ほのかはたくさん人を幸せにできる子だと、わたしは思っている」


「千草監督‥」

「ほのか、わたしの野球はどんな野球だい?」

それを聞いて、ほのかは背筋がピンと伸びる感じがした。


「常に楽しく、型にハマるな、とらわれるな!‥です!」

それを聞いてニコリと微笑む千草。


「だったら、わかるな?」

ほのかは、満面の笑みで頷く。

そして千草にノートをみせる。

「千草監督、わたしはコレでしょ?」


千草は、また、ほのかの頭を撫でた。




それからは、ほのかは選手ではなく、サポート側にまわった。

千草の教育と七花の発想力に感化され、成長していく。


そして、それは突然きた。




「本気か?」千草の声が響く。

グラウンドのベンチの片隅で、千草とほのかが座って話している。


「はい。わたしのチカラで七花ちゃんを倒したいんです」

「それで、うちを辞めると‥」

千草は、しばらくして笑いだした。


「千草監督‥」少し困った様子のほのか。

「ごめんごめん、七花を倒したい‥か、君もそっち側なのか‥」


「千草監督?」

「あ、すまないね!‥ほのかがそうしたいなら、わたしに止める権利も理由もないな」


「いいんですか?」

「いいも何も、ほのかの人生だぞ?なぜ、わたしが縛ることができるんだ?」


「そ、そうですが、監督ですし‥色々と、その‥」

ポンっと、ほのかの頭の上に千草の手のひらがのる。


「わたしを、そこらの監督と一緒にしてもらっては困る。わかるだろ?それに、七花も言ってたしな」

「え?七花ちゃんが?」


「ああ、ほのかが七花わたしを倒したいというだろうって」

「七花ちゃん‥」


憧れが、追いつきたい目標になり、目標が、追い抜きたい衝動になる。

追い抜きたい衝撃が、その先の景色を見てみたいと思うようになる。


千草監督とほのかが話している時、七花は練習していた。


バットを振る、グリップをみる。

「今頃かな‥」


ヘルメットを直し、構える。

フリーバッティングを続ける七花。


(あれだけわたしをみて、分析しているんだ‥それはそうだよね)


ピッチャーが投げる。


タイミングを合わせる七花。

(わたしだったら‥)



(追い抜き‥)


「たい!」カキーーン!


七花の打球が虹のような綺麗なアーチを描いていた。




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