第15号 決着
ステップ23 決着
試合は、6-3で幕を閉じた。
最終回まで両チーム頑張った素晴らしい試合だった。
各チームごと、監督を中心に集まる。
それぞれ、健闘を称え感謝を述べていた。
そのあと感じた事や反省点などを話し合い、終わったら朝日の所に行く。
朝日から「おつかれさまでした!」と言われると、なぜがみんなはホッとするようだ。
朝日の所に行き、今日の試合について色々話し、それから朝日の言葉を浴びる、この瞬間が、みな心から嬉しくて、疲れが吹っ飛んでいくようにすら感じる。
朝日は、この7対7に関しては、よかったことのみしか言わない。
選手たちから、あそこがここがダメだった上手くいかなかった‥と言われ聞かれたら何かしらリアクションはするが、基本自分からは言わない。
この試合で、色々感じ考え学んでほしいのがあるからだ。
そんな中、ももかは自分の両手を見つめていた。
(お、おねえちゃんと一緒‥)
グラウンドの熱気、風の心地よさ、空の青さ‥全てを感じ同じ空間にいる。
そして、最終回のトップバッターは、ももかだった。
姉まどかをはじめ、みんなのプレイを目の当たりにして興奮しないわけがない。
ももかは、初球から積極的に振った。
打球はフェンスを越えてホームラン!
‥とはいかなかったが、いい所に飛んで転がった。
ももかは、一塁を回った時にもう決めていた。
(ホームまで行く!)
スピードに乗ったももかは加速する。
二塁、三塁とベースを糧にしてさらに加速する。
ホームベース一点を見つめ加速するももか。
「あれが、ももかの強みです」そう朝日が瑠璃子にそっとこぼす。
「なんか、ベース周るごとに速くなってませんか?」
「不思議でしょ?ももかは、本来ならバスケなどがいいかもしれない」
「え?バスケですか?」
「ええ、まあ、バスケじゃなきゃダメってことではないけど、例えばの話です」
「なるほど‥で、なんでなんですか?」
朝日スマイルが炸裂する。
瑠璃子はダメージを受けた。
そんなことは気にせず朝日は話を続ける。
「ももかは、パワースリップするほど、一歩目が速いんです」
「パワースリップ?一歩目?」キョトンとする瑠璃子。
「こういう地面だと、滑ってしまいスピードを生かせないんですよ」‥左つま先で地面をトントンする朝日。
「あっ!だからバスケって言ったんですね!バスケはコートだから!」
「そうです。一歩が速くても滑ってしまったら台無しですから‥ただ‥」
「ただ?」
「ももかは、目標物があると通常より足が速くなります」
「え?」
「誰かを追うとか、ボールを追う、あそこの所まで行く‥みたいな感じです」
「50mとか100mとかだと速くないんですか?」
「そうですね‥その時よりはタイムは落ちますね。ただ、ももかは、50より100の方が速いですよ」
「え?そうなんですか?」
それに頷く朝日。
「最初の一歩が速く、後半加速する‥そんな感じです」
そんなももかだからこそ、ランニングホームランができたのだろう。
ホームベースにスライディングすることなく駆け抜けたももか。
喜びを爆発しながら、千香子の所をへ向かいハイタッチから、千香子に抱きつくももか。
「千香子さーん!やったよ!やったよ!」
しばらく千香子から離れなかったももか。
その様子をみている朝日。
瑠璃子はまた朝日の顔をチラッとみた。
(いい笑顔‥)
瑠璃子は、そんな朝日をみてひとりモジモジしながら喜んでいた。
選手たちが沢山学ぶはずが、瑠璃子も沢山学んでしまった。
「先生!」
「はい、どうしたました?」
「今日いっぱいお勉強できました!」
「それはよかった‥」
「でも、やっぱり、当たり前を当たり前と思わず感謝したいとも思いました!」
「そうですね‥とてもいいことです」
みんなの方をみている朝日。
「大丈夫です!真司を含め、みんな感じていると思います!」
「ありがとございます瑠璃子さん。そうだと嬉しいですね」
風になびく髪
陽の光を浴びきらめく肌
スラリとしていながら凛とした佇まいの後ろ姿。
その身体から溢れる優しいオーラ。
瑠璃子は思った。
この人は一体どれだけの事を経験して、ここまで生きてきたのだろうか‥と。
わたしならそれらを対処し前へ進めただろうか‥。
朝日七花の背中に、真っ白な大きな翼が一瞬見えた気がする‥
目を擦る瑠璃子。
「あれ?」
朝日が振り返る。
「どうしました?瑠璃子さん」
振り返った朝日が、とても眩しくキラキラしていたのを瑠璃子は忘れなかった。
「えー!知らなかったです!」
瑠璃子が自宅キッチンで驚いている。
どうやら、瑠璃子のスマホからの話し相手からの声に反応しているようだ。
ーこのことは、あんまり人に言わないでねー
スマホからまた声が聞こえる。
「い、言わないけど、びっくりですよー」
今日の瑠璃子は、お団子結びにエプロン姿で料理中だ。
子供がいるっと言ったら驚かれるくらいの若々しさだ。
その若々しさが、朝日の秘密をまたひとつ知れたことで、さらにはじけそうだった。




