表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『とりかえたい物語』  作者: …。
2/2

女君にちんこはない

御世が代わった。次の東宮となるべき男の子が居なかったため、退位した朱雀院の女一宮が皇太子となった。その流れで関白左大臣が引退したため、権大納言であった父は関白左大臣となり、女君は侍従から三位中将となる。出世である。

「なぁなぁ、左大臣さんよ。」

 それから幾ばくもないときだった。父が歩いていると、長年折り合いの悪かった時の右大臣から呼び止められる。敵意のない笑顔に父は少し驚いた。今まで顔を会わせれば嫌味の押収だったからだ。

「帝も代わりなさって、わしらの時代はもうすぎたじゃないか。いがみ合うのはもうやめにしないか?」

そう続ける右大臣に、父は笑顔で返した。悩みの種がひとつ減るのはでかかったからだ。

「もちろんだ!これからは仲良くしようじゃないか!」

その言葉を待っていた、という風に右大臣は頷く。

「それでなんだがな…。うちの可愛い可愛い娘、四の君をお前の息子に嫁がせたいと思ってだな…。」

父の笑顔は固まった。右大臣の言っている"息子"というのはもちろん女君のこと指しているからである。女に女を嫁がせるのは無理だ。分かっている。ちらと右大臣の方を見る。断られるとは微塵も考えていない顔だった。流れ的に断れない。

(まあ、ええか…!)

父は考えるのを止めた。

 結婚の儀はつつがなく終わったが、問題は夜である。結婚のあと、三日は睦言をせねばならない決まりである。ここで大事なことだが、女君に某はついていない。もちろん玉もだ。つまり、セッ…できないのである。

「あの、三位中将さま…?」

可愛らしくこちらを呼ぶ声にさて、どうしたものかと女君は考えた。そして思った。

(箱入り娘だし、セッ…を知らないに違いない!)

そう、四の君はドがつくほどの箱入りなのである。天皇家の血が入っている上に父である右大臣から溺愛されている。ソーセージがホットドッグになることなど知るはずもないのだ。

「四の君、これからすることを知っているか?」

慎重に伺うと、

「父から『将来結婚する相手に聞きなさい』と聞かされてきたので…。」

存じ上げませんわ、と四の君はこてんと首を傾げた。

女君は勝ちを確信した。そして一つ咳払いひとつ。

「セッ…というのは二人で楽しい話をして夜を明かすことだ。」

とにこりと笑って告げる。

四の君はまぁ、そうなのね!と楽しそうに笑って姿勢を正した。

そして二人は飽きることなくお喋りをし、女とバレることなく三日を乗り切ったのであった。平和である。

 女君は男装に気付かれることなく、三位中将から権中納言へと栄進を遂げ、男として成功していったのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ