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短編「恋愛物、令嬢物、その他の短編」

社交好きが高じて皇太子殿下の婚約者になりました

作者: ヒトミ

私ハイデマリー・クラヴィスは、しがない子爵家の令嬢ですが、父が産業革命の波に乗り、財産をたんまり(もう)けた大富豪家の一員です。


趣味は舞踏会に夜会、お茶会といった社交なのですが、周りの友人にその事を話すと、変わってるのねとよく言われてしまいます。


華やかな場所が好きで何が悪いのでしょう。


社交界に顔を出せば出すほど、人脈は広がりますし、流行の変化にいち早く気づくこともできるんですよ。


百利(ひゃくり)あって一害(いちがい)も無いではありませんか。


◆◆◆


そんなある日のこと。


私の元に雲の上の存在から婚約話が降って湧いてきました。


なんとその相手はこの国の皇太子殿下、アルフィーノ・ユーリアス殿下だったのです。


大富豪とは言っても子爵のクラヴィス家。


皇太子殿下の婚約相手としては、心許ない家柄です。


しかし、皇家からの申し込み、断わる訳にはいきません。


皇太子妃教育、その他もろもろ大変なことは多いと思いますが、王族流の社交術を学ぶのも楽しそうなので、頑張ろうと思います。


◆◆◆


アルフィーノ殿下とのお茶会の日。


私はなぜ、婚約者を私に決めたのか、殿下に聞いてみました。


「俺は無愛想で、貴族相手の社交に向いてないと父上に判断された。自分でもそう思っている。貴女のように社交界で顔が広い婚約者の必要性を感じたんだ。ゆくゆくは一緒にこの国を支えてくれると嬉しい」


私の目を見て、真剣な表情で話したアルフィーノ殿下。


頭まで下げてお願いされてしまい、とてもとっても恐縮です。


アルフィーノ殿下は、まあ(いか)つい外見をされてはいますが、それは騎士と同じ訓練を受けていらっしゃるからでしょうし、言葉遣いが時折(ときおり)荒いのも、城下町の民とよく交流されているからなのでしょう。


社交界で出会う商人の中にも、貴族流の話し方に苦戦している人を見かけることがあります。


殿下の厳つい外見と荒い話し方から、貴族の中には彼を敬遠する方もいるのでしょうね。


私は社交界が好きです。舞踏会や夜会、華やかな場所がとても好きなのです。暗い面を目撃することもありますが、皇太子妃になれば、社交界のそういう面も改善していくことができるのではないでしょうか?


「分かりました! 私とアルフィーノ殿下、適材適所な場所で協力していきましょう! 殿下は政治の表舞台で、私は社交界という裏舞台で貴族をまとめてみせます」


幸い、クラヴィス家は大富豪。そのための資金はお父様がいくらでも捻出してくれることでしょう!


「ハイデマリー嬢、ありがとう! これからよろしく頼む」


◆◆◆


時は流れに流れ、アルフィーノが皇帝になり、大分(だいぶ)経ちました。


もちろん私は皇后となった訳ですが、私の目から見てもこの国は今、最盛期を迎えていると思われます。


民のことを考え政治を行なうアルフィーノ。


貴族も蔑ろにしてはいないと、社交界で活動する私を通して伝えることで、貴族の中でも反発はあまりありません。


夫婦の寝室でアルフィーノによく「苦労をかける」と申し訳なさげな表情で言われるのですが、とんでもない。


私は私がやりたいことを楽しんでやっているのです。


社交が苦手な人もいることを知っています。


できる人がやればいいのですよ。


それにアルフィーノは社交が苦手なのではなく、堅苦しい言葉遣いで話すのが苦手なだけではありませんか?


アルフィーノにそれを伝えたとき、彼は長年の疑問が解けたというような晴れやかな顔をして、見たこともない子どもがはしゃぐような、破顔(はがん)を見せてくれました。


「俺は勘違いしてたんだな! 気づけてよかった。ハイデマリーのおかげだよ。ありがとう」


この時の彼の笑顔は眩しすぎて、一生記憶に焼き付いて離れないのだろうと私は思いました。

お読みいただきありがとうございました。

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