Chapter4:とある人形遣いの恋物語〈ポールの話〉(18)
「ああああああああぁぁーーっっ!!!」
ポールはありったけの声で叫んだ。
「……ちくしょうっ!!」
ポールは無表情に自分を見つめるセシルをつかんで、叩きつけるようにベッドの下に投げ捨てた。
目に涙をためたイヴの顔が、ポールの心に何度も何度もよみがえる。
なんでおれは、「人形」なんだろう。
今日ほどそれを恨んだことはなかった。
おれに、人を幸せにする力があるって?
人を喜ばせることができるって?
とんだ自惚れだ。
結局おれには、人を幸せにすることなんて出来ないんだ。
一番喜ばせたい人を、おれは、あんなに悲しませてしまった。
結局おれは、人を悲しませて、不幸にすることしか出来ないんだ。
「ちくしょう……」
セシルは一言も何も発さず、自分で動けるくせに、動かない人形のように床にごろりと転がっていた。
それで、ポールも申し訳なくなって、セシルをそっと、拾い上げた。
「ごめん……」
「ううん。ポール、だけど……これで良かったんだよ。」
セシルがこの上なく優しい声で言うので、ポールはどうしようもなく悲しくなって、泣きたくて堪らなかった。
だけどどんなに泣きたくても、やっぱり涙は出なかった。