表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Avenger  作者: kaluha
Chapter4:とある人形遣いの恋物語
60/98

Chapter4:とある人形遣いの恋物語〈ポールの話〉(16)

 次の土曜日も、イヴはいつものようにサレム橋にスタンバイしていて、ポールの人形劇が始まるのを待っていた。

 目が合うと、少し頬っぺたを赤らめて慎ましやかに微笑む。

 たしかに、そう言われてみると、ポールが覚えているかぎりイヴは毎週欠かさず見にきてくれている。

 少なくとも、人形劇(ポールの?)の大ファンであることは否定のしようがない。セシルに言われるまでもなく、おれってすごい鈍感なのかもしれない……ポールは自嘲気味にそう思った。


「ポール。クッキー、食べてくれた?ちゃんと焼けてた?」

 イヴはいつものように控えめな口調で自信なさげに話し掛けてきた。

「食べたよ。すごく美味しかった!いつも、ありがとう。」

 ポールがそう言うと、イヴはパッと顔を輝かせて、こっちがくすぐったくなるぐらい、幸せそうに笑うのだった。

「よかったー。ポール、甘いものは大丈夫なのね?ポールって、何が好きなの?」

 イヴが畳み掛けるように聞くので、ポールはたじろいでしまった。

「え……そうだなぁ、あんまりベタベタしたものは得意じゃないからやっぱり、クッキーとかかな……」

「ほんと?私、凝ったものとか作れないけど、クッキーなら簡単だから、また焼くね」

「いや、なんか申し訳ないし、そんな、ほんとたまにくれたら、それで充分だから。」

 ポールが慌ててそう言うと、イヴはとたんに顔を赤らめてあたふたと言い返す。

「そ、そうだよね。私の焼いたお菓子なんて、そういつもいつももらったって迷惑だよね」

「ああいや、そう言う意味じゃなくて……」

 でもイヴはポールがフォローしようとすればするほど赤くなってしまうのだった。

 参った。これは、これはほんとにまずいことになってきたかもしれない……。

 確かに、これまでの色々なことを思い返してみても、今までポールがまったく気付いていなかっただけで、イヴはいつも、いじらしいぐらいに一生懸命、ポールのことを見ていてくれたのだ。

 ポールはここへ来てようやく、そのことに気がついたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ