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Chapter4:とある人形遣いの恋物語(12)
しかしその時私は、何か、違和感を感じた。
手に感じるポールの皮膚の感触、ガラス玉のようなブルーの瞳。
心がひやりとする。
……この違和感はなんだ?
「そんな……、こんなこと、信じられるか……!」
ネルスターまでもが叫び声にも似た声で言い、呆然と、動かないポールを眺めていた。
ポールは置手紙を遺していた。
イヴには、僕が最後まで人形を愛し、人形を愛するゆえに人形とともに自殺したと伝えてください。僕のことは、彼女にだけは、教えないでほしい。
存在することが、罪。けして許されることのない魔法。
私は彼に、なんということをしてしまったのだろう。なんという言葉を掛けてしまったのだろう。
「ネルスター……!」
私は手紙を手にして、ポールの体を抱えたまま、どうしていいか分からず、心が震えて、ただ叫ぶように相棒の名を呼んでいた。