表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Avenger  作者: kaluha
Chapter4:とある人形遣いの恋物語
55/98

Chapter4:とある人形遣いの恋物語(11)

 ポールはショックから立ち直れない様子で、しばらくうつむいていたが――やがて、ゆっくりと顔を上げ、私とネルスターの顔を見ながらきっぱりと言った。

「……わかった。あんた達には、嫌な仕事をさせてしまったな。すまなかった。」

 私はこんなにもあっさりと事実を認め、静かな声で謝罪すら口にするポールに軽く面食らった。

「もう、あんた達他人の手を煩わせることはしないよ。だから、少しの間、この部屋の外に出て、おれを一人にさせてくれないか。人形たちに、最後の別れを言いたい。そのぐらい、いいだろ?」

 私は思わずネルスターと顔を見合わせていた。

 突然のことに、どうするべきか分からず迷っているうちに、ネルスターが答えた。

「分かった。……キール、出よう。」

 ネルスターがそう言うので、私たちはそろって寝室から外に出た。

 とても、嫌な予感がした。

 本当に、人形に別れを告げるだけだろうか。あまりにもあっさり罪を認めたその態度に、私は逆に不安を感じた。


 私たちは不吉な予感を抱えながら、彼を待った。

 しかし、待てども待てども、彼は一向に部屋から出てこない。

 気が遠くなるぐらい長い時間を待った気がした。私の不安は、時を追うごとに膨らんでいった。

 彼はいったい、何をやっているんだ?

「ネル……」

 堪りかねた私の声に、ネルスターもうなずき、二度、ノックをした後にドアを大きく開けた。



 そこで私たちは、信じられない光景を目にした。

 散らばった人形たちは全て、もう二度と動くことのないように破壊されていて、その中央、ベッドの上に、金髪の美しい少女の人形と寄り添うようにして、ポールが倒れていた。

「そんな……!」

 私はポールに駆け寄った。

「ポール、ポール・リンクス!!」

 私は彼の体を揺らしながら必死で呼び掛けたが、その目は固く閉ざされたまま、何の反応も示さない。

 そんな……。彼は初めからこうする気だったのか。愛する人形を壊されて、罪を暴かれ、自暴自棄になって、人形と一緒に死ぬ方を選んだと言うのか。

「どうしてこんな、こんなことって……」

 私はどうにも遣り切れない思いに駆られた。

 こんなこと……「人形を全て壊して、ポールに目を覚ましてもらいたいんです」。そう願ったイヴリン・ウォルターに、なんと説明すればいいのだろう。どう、償えばいいのだろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ