表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Avenger  作者: kaluha
Chapter4:とある人形遣いの恋物語
47/98

Chapter4:とある人形遣いの恋物語〈イヴの話〉(3)

「今日は、どんな人形?」

 イヴは何か話し掛けなければ、と思い、彼の背負う大きなナップザックを見ながら必死で話し掛けた。

「ん……?じゃあ、特別に見せてあげようか。」

 ポールはナップザックを肩から下ろし、中から人形を取り出した。

「今日は、新作の人形を持ってきたんだ。名前はベンジャミン。年齢127歳。」

 ベンジャミンはギラギラした緑色の目の老人で、真っ黒なローブに身を包んだ魔法使いだった。

「魔法使いね。すごいなぁ……」

 しわしわの肌も、尖った爪も、今にも動き出しそうなぐらいにリアルだ。

「いつも思ってたけど、人形って全部手作りなんだよね?」

「そうだよ、普段は部屋に籠もって、日がな一日人形を作ってるってわけ。暗いヤツだろ?」

「ふふ……そんなことないよ、すごいよ」

 イヴはぎこちない会話の中にも自然と笑みがこぼれる自分に気付いた。こんな幸運、滅多にない。

 サレム橋に着いてしまうのが、なんだかもったいない気がした。



 きっかけとは不思議なもので、今までまるで敵のように思えていた常連客たちと、イヴはすんなり馴染むことが出来た。

 ポールがさり気なく気を回して、イヴが溶け込みやすい雰囲気を作ってくれたおかげかもしれないけれど。

「じゃあ今日は、皆勤賞のイヴちゃんに、ちょっとベンを動かしてもらおうかな!」

 ポールの指名を受けて、イヴは初めてポールの人形を触った。

「こうやって、この棒を動かすんだ」

 ポールは隣で羊飼いの少年を動かしてみせながらイヴにやり方を示した。

「こ、こんな感じ……?」

 イヴの持つ棒に繋がった糸に操られ、魔法使いベンジャミンがぎこちなく歩きだす。

「うんうん、なかなかいい感じ」

 ポールに、人形の使い方を教えてもらっちゃってる……!緊張でカチカチになっているイヴに、観客は暖かい拍手をくれた。

 僕も僕もと群がってくる子どもたち。ポールはいつもの気さくさで、上手に子どもたちの相手をする。

 ポールは本当に楽しそうで、彼が人形劇と、そこに集まる人々のことを本当に愛しているのだと言うことが、ありありと感じられた。そして今日はイヴも、その輪の中に入ることができたのだった。

 その日はイヴにとって、最高に幸せな一日となった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ