25.森の中で(3)
冒険者は、空の馬を2頭したがえている。
馬は逃げて無事だったということか。
おもむろにフードを取って顔を見せた。
うわ・・・・
口元にマスクのようなものをしているが、それでもわかる。
ロランに勝るとも劣らない、美男子だ。
長い金髪に、青い切れ長の目をしている。
「そいつだけは攻撃しちゃいけない。
あいつらみたいになるぞ。
連れは皆、そいつの親にやられた。
それはこの森の主の子供だ」
『!!』
「恐らく主も近くにいる。
あいつらが子を襲ったことで気が立っているから危険だ。
さっさとこの場を立ち去ることだな」
ロランの予想通りだった。
いよいよ俺たちの身にも危険が身に迫ってきたということだ。
「馬を貸してやりたいが、あいにく急いでいる。
君たちの旅の幸運を祈る」
言って踵を返す背中にロランが聞いた。
「ご親切にありがとうございます。
おかげで助かりました。
あの、お名前は?」
「名前・・・・?
そうだな、イコン、とでも名乗っておこうか」
そう言ってイコンは去っていった。
俺たちもうかうかしてはいられない。
絶対に主に会わずにこの森を出なければ。
緊張した空気の中、3人で歩く。
わずかな物音にも体が反応してしまう。
ずっと気を張っているから、疲労感がすごい。
どのくらい歩いただろうか・・・・・
辺りが暗くなってきた。
イコンと出会ったあの場所からは、かなり離れられたハズだ。
主の子供からも離れたから、危険はないかと思うが・・・・
「なぁロラン、あの場所から随分歩いたし、今日はここら辺で野営にしないか?
さすがに俺も疲れた。
アリスはもっとしんどいだろ」
さきほどから前を行くアリスの歩みが遅れていた。
息遣いも荒い。
俺たちに迷惑をかけまいと必死に歩いているのがうかがえた。
ハッとした顔でロランが振り返る。
「そ、そうだな。
すまない2人とも・・・・・
不安になってつい、先へ先へとばかり考えていたようだ」
2日目の夜を迎えた。
ここまでは想定内だ。
あと1日でこの森を抜けなければならない。
―—―――――――――――――――――――
夜が明けた。
疲れはとれてはいないものの、歩くしかない。
森の深部は抜けたようで、朝には明るかった。
おそらく出口にも近づいているだろう。
希望的観測を持ちながら歩みを進めていると、前から・・・・・
馬が走ってきた。
モンスターではなさそうだ。
馬・・・・?
もしかして・・・・
馬は俺たちの前で立ち止まり、真っ直ぐこちらを見ている。
「え・・・・この子、イコンさんの馬だよね?
手綱もついてるし・・・・」
アリスが言う。
「そうだろうな・・・・
一体どうしたんだろう?
イコンさんとはぐれたわけではないよな?」
ロランが首をかしげる。
「もしかして・・・・
イコンさんに何かあったんじゃないか?
それを知らせに来た、とか・・・?」
馬は賢い動物だ。
主の急を報せることがあってもおかしくはない。
馬は俺たちをじっと見ている。
そして「ついてこい」と言わんばかりに歩き始めた。
「ついて行くしかなさそうだな」
ロランが言う。
俺とアリスはうなずくと、3人で馬の後を追った。




