2.出会い
俺の職場は居酒屋だ。
土曜の夜は特に忙しい。
ホールの雰囲気もピリピリしているが、今日は店長が不在なので仕切りは俺だ。
店長が使えないおかげで、副店長である俺はそこそこ店員達からの信頼がある。
周りに目を配りつつ、得意のグラス運びを引き受けた。
「失礼しまーす、こちらご注文の生ビールとグレープフルーツジュースでー・・・」
「!!」
正面に座る女性を見て驚いた。
(ア、アリスだ・・・・)
今まで経験したことのない高揚感に包まれる。
俺の初恋、アリス・エルドレットにそっくりなのだ!!
アリスは「フォルテナブル・クエスト」のヒロインで、異世界で幼馴染の男2人と仲間を増やしながら旅をしている。
明るい茶色の髪の毛を肩にシンプルに一つ結びにして、目がくりっとしてさ。
普段はおしとやかで女の子らしいのだが、仲間を守る時は強い意志と力を発揮する。
そのギャップが良かった。
最終的には剣士の男とくっつくんだけど・・・・。
っと、そんなことはどうでもいい、まずは仕事だ。
飲み物を置きながら、彼女にそっと視線を向ける。
彼女は周囲と話をしていて気づかないが・・・・
隣に座るオッサン達は何者だ?
職場の飲み会にしては、風貌が変わっているような。
話ぶりからして、何かのお祝いの席のようだが・・・・
「当店のご利用は初めてでいらっしゃいますか?
お時間やご利用方法等、ご不明な点はございませんか~?」
一度誰かがしたであろう、マニュアル通りの説明をつとめてゆっくり話す。
少しでも彼女の姿を見たいからだ。
「そんなのいいよ、早くひっこんで」
うるせー、こっちは仕事なんだよ。
「失礼しました、ごゆっくりどうぞ~」
その後は一度だけその席に料理を運んだきり。
2時間ほどでその集まりはお開きとなり、彼女も帰るようだ。
「ありがとうございましたー!
またお越し下さいませー」
会計を済ませ、部屋の片づけに入ると・・・・・
あれ、何だこれ?
座布団の上に、光るものが落ちていた。
ピアスだ。
この部屋に女性は1人だったから、彼女のものに違いない!!!
俺はとっさに
「この部屋に忘れ物あったから、ちょっと届けに行ってくる!
すぐ戻るから!」
と言って店を出た。
彼女がまだ近くにいるかもしれない。
話ができるチャンスかも!




