12.焦りとなぐさめ
――――――いつの間にか眠っていたようだ。
目が覚めると同時に、強い喉の渇きを覚える。
部屋にある水さしは空になっていた。
外に井戸があるって言ってたな。
行ってみるか。
二階の部屋から移動して、ランタンを手に薄暗い階段を降りる。
裏口のドアの隙間から、ほんのり明かりが漏れている。
「今日は月夜だったっけか・・・・」
つぶやいてドアを開ける。
ザッと何かが動く気配がした。
何だ・・・・?
井戸の横に誰かがうずくまっている。
白いワンピースのような服に身を包んだ・・・・・
アリスだった。
「アリス・・・・?」
声をかけるとビクッとするが、返事はない。
気まずかったが、とりあえず喉の渇きを潤そうと水を汲んで飲む。
ザザァ・・・・っと夜風が吹いて雲が切れ、月明りが俺たちを照らす。
あれ・・・・今って2人きり?
そう思ったら急に緊張してきた。
よ、よしこんなチャンスなかなかないぞ!
何か話すんだ、俺!
井戸を挟んで声をかける。
「アリスも水を飲みに?」
返事はない。
「こ、こんな所にいたら風邪ひくんじゃないか?」
やっぱり返事はない。
ぐぅううう、こんな時、一体何て声をかけるのが正解なんだ!?
「リュカは・・・・・
今日、怖くなかったの?」
アリスがぽつりと言った。
怖くなんかなかったぜ!楽勝よ!
そう、虚勢をはろうとしたが、やめた。
みっともないと思われてもいいや。
アリスには正直に話そう。
なんか、そうしなきゃいけない気がする。
「—————怖かったよ」
アリスが俺の顔を見た。
深い緑色の目がまっすぐ俺を見る。
「何で・・・・何で怖いのに戦えたの?」
「うーん・・・・なんでだろ?
俺も無我夢中だったよ。
戦ってる最中のことなんか、あんまり記憶にないしな。」
「本当なの?
そんな風には見えなかったけど・・・・」
「いやいや、怖かったって。
ヤベェなって思ったもん。
気持ち悪かったしさあ、アイツ。
何なのあの体液?うわーって思ってた」
「そんな風に思ってたの?」
「おう、情けねぇだろ?」
ふふふ、と小さくアリスが笑う。
やった、俺、アリスに笑って欲しかったんだ。
俺のことは、何て思われてもいい。
ただ・・・・笑って欲しかったんだ。




