EPISODE,5:かき氷はイチゴ派ですか?それとも、ブルーハワイ派ですか?
「さて、俺も飯食うか」
砕け散った陽キャども・・・もとい涼太を後にして、俺はある場所に
たどり着いた。
ここは、「ピアノ室」と呼ばれる教室。
ここはもともと、「生徒の芸術センス」を磨くために作られたのだが、
人通りが少ないところに作られたせいか、誰も利用していない。
中は文字通り、「ピアノが一台置いてある教室」である。
ここは俺にとって、「ぼっち飯」ができる唯一の場所。
(他の人と一緒に飯食べる意味が分からん)
なのだが・・・
「・・・・・・あ」
「・・・・・・え?」
鉢合わせてしまった。
あの小窪さんと、なんということだついにここもこれまでか・・・。
なんて考えてると、小窪さんが口を開いた。
「あなたも、ここでお昼食べるの?」
話しかけてきた。
ああ、自分から話しかけることはあるのね。
(知らない男子なのに・・・勇気あるなあ)
「・・・ああ、うん。俺いつもここで食べてるんだよ」
「一人で?」
「そうだけど」
「私、出ようか?」
「いいよ、大丈夫」
「でも、人来たら・・・」
「ああ、ここあんま人来ないんだよ」
「そうなの?」
「『ぼっち飯』には、うってつけだよ」
「ふーん・・・じゃあ、一緒にお昼食べよ?」
「いいのか?」
「うん、いやじゃなければね」
「ありがとう」
なんか知らないけど、一緒に飯食うことになった。
にしても、あの男子全員をスクラップにした小窪さんが、お昼ご飯に
俺を誘うとはねぇ。
(ていうか、お昼誘われたこと涼太に言ったら、殺されるなあ・・・
内緒にしとくか)
「そういえば・・・」
「ん?なんか言った?」
「ちょっといい?」
「うん」
「・・・・・・」
「なによ」
「いや・・・『話しかけるな』って言った割には、応じてくれてるなあ
って思った」
「ああ、私ね、いきなり話しかけてくる人が嫌いでね、というか、
人と話すことが嫌い。だから、さっきみたいに許可というか、前置きを
してると助かるんだよねー」
「あれ、そういう意味か・・・」
「そうだけど・・・え?わからなかった?」
「俺からしたら、『私に話しかけてくるな』に聞こえた」
「ふーん、ほとんどの人はそう聞こえるんだ。それはそれで、
ありがたいけどね」
「ありがたいんだ・・・」
「で?何か用?」
「小窪さん、もしかして『七宮駅』から来た人?」
「そういうあなたは、今朝私をジロジロ見てた人?」
「あーそうそう・・・って、気づかれてた・・・」
「あんま必要以上に人を見ないほうがいいよ」
「確かに・・・気を付けるよ」
・・・・・・やらかしたー。
本人、許してくれてよかったー。
「はあ・・・」
「大丈夫か?」
「うん・・・初日から、あんなに男子からお昼誘われるとは
思わなかった・・・疲れた・・・」
「大変だったな」
「うん・・・ねえ、一つ聞いていい?」
「うん、何?」
「なんで男って、女によって来るの?」
普通の人だったら、こんなことを聞かれたら適当に答えるとこだが、
彼女の場合、真剣な相談だったので、考えてみた。
「己の性欲を満たすためじゃね?」
「最低・・・」
「まあ、聞けって」
そうして俺は、自分の仮説を彼女に話した。
「そもそも、なんで男女には性欲があると思う?」
「女子にもあるの?」
「そこは知らん」
「知らないんだ・・・で?」
「仮説だけど、そもそも、俺たちは『ほ乳類』で、『子孫を残す』って
本能があるだろ?」
「あるねー」
「子孫を残すには、何か、特別な感情をもって特別な相手とだな
・・・・・・・・・・・・・・・」
「わかった・・・かな・・・・・・」
「うん・・・ていうか、たった三分でよくそんなに壮大な話になったね
・・・」
「スケールがデカすぎたね・・・・・・ごめん」
「でも、面白かったし・・・・・・いいよ」
「っ!?」
その不意打ちに見せた彼女のほほえみは、正直、目の保養になったのは
内緒にしよう。(彼女にも、もちろん、涼太にも)
「あ、もう昼休み終わるな」
「ねえ」
「ん?」
「あなた、なんていうの?・・・その・・・名前」
「俺?橋沢隼斗だけど?」
「じゃあ、隼斗だね」
「まあ、そうなるね、名前だし」
「あの・・・さあ・・・・・・」
「どした?」
「明日、また・・・二人で、お昼食べよう?ここで」
「いいのか?」
「うん・・・」
「オッケー、また明日な、小窪さん」
「彩音・・・」
「ん?」
「『彩音』って・・・呼んでくれなきゃやだ」
「あ・・・ああ、わかった」
なんか急にしおらしくなったなと思ったその瞬間、
彼女は、不意打ちで俺の耳元でこうささやいた。
「隼斗からなら・・・遠慮なく・・・いいからね」
そして、彼女は教室へと戻っていった。
「ピアノ室」に一人取り残された俺の周りに、甘酸っぱい香りが
漂っていたことは、彼女は知らない。
EPISODE5です
早いですねー。個人的には楽しく書かせてもらってるので、読んでくれてるならもっと感謝したいですね。
さて、今回は結構甘めなシーン多めにしました。
「おいおい、氷溶けたなあ」そんなことを考えながら完成しました!
実はこれ、もともとEPISODE4と二つ合わせて「EPISODE4」の予定だったんですけど
なんか・・・「長いな」って思ったんで思い切って二つにして今に至る・・・
そんな感じですね。
では、EPISODE6で