EPISODE,63:憎悪にまみれた決着
憎い──
そんな感情があふれ出たのは久しい事だった。
今までのあの安心感のある居場所、彩音の家で随分と弱くなったことを痛感した。
一体俺は、何のために今日までのんきに生きてきたんだよ。
自分は一人のほうが強かったはずなのに
どうしてこんなにも深く傷ついている?
昔の俺だったらそんなことすら感じないような人間だっただろ。
なのに、どうして──
「隼斗!!」
「──えっ」
「ッオラア!!」
「あがっ!?」
油断した。
あまりにもショックがでかすぎて、放心状態だったのか。
立て直せよ俺!今はそんなことしてる場合じゃないだろ!!
「なんだ?自分の大切な人を傷つけられたショックで何も考えられなくなったか?」
「・・・・・・」
「惨めだな・・・。これが本当に俺の息子なのか?」
「・・・くれるじゃん・・・・・・」
「あ?」
「言ってくれるじゃん。そんでもって相変わらずあんたは自分の息子をけなすことしか能にないのか?」
「お前がそんなにも落ちぶれているのが原因だろうが。お前はそんなことすらわからなくなったのか?」
「勝手に言ってろ・・・、んで?あんたは結局何がしたいんだよ」
「お前、お見合いから逃げ出しただろ?あれのせいで社長さんからたっぷりしかられてなぁ。しかもそれだけじゃない。幹部の座からも突き落とされちまったよ!お前のせいなんだよ・・・全部!全部お前の勝手なことをやったせいでこうなったんのがわかんねぇのか、このエゴイストが!!」
エゴイストねぇ・・・。
んなこといっても、お相手さんはうんざりしていたし、なんなら嫌がってたし。
お互い、自由を奪われて檻にぶち込まれた犬みたいな。
そんな感じだった。
勝手に言ってろ。
お前の出世を妨害できてスッキリしてんだよ。
けどな──
「あんたも俺と同類だろ」
「・・・なんて言った?」
「『あんたも同類だ』って言ったんだよ。自分の息子を自分の出世のためにいいように扱ってる当たり、お前も・・・いや、お前が一番のエゴイストだろうが!!」
「生意気な!」
殴りかかってきたその拳をかわし、その腕をつかみ、固め技をかけた。
「いい加減認めろよ。お前が今まで俺にやってきたすべての愚行をな──」
言いかけた瞬間、脇腹に激痛が走る。
思わず固めていた腕の力が弱まり、その隙をついて抜け出され、また殴られた。
見ると、脇腹は真っ赤に染まっていた。
血だ。
刺し傷の深さは、推定でも7~8センチぐらいだろうか。
明らかに内臓まで損傷しているだろう。
その鮮血の量が物語っている。
「おい!!」
そう呼ばれた先を見ると、あいつはいつの間にか拘束を解かれた彩音の背後にいた。
「その状態じゃ、おまえは何にもできまい。無力な自分を恨むんだなぁ!」
「キャアアア!!」
彩音の悲鳴が聞こえ、その瞬間刃物が彩音の首筋めがけて振り下ろされる。
一瞬、何が起きたのかわからなかった。
私に振り下ろされるはずだったナイフは、血まみれの手を貫通して止められていた。
隼斗の手だ。
脇腹を抑えていたその手で受け止めていたのだ。
脇腹から鮮血があふれ出し、いつ倒れてもおかしくはなかった。
「貴様ぁ!!」
「アアッ!!」
一瞬の出来事だった。
素早く飛び出た隼斗の拳は、みぞおちに入った。
私を拘束していた腕の力が弱まった。
そして、隼斗の父親は倒れた。
「さようなら、クソ親父──」
そう言って隼斗は、力尽きて倒れた。
EPISODE63です。
ちょっとした裏話をすると、ラストシーンを作り出すのに半年ぐらいかかりました。
いろいろなラストシーンを書き上げましたが、流石に30パターンは多すぎましたね・・・。
ではまた、EPISODE64でお会いしましょう。




